この記事はきっと未来の私への記事だと思います。
日本でもひどい銀行の金利と、政府によるNISAという節税方法により株式投資への関心が高まってきました。
ちょっと勉強熱心な人は「アメリカ株やアメリカに投資する投資信託をガチホ(なにがなんでも保持)しておけば、年利4%, 6%のリターンをトータルで得られるはずで、リスクはほとんどない」という言葉を信じていると思います。
なにもしなくていいのですから、こんなにいい話はありません。
ちょっと前まではこれは事実でした。
1944年にブレトンウッズ体制が先進国の間で決まり、アメリカドルは世界の基軸通貨として機能し、アメリカは秩序を守らせる「世界の警察」として君臨してきました。
しかしそれはレーガン大統領のレーガノミクスのころから怪しくなり、湾岸戦争のころから問題が表面化してきました。囁かれ続けている言葉が「アメリカの双子の赤字」つまり財政赤字と貿易収支の赤字です。これらはすべてドルを刷りまくることでごまかされてきました。
経済学者によっては「アメリカドルはどれだけ刷ろうともインフレにならない」などという論文を書く者まで出てくる始末でした。
しかし、2025年はついにアメリカの税収でアメリカ国債の利払いをしても追いつかない年となりました。
よりによって、この年の大統領がトランプということも(たぶん)大災厄です。
以前書いたトランプの考えであるアメリカ・ファーストという形に世界は戻れないのです。自動車メーカーの一社フォードは「このままだとアメリカで車を作り続けることはできない」とまで言い、トランプの怒りを買っています。
大企業ですらアメリカで暮らせないと言っているのですから、庶民はもっとひどいことになります。
中国にアメリカ向けのコンテナが大量に放置されているといいますから、今年の後半からアメリカ国民は物資不足に泣くことになります。信じられないでしょうが現実です。関税だとかはどうでもよくて、船便がアメリカに向かっていないという単純な事実を今、我々は目にしています。
新聞やテレビは見るけれども、文脈を考える力がない人々は「関税の問題が収束したら、アメリカ株はまた上がる。」と単なる景気の問題だと考えているようですが、そんなことはありません。
90日のネゴシエーション期間を経た後、関税はやはり止めるというわけにはいかないでしょう。そうすりゃトランプ氏の面目は丸つぶれです。夏あたりからのアメリカがどうなるかをよく見ないといけません。
言い換えると夏までの金融相場は思惑で上がったり下がったりするわけで、リスクをおかしてまでお金をつっこむ価値があるとは思えません。「落ちるナイフをつかむな」というのは相場の格言ですが、そのとおりだと思います。デイトレーダ並みに相場を見て細かく売り買いをしているなら別ですが、仕事していてお金を増やすという人が売買する環境じゃないと思います。
なぜならば今、私達が目にしていることはアメリカが覇権国としての地位を失いつつある姿です。
今までのようにドルをどんどん刷り、アメリカ国民は国家の借金により潤い消費してきた姿の終焉を示していると考えるほうが妥当です。
単なる不景気ではなく、もっと大きな変化なのです。
カナダもEUもイギリスも南アメリカも、もちろん中国もアメリカ中心とは考えなくなりつつあります。言い換えるとアメリカへの依存関係を減らすのです。アメリカのポチである日本はおそらくこの流れを理解しないままでしょうけれども、TPPなどにより一定の経済圏は持つと思います。
イーロン・マスクがDOGE(政府効率化省)を辞めるということは、小さな政府にする試みは失敗に終わったことを示しています。
これは私だけの意見ではありません。
レイ・ダリオという人がいます。世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーターのCEOです。
この人はたいへんな勉強家で、とくに経済史について詳しい人です。著書「世界秩序の変化に対処するための原則 なぜ国家は興亡するのか」は必読の書といえます。
このレイ・ダリオがブログで「もう遅すぎた。世界の変化がやってくる」と記事を更新しました。
つまりこのままいけば、アメリカがデフォルトを起こす可能性が高いのです。そうすると、不況どころではありません。恐慌です。
(2025/5/7 追記)
毎日新聞のトップが歴史家エマニュエル・トッド氏のインタビューでした。
めちゃくちゃ要約すると
- 米国はIT、金融とエネルギー産業により工業が停滞した。ウクライナに砲弾すら送れない。
- ロシアへの経済制裁がうまくいかず3年も戦争を続けられるのは、中国、インド他、西側のやり方をよいと思わない国がロシアを支援しているから。つまりアメリカの覇権はすでに衰退しつつある。
- トランプは欧州、日本、韓国、台湾が「アメリカに寄生している」というが、アメリカを豊かにしてきた現実は見ない
- ウクライナのゼレンスキー大統領との会談はアメリカ大統領の振る舞いではない。
- 「世界の模範となってきた国が産業面でも道徳面でも崩壊しようとしている。1900年頃には技術力で世界最先端だったドイツが、ナチスとともに45年に崩壊したのに続き、欧米では二回目の経験だ」
- アメリカはWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)が中心だったが今は白人というだけでモラルも知識もない人間が支配している。
- トランプ大統領の支持者、ロシアのプーチンの周辺、ドイツの極右政党、フランスの極右政党の支持者たちは対立陣営よりも教育レベルが低いのが特徴だ。つまりポピュリズムが一旦は政権を握る
- しかし戦う相手がいなくなると、必ず仲違いが始まる。国家の多様さ、利害の対立は必ず起きるからだ。一度、失敗してから新たな和解が始まるだろう。
- 先進国では人口減少が続いている。ロシアがウクライナの東半分を入手したとしても、それ以上はどうしようもない。広すぎる国土に少なすぎる国民となってしまう。
- 日本はアメリカが当てにならないことに気づき、安全保障面でも自立することを考えねばならない。
トッド氏の目から見てもアメリカは崩壊しつつあり、一度、衰退すると予想しています。これが単なるトランプの気まぐれが原因で、彼がいなくなったら元に戻るでしょうか?
同時にウォーレン・バフェットが彼の投資会社バークシャー・ハサウェイの資産の1/3を現金化したまま引退することも象徴的です。彼も関税で遊ぶトランプ氏には否定的です。
世界の仕組みがまったく変わってしまうNew World Orderとなる可能性が高く、世界は多極化する可能性が高いです。もはやアメリカ株のガチホなんて意味がありません。
あくまでも、私の考えです。長期的には日本に都合がいい状況になりつつあると思います。いったんS&P500などが崩壊し、日本の株式市場は余波を被った後、新たに日本株は買いではないかと考えています。