テクノロジー遊び

シングルボードコンピュータの存在意義

Youtubeなどを見ていると、シングルボードコンピューター(ArduinoとかRaspberry Piとか)に似た新製品が次々に発売されている。

が、日本人らしいおかしな方向に進んでいる気がする。

人気のコンピューターの特徴

そもそもシングルボードコンピューターは、Arduino, Raspberry Piとmicro bit:を見る限り、すべて教育用機材から出発している。
それより前は私の知る限りMicrochip TechnologyのPICシリーズがメジャーで、今もOSが必要ない分野では大量に使われている。

シングルボードコンピュータは、いつものように日本人はハードウェアスペックしか見ないけれど、大事な3点に十分な時間をかけて発売された。

1. 価格

シングルボードコンピューター(とくにイギリス製)は安価なパーツを選んで作られる。
だからインテルCPUなんてものは、まず乗らない。
よく、この価格で作れたな、というような工夫がされている。
マシンスペックより価格が出発点なのだ。
中国製のESP32は性能は高いが激安なので、あっという間に世界中に広まった。
アメリカ人の私の友人のイチオシデバイスだ。

日本製のシングルボードにはまったくない発想だと思う。
インテルが作ったedisonやテキサス・インスツルメンツが作ったbeagle-boardなどは高価でなかなか普及しない。逆にいえば、デバイス屋さんのマーケティングでもわからない分野なのだろう。

2. ソフトウェア開発環境

どのボードもどういう教育目的とするかで、しっかりした開発環境が用意されている。Arduinoの場合、開発環境が素晴らしすぎて多くのシングルボードコンピューターが開発環境を借りている。Raspberry Piの場合はRaspianOSというLinux派生のOSまで作ってある。micro bit:の場合は、GUIだけでプログラムが作れるまで用意されているが、もちろんmicroPythonでゴリゴリ書くことも可能。
「初心者だからこの程度でいい」という人をバカにした発想がないのだ。

3. 外部インターフェース

どのボードも外部と接続するためのインターフェースが配慮されている。

これららのボードがIOTのエッジデバイスに使われることは多い。
そこで、価格重視—>少電力マシンであることが、有利に働いているし、外部インターフェースは重要なのだ。

4. 即時性

シングルボードコンピューターが特殊な用途に特化したものがある。
たとえばドローン搭載のフライトコントローラー。
なぜRaspberry Piなどの汎用ボードが使われないかというと、いくつか理由がある。
私なりに挙げてみると

  • コネクターが多い(Power, GPS, Buzzer, I2C, SPI, などなど)
  • 内部に加速度計をもっているのが普通
  • 加速度計、コンパスを利用しながら一秒間に数百回の姿勢制御を行う
  • 一方でラジコンなどからのコマンド処理をする(リアルタイムOSが必要)

などフライトに特化する必要がある。
汎用のPCでは不便な世界がある。

日本でのシングルボードコンピュータの活用

ところが、日本でのRaspberry Piなどの使われ方を見ていると、

  • 早いほうがいい。より強力なCPUが乗っているほうがいい—>大電力が必要
  • プログラム開発なんかしない。オープンソースのコンポーネントを入れて動けばいい—>教育とは無関係の趣味
  • 接続するものはLAN, キーボードとディスプレイ —> IOTとは無関係の安いPC

「小さい安価なPC」という認識ではないのだろうか?

もちろん、使う人みんながそうだとは言わない。ロボット作ったり、農業で使ったりしている人もいる。

でも、「ラズパイマガジン」や「スイッチサイエンス」に並んだ商品を見ると、そういうユーザーが圧倒的に多いようだ。
Rapberry Piのケースを見ても、GPIOピンの邪魔をしていないケースを見つけるのは苦労する。CPU上にファンがついているものが多いが, GPIOから電源を取ることを想定しているようだ。これでもう、GPIOにピンソケットをかぶせられなくなる。

Raspberry Pi 4 をケースに取り付け、ファンを付ける | tarufulog

このようなケースが多数あるということは、GPIOを使わない人が多いということなのだと思う。

私が使うケースはこういう感じ。

Raspberry Pi4以降、ヒートシンクはつけないと熱でパフォーマンスが下がる。したがって、パッシブに冷却するヒートシンクをかねたケースをつける。GPIOピンは見てのとおり自由に使える

「ミニPC」として使うユーザーは、シングルボードコンピューターにいろいろと不満が出るのだろう。
例えば秋月電子を見ると、LATTEPANDラテパンダなどという38500円でWindowsが搭載されているボードがある。
こういうのが日本人好みなのかもしれない。

しかし私は「Raspbrry Piより早いボードが出た」とか言われてもさっぱり食指が動かない。
Raspi 4でも電力食い過ぎで不満たらたらだ。

関連記事

  1. USB3.0その後

  2. hp2133 mini-note 購入騒ぎ

  3. PIC12F629のソフトウェアによるスイッチ

  4. オシロスコープ

  5. ラベルライターの勝負がついていた

  6. LOOX U/G90 vs. Ubuntu 11.04

  7. 実はほとんど選択の余地がなかったVictorinox

  8. LittleBitsがKORGを切った