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ERPの本質をあらためて説明しないと日本企業はわからないようだ

いつもの木村武史氏の「極限暴論」の今回のテーマがCIOが言う「ERP導入なんてやめちまえ」はまさに正論、DX成功の唯一の道とはなんだけれども、DXといってERPをいれるぞってあまりにお粗末な話だということです。

DX=デジタルトランスフォーメーションしたいならデータが電子化されていることは当然。以前も書いたように日本企業の自前で作った基幹システムは開発時に従業員同士がもめないように、紙の作業をそのままコンピュータ化したにすぎないから効率はそれほど高くはない。

「ERPより我が社のシステムのほうが優れている」ってド素人の勘違い意見は聞いていて痛々しい。なぜならばロクに他社の業務プロセスもしらないくせに自社の評価ができるわけがないし、なによりERPは「業界標準的なやり方」をするのが目的であって優秀なシステムを導入するものではない。その代わり「標準プロセス」には他社の知恵もふくまれている。

さらに重要なことは経営者に必要な情報がリアルタイムで集まるということだ。そのためには現場の従業員の効率が多少落ちてもかまわない。経営デシジョンのほうがはるかに重大なことだからだ。
システムの考え方を知らないで個別の機能にマルバツをつけても意味がないのだ。

同じやり方をしているからこそ海外の仕事の採用条件に「SAPシステムを使える」などがスキル項目としてあがるのだ。

もちろんERPを導入したら今まで必要だった部署が不要になる可能性は高い。でも、新たに必要な部署もできるかもしれない。そういう改革はいつやるのか?先延ばしにしようと思えば何十年もできるけれどもそれでいいのだろうか?

ERPを入れていない会社が成長すると絶対に困ったことになる。それはスケールの問題と他社との接続だ。S/4HANAがいい例だが、大規模トランザクションでも速度が低下しないインメモリーデータベースを一般の日本のIT企業や企業ユーザーが自前で作ることはなかった。インメモリーデータベースの最初はSAPが大学と協力して作りだした。当初データベース界の巨人のOracleすらもっていなかったのだ。またすでに航空機メーカーはお客さんに航空機のメンテナンスのためにERPシステムを導入することが条件になっている。おらの田舎システムでは海外の企業と接続するのは面倒なのだ。(できなくはないけど)
このように新しい技術、スケールを自社で悩まなくていい点は大きい。普通のローテクSIerに依頼したらとてつもない費用と時間を要求されてもできるかできないか、というレベルだろう。(もちろんSAP社内でもデータベースの専門家は発表当時はいなかったので、馬鹿な意見をお客さんにしていたことは知っている。)

そして東南アジアの企業は時間はかかっているとはいえ、最初からSAPシステムを導入して自前のシステムなんか作らない。画面は当然、英語のままだ。自国語がないなんていわない。でも、プロセスはその国の法制度にあっているのがERPだ。

ERPは確かに高い。でも、自前のシステムを維持していると、とんでもない金額の損をすることをご理解いただけるだろうか?
部門間の駆け引きの妥協の産物の老朽化システムをお守りして、日本企業は世界的に見ればガラパゴス状態になっていく。

先日、船橋市から企業アンケートが来た。どこぞのコンサルティング会社が作っているようだ。その中にもDXやSDGsについての質問があった。正直、その呑気さにあきれた。
DXもSDGsもバズワードであって、それをやらなくてはならないということはないし、中小企業も零細だとそんな余裕すらない。メール、InstagramにGoogle広告でおなかいっぱいだ。やってるかやってないかどころか、意味すら知らないだろう。船橋市がこの程度の認識で、まるで本気度が見えないので行政の支援は絶望的だ。まぁ、日本なので仕方ないか。

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