ほんとーにイヤになるほど聞くのが、
「引退してのんびり喫茶店やりたい」「お金貯めたら小さなスナックをやるんだぁ」などなど。

なんでこんなことを言い出すのかと考えたら、おそらく、そこいら中に飲食店があるから、俺も、私も、と思うのでしょうね。

なぜ飲食店をやってはいけないか、理由を書きます。

もし、あなたが長年、飲食店で働いていたら、飲食店のたいへんさがわかっているはずです。
ほとんどがブラック企業だけど、ブラック化せざるをえないと。のんびり喫茶店なんて夢のまた夢だと。

原材料を購入して、いかに捨てないようにするか。
ほとんどの食材は品質保持期間が短いです。

素人はまず、飲食店は食材との戦いだ、ということがわかっていません。
呑気に「大皿でいろんな料理を作って」などと夢想します。
そんなことできるのは、実はセントラルキッチンもってる、大手のチェーン店、もしくは惣菜やで買ってくるのが実情で、個人で作っていたら捨てる食材だらけになります。
時間的にもそんなに大量にいろいろ作っていられません。

一定期間たった食材は、家でなら「まぁ、いいか」で食べるでしょうけど、お金を払っていただくものはそうはいかない。
賞味期限切れの古い食材だしていたら、一瞬でお客は寄り付かなくなります。
だからランチで出す。
これで朝から準備して、昼働いて、夕方までちょっと仮眠して、深夜まで働くことになる。
だけど、貧乏な一見のお客は食材処理のランチだけで店をわかったつもりになり評価する。嗚呼、

焼き鳥屋が飲食店の入門編として推奨されるのも、鶏肉と少々の野菜でバリエーションを出せて捨てるものが少ないからです。

次に固定費の高さです。

飲食店は一に場所、二に場所、三、四がなくて、五に場所、といわれる商売です。
当然、儲かる場所代は高い。
お客が来ようが来まいが、テナント料は出ていきます。
内装もそれなりにかかります。居抜きがあればいいですけど。

さらに普通は店員を雇います。
はっきり言って飲食店は忍耐の商売ですから、そんなに頭のいい人は来ません。
そして人は3人以上集まれば、必ず人間関係が生じます。
経営者はそういう人たちの愚痴、わけのわからん主張を聞き、いなしながら店をやるのです。

テナント料と人件費。お客が来ようが来まいが出ていくおカネです。

ちなみに小さな駅によくある中華料理屋が潰れないのは、住居を改造して店にして、家族でやってるからです。
お金が出ていかない。
だからやれるのです。
あなたの奥さんは出前をやってくれるような人ですか?
病気しませんか?

最後の障壁が、参入障壁の低さ。
飲食店は保健所に届けを出して、検査がOKなら開けます。
厨房機器業者に注文出せば、彼らは心得ていますから、簡単に認可が取れるようにレイアウトしてくれます。
だから、やたらと多くの人が参入し、競争相手が増える。

ホリエモンが「日本の飲食店のレベルの高さは、参入障壁が低いから切磋琢磨せざるをえないからだ」と喝破していますが、そのとおりです。

ユニークなものをやっていても、やがて真似されるか飽きられる。このサイクルが2,3年かかるので、多くの素人経営者は飲食店が2年ほどやれると自信をもつけれども、実は勝負はそこから。

内装、料理、きれいに飾り付けてこそプロの商品。素人との違いがだせなければいけません。

味覚の才能がなきゃ、うまいもんは作れないから誰かに教えてもらうしかない。
フランチャイズの罠にはまります。

長年の修行の成果で高級路線のお店を開ければいいですが、素人からの転身組は必ず大衆路線、言い換えると低価格路線を狙います。

三流エンジニアが「入門レベル」の話しかしない、できないことと同じで、安いからそこそこのお客というレベルに逃げます。

IT系でもB(ビジネスユーザー)向けのサービスを売ろうという連中は必ず中小企業向けといいます。大企業より中小企業のほうがコストにシビアで無料サービスたっぷりつけないと買ってくれませんが、そんなことすら知りません。自信がないからプロ相手を避けるのです。

同じ安売り路線の幸楽苑が苦戦していて、いきなりステーキのフランチャイズを始めたことは他の記事にも書きました。
なぜ幸楽苑が苦戦していると思いますか?
あの価格でも今の消費者は高いと思うのです。

コンビニがイートインを設けていますよね。お店のものを買って、そこで消費する場所。

夜、しばしばおカネのなさそうなサラリーマン男女グループが駅のキオスクの横で立ち飲み、乾き物で輪になっていますよね。

もうこれ以下は飲食施設としてはありません。

素人が参入しようとしている低価格の飲食店とは、こういう路線の人々が対象なのですよ。

一般的にいえることは、おカネをもっていない人ほど自尊心が傷ついていますから、わずかなカネでお客になった途端に王様、女王様気取りであれこれうるさく手間がかかるものです。

ビジネスを始めようといって、飲食店ってもっとも安易でもっともリスクの高いビジネスです。

データ源は忘れましたが、税務署の出している廃業の統計でも飲食店は1位です。

にもかかわらず、中途半端な都市ってやたらと居酒屋があるんですよねぇ。
そして、共倒れ。

私がここで書いていることが、あなたにとって嘘でありますように。

ところで私の友人が素人から飲食店を始めました。
しかし四国のド田舎で、彼が店を開くまでその界隈にはレストランのようなものはなかったのです。
だからこそ、新聞にも載り、多くの人が来店します。
都会から秘境に移住する。それくらいの覚悟がいるのが、今の飲食店経営です。