サラリーマンのふり

日本人が理解していない少子化の世界

今年の4月に「人口が減るとこうなるであろう」という記事を書きました。河合雅司氏の「日本の年表」シリーズを読んだ時のメモですが、いまだに日本の、とくにサラリーマンは理解していないと思われます。

現業をやられている方は痛感しているはずです。お店の店員になってくれる人がいないこと。時給1500円と思い切ったつもりでもさっぱり来ないので不思議なのでしょう。それは飲食店同士で比較しても話にならないからです。同じ人手不足の運送業は1600円以上、2000円出すところもあるからです。
今後、下がることはないと予想します。

しばしばマスコミで「先進国で初めて日本が経験する」とか言ってますが、出生数が下がるという意味ではそうかもしれませんが、労働者が激減したらなにが起きるかはわかっています。

14世紀(1347-1351)にヨーロッパでペスト(黒死病)が大流行しました。17世紀にも流行しました。この時、ヨーロッパの人口は控えめに見て2/3となったと言われています。このパンデミックはヨーロッパにいろいろな変革をもたらしました。ひとつはキリスト教の衰退です。いくら信仰していてもバンバン人が亡くなり、教会関係者も同じように亡くなるのですから、「神の恩寵」なんて誰も信じられません。これが後に宗教改革に繋がります。もうひとつが生産性の向上と労働賃金の上昇です。もちろん当時は王族と教会が支配している世の中でした。しかし手足となって働いてくれる人がいなければどうしようもありません。働き手のいない広大な農地と少ない働き手を取り合うため世の中は変わったのです。

後にヨーロッパの人口は19世紀になりようやく元のレベルに戻りましたが、労働条件が下がることはありませんでした。資本主義が生産性向上を義務付けていることは見逃せません。

歴史って大事ですね。

この教訓からすると、日本もヨーロッパに遅れること800年経ってようやく労働条件に改革がもたらされていると考えることができます。財界がなにを言おうが、地方の権力者が慌てようが、労働条件を向上しなければ働く人は来ないのです。人間がもっとも貴重な資源となりつつあります。

私が最後に勤めていたSAPはドイツに本社をもつ企業です。他社より高い報酬の代わりに高い生産性はみんなに求められていました。言い換えると無駄なことはやらないのです。
外資系企業のオフィスで働いたことがない人のために、数社で私が経験した外資系企業のオフィス環境を書いておきますが、以下が違います。

  • オフィスの清掃はビルの清掃業者にまかせる。
  • 9時前になにがなんでも来て準備!なんていう人はいない。
  • 昼休みを12時から1時まできっちりという人はいない。
  • たいてい「パントリー」というお茶くみ場があり、コーヒーは無料。社によっては菓子パン無料。
  • 有休取得がモロに仕事のスケジュールとぶつかるとマネージャと相談になるが、原則自由。逆に取得日数が少ないとマネージャが上司に問題視される。
  • 有休はだいたい年間20日。繰越ありで年間40日までは休める。病気休暇、ボランティア休暇、自己研鑽休暇などは別。
  • 株を安く買えるかもらえる。たいていドル建てなので、私は為替でメチャクチャ得した。
  • 細かい表彰制度がある。たとえば「◯◯人以上、感謝コメント書いた」ということなどもある。
  • 給料は人によって大きく違う。
  • 経営陣がしょっちゅう直接対話ミーティング時間をもつ。どんな従業員の質問にも答えられるのが普通の経営陣
  • 意味のない部門はリストラされる。5年程度の期間限定プロジェクトなども終了したら解散。従業員は再配置されることもあるし辞める人もいる。これはそれぞれが専門家であるから。

日本人が好きな表面上の態度より、実際の生産性を追求した結果がこうなっていると考えてください。

これらも日本のオフィスに取り入れられるようになるでしょうね。

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