起業

イマドキの営業スタイル

東洋経済オンラインに「「独立」に失敗する人・成功する人3つの決定的な差」という記事があった。

なんと3000人以上の起業をしようという人に共通している点は以下の7つ。(番号は議論のために筆者がつけた)

  1. 「強み」に基づいた事業を行っている
  2.  圧倒的な「付加価値」を武器にしている
  3. 「継続して儲かる仕組み」をつくっている
  4. 「下請け仕事」を極力避け、自ら顧客を開拓している
  5.  主力事業(本業)が苦境に陥ったときの「備え」がある
  6.  将来の引退に備えて資産形成の準備をしている
  7.  仕事とプライベートの垣根がなく、人生そのものを楽しんでいる

幸いにしてこのブログでは1から7までほとんどカバーしてきたように思います。(資産運用が最後の課題でしたが)
記事の筆者がもっとも重要なポイントは4だとおっしゃっています。

今回は4以外については、しばしば書いているので「顧客開拓」について書きます。

起業して「客をどうやって発見するか?」です。
以前、フリーランスをオススメしないという記事を書いたのですが、まさに「自分がお客をもっていないがゆえの次善の策」だからです。

この記事ではそれを「営業力」と表現していますが、私は言葉のイメージが悪いと思います。

営業力というと、見知らぬお客のところに出かけていって、名刺交換して、自社のメリットをいいたてて、なんとか商談を見つける、というイメージありませんか?

今は必ずしも、そんな時代ではありません。
私の経験を書きます。

20年ほど前に起業しようか考えていたころ、最初は会社相手(ビジネスユーザー)にスキルを売る商売を考えていました。当時の常識ではコンシューマー向けというと販売店やら製品の製造やら初期資本がやたらとかかったのです。
一方、ビジネスユーザー向けって事務所、電話とパソコンあれば始められますよね。
営業という行為も当時であれば、サラリーマン時代に貯めた名刺を元にあちこち回ることしか考えられませんでした。

1997年にインターネットが知られるようになったころ、日本のビジネス界はまっぷたつでした。ひとつはインターネットに無限の未来を観る人々、もうひとつは「あれは仮想の空間で実態はない」という人々。
インターネットに出店が遅れた会社はみーんな後者の考えを信じていたのです。
百貨店なんか最たるもので、インターネットショップを鼻で笑っていました。
私も知り合いのお店に「ホームページやECサイトを作ったほうがいい」と言ったのですが、反応はとても鈍かったです。

一方でインターネットへ接続するサイト、検索エンジンは進化し続けました。

忘れもしませんが、Yahoo!はもともと編集者がいて、彼らがウェブサイトの索引を作っていたのです。
当時はいかにYahoo!のリサーチャーに認められるようなサイトを作るか、がインターネット界の大きな課題でした。
しかしサイトの増加はYahoo!の人手で捌けるようなものではありませんでした。
自動的に成長するGoogleが勝ち残ったのです。

このGoogleの検索エンジンでビジネスの仕方はまったく変わったことに、いまだに気付いていないサラリーマンは多数います。
いわゆる「ロングテール」ですね。ニッチであればあるほど、人は検索エンジンを使って自分の知りたい情報を探します。

名刺の束よりも、訪問する人が知りたいことを書いてあるサイトがお客を呼ぶようになったのです。
Googleの検索エンジンも「探す人に的確な情報を紹介する」ことを使命としています。
にもかかわらず、SEO(Search Engine Optimization)と銘打って、お客が求めているものをもっていないのに自社サイトに誘導しようという試みが後を絶ちません。
Googleは優秀な頭脳とプログラミング技術で、そのダサい試みを粉砕しつづけています。
SEOを唱えている連中がGoogleのプログラマーの知性に勝てるはずもないのに。。。

SEO業者の言うことなどどうでもよく、Googleの使命に即した「訪問者が見るに値するサイト」を作ればGoogleはきちんと検索者にあなたのサイトを紹介します。

指摘するまでもなく、Amazonもヨドバシカメラも営業があなたの家にやってきませんよね。

さらに新型コロナで法人営業が他社を訪問することが控えられるようになりました。
結果的に無駄な「打ち合わせ」は大幅に減り、お客もそのよさを知ってしまいました。
ビジネスユーザー向けも「この道、ン十年の俺様の営業スタイル」の御用聞き営業が通用しなくなっています。

外資系で働いているとよくわかりますが、最近の外資系の会社の営業はコンサルティングファームの営業スタイルに極めて似てきています

つまり、
なんらかのコンセプトを企業が目指すべき方向としてぶちあげて、そのコンセプトを説明する中でお客さんの需要を探る(デマンドジェネレーション)タイプです。

ちょっと古いかもしてませんが「インダストリー4.0」なんかもいい例ですね。なにを言っているかよくわからないから、様々な事例を紹介し、お客さんはどうだろうと考えてもらい、営業をしながらお客さんに新しいアイデアを適用していきます。

この方法だとお客さんは少なくともバズワードをきちんと理解できるため、時間が無駄になったとは思いません。
「なんかないですかねー」とお客を連れて銀座のクラブやゴルフに行って御用聞きするより、はるかにまともですし、もう飲み屋に出かけるという習慣がこの2年のコロナ騒ぎで消え去ったのではないでしょうか。

大企業の場合はコンセプトを作り出せますが、起業したばかりではそれは難しいことです。
しかし、バズワードはいつの時代もあり、検索エンジンの上位を占めます。Googleトレンドを見るといろいろ調べられます。

そうすると検索する人を対象にパッシブですが営業をかけられるということです。「問い合わせ」を用意しておけば、必要なお客さんは問い合わせてきます。これならば、大企業でなくてもできます。
今の時代は起業してすぐに営業が可能な時代なのです。

もちろん検索エンジンでは埋もれてしまっている、などの事業があるかもしれません。それは冒頭にリストした「独立で成功する要因」リストを検討して、自社のビジネスモデルが生き残れるものなのかを再検討する必要があるでしょう。

自分が消費者の立場に立てばわかることですが、テレアポ、飛び込み営業などは警戒されるだけの愚行です。
今は「営業努力」だけで製品、サービスが売れる時代ではありません。

参考図書

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