サラリーマンのふり

柳井正さんの見識の正しさ

正直、ユニクロ嫌いなんだよね。

安かろう悪かろう。

サイズがテレビでモデルが来ているとおり、ミョウにスリム。

H&Mとかよりはいいけど、買わない。

が、日本経済新聞の2016年5月29日の「日曜に考える」に(働き方に終わりなし)というタイトルで柳井さんのインタビュー記事が出ている。

まず、要約してみる。詳細を知りたい形は出典にあたってみてください。
(太字と数字のところについて後に議論)

— 政府の「一億総活躍プラン」について

「日本だけが特別」なんていう環境にない。グローバルの中で仕事をする

— 働く人の価値観によらないか

尊重するが、世界経済に組み込まれた日本(1)を考えていないと企業として生きていけない。地域密着のローカル店、究極の個店しかグローバル競争で勝てない(9)

— 働き方を変えるには意識も変えるべき

日本の社会は「働くということ」について真剣に考えてきていない(2)
当社は大学1年生にも内定を出す制度があり、累計100人だ。大学で十分考えて欲しいからだ。

— さまざまな雇用形態の狙いは

個々人が目標をあげていく生き方をしてほしいから、様々な雇用形態にした。

— 見えてきたものは?

二極化(3)。「正社員になったからもう安泰だ」という人「ここから努力して自分の能力を高めていこう」とする人。

人間とは成長するものだと考えていたが、「成長しなくてもいい」と考える人がいた。それでは会社が困る。

— 成長と能力にみあう報酬か?

時給については早く1,500円にしたい。主要国中で最低賃金が1番低いのは日本ではないか。こんな水準では優秀な人材が日本で働こうとは思わなくなる。時給が低いと、働く側も時間の切り売りと考えて単純労働でいいと受け止めてしまう。結果として両者(企業と雇用者)の思考を停止させている。

アベノミクスは金融政策主導で進めてきたが、それだけでは個人消費は盛り上がらなかった報酬と消費はニワトリと卵の関係で、どっちが先とかの議論はやめるべきだ。(4)強引にでも時給を挙げる状況をつくれば、必然的に生産性を上げる経営になっていくはずだ。

— ブラック企業といわれたこともありますが

「サービス残業はするな」と言っていたが、会社のためを思ってやっていた店があった。自己規制が働いていた「サービス残業をやっていたら会社が潰れる。アウトだ」(5)という意識を皆がもつようにした。

— 幹部候補生として高学歴人材が中途入社して、短期間で去っていく人もいますよね

経営学修士(MBA)が邪魔になっている人がすごくいる。ケーススタディーを知っていて分析する力もあるから「自分はできる人材だ」と勘違いをしている。特に外資系企業やコンサルタント会社からやってきた人に多い。外資系は本国の指示で動くから自分で実行しようとしない。コンサルタント会社の業務は経営者に「問題点はここです。こう改善すべきです」で説明して終わり。(6)だからこうした人達には「実行するのはあなたですよ」と言い続けている。

— 経営層と現場が分離してませんか

ここ20年で現場でがんばった人が本社、海外で活躍している。経営層になってもマーチャント(商売人)(7)の素養は必要だ。会社のDNAを受け継いでいくのはマーチャントだ。

— 仕事とはなんですか

僕は「明日の仕事を今日やれ」と言っている。本当の仕事とは明日なにが起きるかを予測し、そのための準備や計画を間に合うようにしておくことだ。それ以外は作業だ。(8)

小さな会社(ファーストリテイリング)から売上高が一兆八千億円にまでなれたのは規模や状況に会わせて、そのつど変わることを常態化してきたからだ。イノベーションを起こすには大きな会社になってもベンチャービジネスの考え方をもって経営することだ。幹部はこうした矛盾するものを受け容れられねばならない。

今、我々は商品を作って販売する従来の小売業のビジネスモデルを否定することに取り組んでいる。消費者の要望で商品を短期間で作って届けるプロジェクトを立ち上げた。(9)

(1) 世界経済に組み込まれた日本

この考えがないから、「日本最高」の蛸壺意識から抜けられないのではないだろうか。

(2) 働くこと (3)成長する人、しなくていいと思っている人の二極化

常々、このブログでも語っていることです。
与えられた仕事で文句をいうなら独立すればいいし、大資本がいる事業は大企業にいてもいい。
でも「正社員になったから将来は安泰」とまるで公務員のような寄生虫でいるなら、人としての進歩はないですね。

(4) 消費と報酬は鶏と卵

これがわからない大企業経営者は多い。
零細企業だと、いかに雇用者から絞り出すかしか考える余裕はないだろうが、それは将来を食っているようなところがある。

(5)「サービス残業をやっていたら会社が潰れる。アウトだ」

ファーストリテイリングはものすごい数の人が働いていて、アパレルなので必ずしも賢い人ばかりでもない。だから昇進試験に柳井語録を暗記しているかなどというクダラナイものがあった。
逆に全員に浸透させるには、こういうスローガンが有効なのだろう。
CEOの苦悩がすけてみえる。

(6) 外資系は、、コンサルティング会社は、、

改めていうまでもなく、常々言っているとおり。

全員とはいわないが、ほとんどの45歳過ぎの外資系のマネージャーに問題を見つけ、自分で方針をたてていく能力はない。
そういうことをしないで本国の指示どおりに動くことで報酬をもらうように躾けられている。

コンサルティング会社なんぞをいまだに信じている人がいるならば、自分で考えることをしない人だ。

(7) 経営層になってもマーチャント

いろんな考え方があるだろうが、柳井さんは経営専門人材を認めていないようだ。1兆八千億円企業のCEOがいうのだから、それはひとつの見識だろう。

(8) 本当の仕事とは明日なにが起きるかを予測し、そのための準備や計画を間に合うようにしておくことだ。それ以外は作業だ。

今回のインタビュー記事で「すごい」と思ったひとつがこれ。

世の中のサラリーマンの大半は、仕事と作業の区別がついていない。

作業が早くできたら「仕事ができる」と言っている人がとても多い。そういう人は時間内に会社にいることなどにとてもこだわる。

でも会社は明日も続いていかねばならない。この言葉が本当に理解できる人が、単なるワーカーからビジネスマンに変身するキーなのだと思う。

(9)消費者の要望で商品を短期間で作って届けるプロジェクトを立ち上げた。

コンサルティング会社も到達できない、ユニクロの次の視点がこれだという。
「グローバルの中における究極の個店」の暫定的回答がこれなのだろう。
こんな大事な話をシェアしてくれた柳井さんに感謝したい。

関連記事

  1. 懲りないコンサルティング会社

  2. SMAPに学ぶサラリーマンの身の処し方

  3. 社員から愛されている会社、愛されていない会社

  4. クレジットカードの次

  5. リーダーより重要な人

  6. ついていけないナイーブさ

  7. 販売ビジネスモデル

  8. 明暗をわけるITベンダー