木村岳史氏が「多くの大企業が「IT棄民」状態に、SIerにも見捨てられ期間システムは崩壊寸前」という記事を2025年の7月に掲載されている。
個人的な考えだけれども、この記事にこそ日本の失われた30年の原因のひとつが書かれていると思っている。もちろん失われた30年はイノベーションがなかった、日銀による意図的な円切り下げなどもあるけれども、日本のITがさっぱり進歩しなかった理由が書かれている。
以前もどこかに書いたけれども、の本の企業の基幹処理、つまり売上から債権回収までの流れはかなりお粗末だ。唯一、それを規定しているのは税務署である。税務処理があるからこそ、どこの会社も複式簿記をやり、固定費、変動費、固定資産評価をやらざるを得ない。
それ以外は、各社各様であり、その会社で基幹システムを作った時、声の大きかった人の意向を組んで作ったものだ。当時、紙を回していたものをそのままシステム化し、どーでもいい報告書を出す出さないで大揉めして作り上げたものだ。
今どき、社会人でそんなことを考えている人はいないと思うが、税制は毎年少しずつ代わり、会社の業務も少しずつ変わる。ところが多くの人はシステムは作ったら、もうそれでずっと動かせると思い込んでいた。ベンダーが「保守・変更にはお金がかかります」と人件費を要求すると「まだ、巻き上げるのか」と烈火のように怒った会社も多数あった。
そういう会社に限って「闇プロセス」が誕生し、システムをだましだまし使う方法が蔓延した。結果、会社の正式書類には一切出てこないプロセスが維持されるようになる。
ところがインターネットが出現し、他社とどうつなぐか、とか、合併などが起きて新しいプロセスが出来たとか、小手先の調整では済まない事件が起きる。そうなると、もうシステムを刷新しないといけないのだが、まだグズグズ文句をいう人がいっぱいいる。このような問題は後回しにすればするほど、お金がかかるのだが現実を見ようとしない。
特殊な産業ならば仕方がないが、ほとんどは経理システムから進化したERPで事足りる。別にSAPを入れなくても、勘定奉行シリーズでも構わない。自分で作るよりは自分のやり方を世の中の普通の方法に改めるだけで、仕事は回る。
ところが自分の仕事は特別だと言いたいプライドの高い人間は世の中には意外にいて、そういう人が必死になって会社の業務改善を止める。そんなにイヤなら辞めればいいのに、絶対に辞めない。そりゃそうだ。自分の居心地が悪くなるから止めているだけで、会社のためになるとかならないとか、そんなことはどーでもいいのだから。
冷たい目で見るならば、本業もそんないい加減な考え方でやってこれてきた、ということだ。マジメに働いているフリはしているが、実は重箱の隅の問題であり、巨大な問題は放置することは会社ではよくあること。
そして、今やSIerもメインフレームの時代に比べると、ひとつの案件の金額は小さい。メンドクサイお客の相手なんかしていられないのだ。会社の中の年寄りが大昔の感覚でシステム会社を呼びつけたところで、冷たい扱いしか受けない。
本当はDXだ、AIだ、の時代なので内製化することを絶対にオススメするが、そこまでの投資をする企業はほとんどいないだろう。かくして「IT棄民」の会社が今後も爆増する。
もし、あなたがこのような老朽化システムに出会い、どうしようもない会社にいるならば、やるべきことはただひとつ。
「逃げろ」
だ。
なぜならば、以下の理由による。
- 毎日使うシステムにカネをかけられない貧乏会社の貧乏にあなたがつきあう必要はない
- システム更新すらできないのに、新規事業なんかできるだろうか
- このような一見ささいな問題こそ、逃げ出すための重要な指標となる。競合他社で問題がない会社を選ぶチャンスである。
Good Luck !!!