「サラリーマンは300万円で会社を書いなさい」という本に代表されるように、今、素人による企業売買が盛んになりつつあります。
が、サラリーマンとしてもM&Aに参加していたことがある私からすると「ちょっと待った!」
会社を買う危険性についてこれから書きます。
- 本当にその値段だけで会社を買えますか?
サラリーマンが買える程度の会社といえば、退職金を上回らない数百万円だと思います。
そういう値段で売りに出ている会社について、他に借金がないか調べてください。
難しい言葉ではデューデリジェンスといいますが、お金の動きを洗いざらいはっきりさせることです。
在庫は別に買ってくれなどと言い出す経営者は珍しくないです。さらに零細企業でよくあるのは、現経営者が個人的にも借金をしていて、この際、これも返済してくれと言い出すことです。 - 本当にその価値がありますか?
バトンズの案件が毎週メルマガで流れてきますが、利益がゼロなのに数千万円の値段をつけている会社をよく見かけます。おそらく固定資産が巨額なのか、今までの失敗を資本金に繰り入れて肥大した資本金になっているのかでしょうけれども、どちらもビジネスとしては成立していません。
「あなたのがんばりでなんとか」なんて信じちゃいけません。ランニングコストを払うのはあなたです。
多少の利益が出ているように見えている会社でもコストをきっちりリカバリーできる目処がない会社を買うべきではありません。 - その企業の事業についてよく知っていますか?
しばしば企業買収に限らず、不動産などに手を出すサラリーマンがよくいます。たいてい虎の子のお金を失い、さらに借金を背負ってしまいます。株や投資信託を買う時はあまり事業について知らなくても儲かることがあります。しかしこと事業に限っては無知な人間は食い物にされます。誰かが売り先が見つからず手放そうという会社はどこかに問題があるからであって、それに気付けないようでは買収してはいけません。敵は従業員にもいるのです。ましてやAmazonやYoutubeのアカウントを売りますなんて、なんの価値もありません。 - 買収したらなにが手に入るのでしょうか?
バトンズなどで売りに出ている飲食店は総じて安いです。それはどこかのビルのテナントだからです。
それでもそのお店が廃業してしまったら、しばしば「居抜き」という形でお店については費用を払うことなく入手することすらできます。わざわざ金を払うとしたら、なにに払っているのでしょうか?
企業買収では一般的には製造装置、従業員とお客さんを入手することができます。しかし人間は流動性が高い(出入りが激しい)ため、維持するためには費用がかかります。法人の名前だけ手に入れてもあまり意味がないことが多いのです。もちろんその企業のユニークな技術などが一般論としては価値の対象になるでしょう。しかし今、議論しているのは格安で売りに出ている企業です。その企業を買うことでなにが手に入るのかはしっかり見極める必要があります。利益だけを眺めていると失敗します。 - 違法じゃありませんか?
零細企業は意外に違法行為をやっていることが多いです。労働法を始めとし事業に関係する法律をひととおり確認したほうがいいです。たとえばサービス残業をさせていることでかつかつ利益が出ているとしたら、そんな会社を買っちゃいけません。飲食店で呼び込みしていたら、今はほとんどの地域で呼び込みは違法ですから注意する必要があります。健康食品でウソの広告を流していたら、ある日突然、警察や保健所が来て事業の息の根が止まることもありえます。法律をなめてはいけません。 - 買収したら、あなたはなにをするつもりですか?
ひょっとしたら経営権を買えば、社長として左うちわなんていうことを妄想していませんか?「出資したら配当が入ってくる」っていう話に今までどれだけの人が騙され、法律が強化され、さらに人が騙され続けてきたでしょうか? お金を出せば確かに支配権は手にはいります。だからその権力を使って会社を伸ばさねばなりません。それは簡単なことではありません。「よきにはからえ」なんて言ってたらたちまち食い物にされます。ましてや前任者の手垢のついた会社を望む方向にもっていくのは簡単ではないと知ってください。
企業買収って簡単なようで見極めが難しく、すでに他人の手垢がついているために思うように動かすことも簡単じゃありません。ラクはできないのです。
買収を考えると同時に、自分での起業も必ず天秤にかけて考えてみるべきです。