サラリーマンのふり

また人事部の無能ぶりが表面化

最近、社員の処遇がメンバーシップ型からジョブ型に変わりつつあると、あちこちに書かれている。

外資系企業はずっと昔から、ジョブ型だし成果主義だ。

だからこそ日本企業が本当に変われるのか、気になる。

いまだに成果主義は日本に根付かないだの、あんなひどい制度はないだのと、誤解したままの人の意見をみかける。
私に言わせれば、成果主義をきちんと伝えられなかった日本の人事部に責任がある。

そもそも日本企業で人事部は管理職の研修をやっているのだろうか?
例えば課長の辞令を渡したら、もう課長として振る舞えると安易に済ませている会社がとても多いように思う。

同様に評価が簡単ではない成果主義における評価について、きちんと研修をしたのだろうか?
「成果だから数字に現れなければいけない」とか誤解を生じさせておいて野放しで失敗した例ばかりを見かける。

某通信会社にいたころの経験だけれども、この会社は人事部もローテーションで数年で社員が入れ替わる。
それゆえ逆に、自分達が人事のプロだなんていう自惚れはなく、成果主義導入の際もいくつかの人事コンサルティング会社のコンサルを受けていた。
管理職研修で、ヘイ・コンサルティングの講師役のコンサルタントの方が「2年かけて取引のなかった会社に提案書をもっていけるようになった。立派な成果ですよね。この成果をあなた方はどう評価しますか?」という問いかけをされたことを今でも覚えている。
この質問により、他者との協力や成果は数値だけではない、というように管理職同士の意見交換で理解が深まり、成果主義についての正しい理解が進んだように思う。(誤解しないように書いておくが、管理職研修の内容はこれだけではない。最近、書かれていることがすべてだと考えてしまう常識の足りない読み手が増えているような気がする。)

これまでの日本企業の人事部のだらしなさを見ていると外部の見識も取り入れず、ジョブ型はやはり失敗するように思う。

おそらく平社員を増やす口実にのみ使われるのではないだろうか?

一応、ジョブ型とはどういうものか私なりに説明しておく。

外資系では組織を作ると、そこでどういう人が働くのかというスタッフを決める。
そのスタッフについて、シニア・コンサルタントとかコンサルタントとかL1マネージャとかの職位を決めていく。
それぞれの職位は、どういう仕事が想定され、どういうスキルやバックグラウンドが必要か詳細に記す。

ジョブディスクリプションというが、採用の時に参照されるし、スキルがあがると職位もあがるわけでその時の基準にもなる。

断っておくが、ここで毎年の具体的成果とジョブディスクリプションはリンクしない。
日本でジョブ型として「担当する内容(ノルマ)を明確に定義し、職務の大きさに応じて報酬が支払われる」と説明している文章を見かけたが違う。
それだとその人がそのジョブにおいて、どう成長すればいいかはっきりしない。ジョブは職位にリンクする。

毎年の目標と成果は成果主義として定義する。そうしなければ毎年変わる企業の目標に対応しきれるわけがない。

このジョブ制度と成果主義は、アメリカで徹底的に差別を排除していく中で生み出された唯一の方法だ、と橘玲氏はいう。
私も50歳代の転職は苦労した。年齢で差別されるから。
日本企業の人事部は自分たちが差別をしていることにまるで気づいていない。気にもとめていないだろう。

管理職になりたい人間はなればいい。しかし、管理職の場合は転職は難しくなる。
ジョブ型で専門家としてスキルアップしたほうが、他社で似たような仕事にはつきやすい。
管理職はITのおかげで必要人数が減っているし、その会社のスペシャリストになることを意味しているから転職は難しくなる。
もちろんセールスをやっているならば話は別。

だから本来のジョブ型では「給料があがらない」は嘘で、スキルがあがれば職位はあがり基本給はあがる。

結局、日本企業の本音は儲かっていないし、事業も伸びない。
だから給料を払いたくない。働いている人のポジションもない。
ジョブ型というのは昇給もポジションもあげなくていいらしいじゃないか、ということで人事部が安易に飛びついているのだろう。

成果主義同様に、ジョブ型について間違った認識がこれから日本社会に広まると予想する。差別はなくならない。

これから起きることは、企業の貧富の拡大だろうと予想する。
今まで日本企業が個々人の目標を決めず、働くひとのポテンシャル(能力)とやってそうな雰囲気の印象で人事評価としてきた。
管理職を別段教育しないで個々人の印象で評価してきたということだ。
そのようないい加減な人事評価でなんとかなってきたのは、終身雇用を働く側が信じて会社に貸しを作ったつもりで年を取ってから返してもらうつもりだから目くじらをたてなかったのだろう。
それは見方を変えると、会社の事業自体がそれくらいいい加減でもなんとかなったということだ。

今は上場企業の平均売上高経常利益率が4.8%程度だという。
私から見れば赤字寸前だ。事業がうまくいかなくなったからこそ、会社を引き締めなければならないのに、給料を払いたくないからという動機で目先の対応をする。

成果主義の導入すら多くの企業が失敗したのに、さらに難しいジョブ型なんて無理だろう。
そうすると、だらしない会社で安月給では生きていけない人が希望と処遇を求めて、儲かっている会社に殺到することになるのではないか?

私には多くの日本企業が制度疲労を起こしているように見えてならない。
売上がさえないことへの対処を社員に丸投げして、社員の労力は使い放題だという考えでリストラや評価基準を変えて給料をへらす。
いつになったら株主を向いてきちんとした経営管理をすることが当たり前になるのだろう?

少なくとも新卒からずっとひとつの会社で従業員として働き、最後は経営者になるけれど逃げ切ることが当たり前の会社はもうやっていけないのではないだろうか。
なによりも外の空気を吸っていないから、成果主義もジョブ制度もわからない世間知らずだ。

逆に働くひとにとっては、会社の見分け方は簡単で、儲かる仕組み(強み)を持っているか?と、管理職の教育をきちんとやっているか?だと思う。
転職の際の参考にしてほしい。

関連記事

  1. 大企業の社員は転職しずらい、らしい

  2. モノの価値

  3. Podcast聞いてますか?

  4. 電波利権

  5. 社会には、すがれるものなんてない

  6. みんなが誤解する年収

  7. 人の肩書と実力

  8. 受託ソフトとか人貸しビジネスの終焉

記事をプリント