起業

会社のエンジニアと独立して働くエンジニアと起業

やっと昨年、サラリーマンを辞めて自分のやりたいことや用事に人生を費やせるようになりました。
現実は、まったく忙しく、貯めた本を読む暇も怪しく斜め読みしています。読み返さねば。。。

首都圏の電車に乗っても「どの人よりも俺のほうが年寄りなんだよな」と感じられる日々です。
勝手なことを言っても職場というものがないので、誰にも迷惑はかけない時になったと感じています。

エンジニアの果て

IT業界の技術系の人の多くは途中からマーケッター(営業、プリセールス)などに変わっていくのではないでしょうか?
そこにエンジニア固有の苦しみ、悩みがあります。いや、技術が嫌いでさっさと足を洗いたい人はなにも感じないでしょう。
しかし、例えばWEBシステムの構築などをひととおり体験してきた人は、そのスキル(知識+知見)を捨て去っていいのか悩むと思います。

エンジニアを辞めたほうがいい人

以下のような人は、もともと適性がないので、さっさと足を洗ったほうがいいです。

  1. ひとつの技術を覚えたから、エンジニアとしては大丈夫と思っている人。言い換えると他の技術を覚える気がない人。
  2. 英語がイヤでイヤで仕方なく、英文の記事、マニュアルをまともに読まない人。
  3. 自分でインターネットを調査せずに、周囲の人に聞くことで仕事をしてきた人。
  4. 言われた仕事が終わったら帰宅して遊びに行きたい人。

1はベンチャー企業や日本でスタートしたばかりのピープルソフトにいたころに、よく会いました。
Lotus Notesを覚えたから俺はこれで食べていく、Sun MicrosystemsのSolaris(Unix)を覚えたからこれで食べていく。
今、それらの技術にどれほどの価値があるでしょうか?
たしかにひとつの技術をよく知っていて、同僚、後輩の悩みに即答できる人はかっこいいです。が、よく考えてみてください。
それって知識詰め込み教育の結果となんら変わりません。今は知識はその時、その時でchatGPTに聞けばよく、いくつもの技術を広く浅くしっている評価されない人間のほうが成果を出せる時代なのです。

2はいわずもがなで、新しいアップデートはすべて、全部、もれなく、英語でやってきますから、TOEICの点などはどうでもよく、触れようとしないのであれば、エンジニアは辞めるべきです。

3は自分が今持っていない知識でお客さんの課題を解決するエンジニアになれません。インターネット出現前のころ、日本IBMで働いていましたが大島くんという後輩と仕事をしていました。彼はIBM社内のナレッジデータベースを探すことがとてもうまく、必要な知識、知っている人がいる組織などを見つけることができました。
今はインターネットがある時代です。サーチャーのスキルはエンジニアとして必須です。ましてや人に聞いただけのいい加減な情報が嘘だったらとてもマズイことになります。自分で調べ、事実かテストするという態度が必要です。

4は日本IBMにも大量にいました。勉強しないしお客さんを怖がるのでエンジニアとも呼べない、よくわからない存在のまま、定年まで同じ職場にいました。会社も評価に困ったことでしょう。

エンジニアが遭遇しがちなプロジェクトマネージャーという仕事

これらの3つの障壁をかいくぐってきたエンジニアがだんだん規模の大きい仕事をするとプロジェクトマネージャ(PM)をまかされたりします。
でもPMの仕事の本質ってたったひとつだって知ってますか?それは

プロジェクトに現れるリスクを潰し、予算以内になんとしてでも収めること。

スケジュール管理など、すべてはこの目的のためにやることです。この目的に外れることはやったほうがいいけれども、逆らうことならば応じられません。
なぜならば、あなたが所属する会社は黒字を出さねば倒産します。しばしばプロジェクトは会社の経営を左右する規模になってしまったりします。
だから常にカネのことを考えていなければならないのです。

人間社会はたいして変わりませんから、今でもおそらく約束した要件以外を、お客は組織のもっとも弱い人間をつついて入れさせようとするはずです。プロジェクトで自社のルーキーや弱い人間の行動は目を光らせておく必要があります。

これらはエンジニアとしては非常に精神力を消耗します。技術的に間違っていようが、ドロ臭かろうが、予算以内に収められるならば目をつぶるという態度を取らねばならないからです。

それでもプロジェクトマネージャ業は、会社から評価される(されていないならば、即、転職です。PMは高い報酬を得ることができます)仕事です。また、亡くなったラックの三柴元氏がおっしゃっていたように会社経営の基本がつまった仕事です。

エンジニア+プロジェクトマネージャのスキルが人生の分岐点

これはエンジニアの人生で大事なことです。まともなエンジニア生活を送ってきて、プロジェクトマネージャも経験していれば、起業するための基礎知識をもった、ということになるのです。

日本IBMで私が20歳代のころ、大カリスマ社長の椎名武雄氏がよく言っていた言葉が「野鴨になれ」でした。これはIBM本社の初代社長のトーマス・ワトソン・Jr.の言葉らしいのですが、社員を飼いならして飛べなくなることはしない、ということです。
私の解釈でいえば、ワンマンアーミーでなきゃいけないってことです。今のIBMにもごくわずかですが、そういう人は存在します。

逆をいえばプロジェクトマネージャの経験をせずに、開発リーダーなどだけをやっていたのであれば、独立してフリーランスになったところで、なにかのプロジェクトに参画して過去に学んだ技術の切り売りをするしか方法がないのです。
これだと当然ながら技術の壁にぶちあたります。

IT業界は次々に新しい技術が出てきます。どれを選択するべきであるか、企業ユーザーに対しては慎重にならなくてはなりません。

NTTコミュニケーションズにいたころ、日本に法人ができたばかりの外資系企業がいろいろな製品を売り込みに来ました。しかし大部長のY氏は「これ、30年くらいは保守できると保証できるんだよね。NTTに売り込むってそういうことなんだけど」とおっしゃっていました。

これは極端ですが、企業ユーザーに提案する時にはいろいろな要素を考えねばならないということです。

選択された技術でシステムを作っていく時にフリーランスのエンジニアを使うことはありますが、大量に雇うひとりでしかなく、IT業界の悪習である多重下請けに組み込まれるということになります。

一方、ビジネスについての目をもったエンジニアは、日本でスタートアップの外資系企業や、自分でスタートアップ企業を始められます。

誰も言わないスタートアップ企業を潰さないコツ

誰も書いていないと思いますが、次のような形でスタートするとなかなか潰れません。

もともといきなり起業すると苦しむのが「最初のお客さん」獲得です。
ひとつでもお客さんがいれば他社(者)に事例として紹介し、信頼を得られ、ビジネスは発展するからです。
ですから最初からお客さんを見つけて起業するというやり方だとスタートアップは非常に非常にラクです。

たとえば、おもしろい技術を見つけてお客さんが採用しようとしている。
こういう時に関係者で会社を作って、そこに案件として投げるのです。

その「おもしろい技術」を提供している外資系企業の日本法人は、よほどのことがない限りパートーナーの育成は熱心にやります。
考えても見てください。マイクロソフトもアップルもデベロッパーコンファレンスを開き、SAPやDELLは認定資格を作り大募集し、パートナー制度は充実させていますよね。

IT業界において構築はパートナーにやってもらうのが常識であって自社だけでやろうとする企業はまずありません。
それどころか安定した技術をもったパートナーにはお客さんを紹介することが普通です。
SAPにいた時代の話です。ERPであるSAPの採用は顧客企業のかなり上流で決断されます。普通のシステムインテグレーターがつきあっているIT部門の人々ではないところで決定します。
その後、プロジェクトなどを計画する時、このパートのSAP製品はこのパートナー、あのパートのSAP製品はあのパートナーと信頼できるパートナーに商談を持ち込みます。
メジャーな製品のパートナーとなり実績のある中堅企業は、潰れることはありません。上場企業のIPSはまさにそういう企業ですが、高い株価を維持しています。

SAPは大きすぎるし確立してしまった話ですが、他の事例も見てみましょうか。

ちょっと前ならグループウェアのサイボウズもスタートのころは、「ウェブ上のグループウェア」ということがウリで、機能は貧弱なものでした。
起業で調達したお金を宣伝に全振りしたとのことで、それがよかったようです。

さくらインターネットの会長田中邦裕氏のような徹底したデータセンタービジネスにおいて先行者利益を追求したパターンもあります。
最近ならクラウド会計業界などがそうでした。

数年おきに、インフラやアプリケーションの波がきます。これに乗っかる場合、難しいことを考える必要はないです。Just do it !

フリーランスでも

最後にフリーランスとして独立する場合ですが、安い現場しか知らない人は上のような新技術の採用の場面に遭遇しないでしょう。

それなりの企業は、それなりの技術がある業者(パートナー)としか取引をしませんから、オープン系の技術やプログラミング能力だけでは、零細企業の人々が思い描くような待遇は難しいと思います。

結果的に元いた職場から外注に出していた案件を自分たちにまわしてもらうことになるのではないでしょうか。
ただ、それがやりたかったことですか? 一見、報酬は高いですが元いた会社の社長やらの給料分ももらっているからに過ぎません。
なにか特化したものがなければ、有能な人材だって転職市場で高い報酬を得られ、経営も安定しているほうに行くにきまっています。

私の知っている人の例です。
プログラマーとしてまったく未経験だったのですが、このような会社(ブラック)に入社してとにかく経験だけは積んで、日本IBMに転職した人がいます。
会社の経営陣がなにを考えているのかは知りませんが、働く人々は違うベクトルであることは明らかです。

WEBデザインの会社は月並で、ドラマにも出てきますが、まともなエンジニアがほとんどいないことが体感です。
DNS,データベース、Wordpress、システム移行、node.js、バックアップ・リストアなどについて普通に知っている、まともなエンジニアに遭遇したことがないです。
ほとんどがデザイン会社、印刷会社が経営しているため、経営者達が技術の怖さをなんにも知らないところが原因です。「セキュリティ」なにそれ?おいしいの?状態です。報道されないトラブルは大量にあると思われます。
まだまだフリーランスのまともなエンジニアの介入が待たれるところだと思います。

起業するにしろ、フリーランスになるにしろ、安易なやりかたは失敗するってことです。
巷にころがっているIT業界の起業記事を読みましたが、机上の空論ばかりで鼻で笑ってしまいました。

この記事が中堅、大企業の実力あるエンジニアのキャリアパスを考える「内緒の一助」となれば幸いです。
かなりの部分が私の体験です。

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