雑感(日記)

ザウスで思い出したIT業界への転職

バブルまっさかりのころに、千葉のららぽーと近くに「ザウス」という人工スキー場が作られた。
Youtubeを探すと当時のCMがあり、懐かしかった。

https://www.youtube.com/watch?v=MN8hSwxoKkQ

田舎の都市一個分くらいの電力を使うなどと言われていたな。
CMソングの帝王 山下達郎の曲は今聞いても古いと私は思わない。
音楽はまったくわからないのだけれど、YOASOBIの「夜に駆ける」を聞いていると山下達郎の曲を連想するのはなぜなんだろう?きっとなにか共通点があるんだろうな。

私は行かないままザウスは消え去り、IKEAに変わった。
それが2002年の出来事だった。
そのころの私はNTTコムに勤めていて、人手不足から派遣会社と話すことが多かった。
まぁ、いろんな問題が起きたのだが、派遣会社から「IT業界じゃないけれどやる気のある人がいるので雇ってもらえないだろうか?」というお願いを聞いてある女性を雇ったことがある。
Aさんとしておこう。

Aさんは結婚されていて、イマドキめずらしい品のある女性だった。
職務経歴のどこかで英字新聞かなにかにかかわっておられ英語はとても堪能だった。
しかしIT業界の知識はゼロ。

IT業界ってコンピューターとネットワークの知識を体系立てて教えているところは今、どれくらいあるのだろうか?
現在、私が勤めている「某ERPの会社」もそんなことは教えていない。マーケティングの情報ばかり散乱していて、本当はどういうソフトウェアであるかということが極めて見えにくい。
自前でJavaパッケージをもっていたり、自前でインメモリーデータベースもっていたりするけれど、なぜそうしたいのかという理由を知る社員はほとんどいないのだろうな、と思う。
だから製品の限界も知らずにお客に提案をしている。仕方のないことだと思う。
DBMS(データベース管理システム)はLinuxを作ったリーナスも放り出すほど面倒くさい代物なのだ。

プログラムの書き方を学校で教える時代になった。
でも、それがコンピューターでどう処理されているかを知る人も少ないのではないだろうか。
よく言う「プログラムはコンパイルされて中間言語になり、それが仮想マシンのレイヤーで処理されていきます」と言っあたところでほとんどの人は「仮想マシンのレイヤー」がなんなのか、なぜそんなことをするのかもわからないだろう。
最終的にインテルやARMのCPUで機械語として処理されていくまでを知るには、かなりの知識を要する。

同じプログラムを書くということでも、システム関連のプログラムを書くこととアプリケーションプログラムを書くことの手法はまったく違う。そしてテストドリブンで書いていくという手法はいまだに日本ではあまりメジャーじゃないように感じる。

オペレーティングシステム(Windows, Unix)などもそれぞれ思想があり、思想を理解しないとコマンドだけを覚えることになり応用が聞かない。なぜならばオペレーティングシステムとはハードウェアの集合を「こういうものです」と見せるためのものだからだ。
「こういうもの」の典型的なものがGUIなんだけれど、レンダリングとベクトル計算というやっかいなテーマだけでひとつの分野だ。

同様にCPUがどのように作られているか、ということを理解するのも大変だ。
そもそもビットの0と1が回路上でどう表現されているか知っているプロはどれくらいいるんだろうか?
参考までに書いておくとビット0は0ボルトではない。
CPUの中でもっとも複雑なのはシーケンサなんだけれども、ALUにばかり関心がいっているように思う。

ネットワークの説明をしても、データとパケットの関係を教え、それがどのようにルーティングされて出ていくかを理解することも簡単ではない。家庭内にルーターをもっていても192.168.1.xxxの単一セグメントは理解していても、それが外に出ていく時どうなるか、という話に広がると簡単ではない。
さらに通信業者が使うASという単位になると、ネットワークエンジニアでも知らない人が出てくる。

ざっと考えてもこれだけの分野があり、まともなIT技術者を育てようとすると、ゆうに一年はかかる。その上でなにかの分野の専門家にしようとすると、さらに数年を要する。
なぜ基礎的な知識が必須かというと、基礎力がないと応用や新しい技術の習得にえらく時間がかかるのだ。
CPUが使用率100%である意味や、リバースプロキシーがなにかという理解にすごく時間がかかる。

かようにIT業界は、どれだけヤル気があっても知るべきことが、あまりにも多い。
安い時給で働かせる「エンジニア」に、そこまでの投資はできないのがIT企業のホンネじゃないかと思う。

私だって古き良きIBMと通信会社にいたから、ひととおりの知識が手に入ったのだ。

話をAさんに戻す。
AさんにIT業界の基礎を教えようと思った途端に「情報処理技術者試験」の講義をすることとまるで同じだということに気づいた。
そして本人はまじめであれど、決してコンピューターオタクではない。

私が勧めたのは当時、大募集していたIKEAへの転職だった。
外資系企業は、立ち上がりの時から英語が堪能で参加していれば、決して悪いようにはならないからだ。
Aさんはどうしているだろうか。

 

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