起業

商品に求められるストーリー

JBPressに「会社員や主婦が続々と「ひとり商社」と化しているのはなぜか?」という記事をクラウドファンディングコンサルタントの山下貴史氏が投稿されている。

クラウドファンディングは資本主義の新しい投資形態だと思うので読んでみると、すでにプロジェクトをあげれば儲かるという段階ではない。(そりゃ、こんだけいろいろなインフラがあったらそうだろう。) クラウドファンディング自体をある程度広告しないと埋もれる段階だ。

だから一般的なものではなく、ニッチなものがいいという。いや、もともとクラウドファンディングはアグレッシブなデジタルガジェットが対象だったように思う。
ニッチなだけに山下氏は「ファンディングの頃から一貫して製品が生まれるに至ったストーリーを打ち出してきたことだ。」と彼もストーリーの重要さを訴えている。

たまたまなんだけどNetflixで「アンダーウェア」というオーダーメイド下着メーカーのドラマを見ているんだけれど、社長の南上マユミ(大地真央)が「新製品はストーリーがなければ作る気がしない」という。
どういうことかというと例えば「初めてデートに出かける女の子が身につける下着。もちろん見せるわけじゃないし、あまりにアダルトでは困る。でもちょっと背伸びをした。。。」と、その商品が使われるストーリーが必要なのだという。

商品を企画する時に、市場調査をする対象の人を「F1=女性20~34歳、F2=女性35~49歳、F3=女性50歳以上、M1=男性20~34歳、M2=男性35~49歳、M3=男性50歳以上」などと雑にわけてF1は結婚適齢期などと決めつけてニーズをさぐる手法というのは昔からやられているが、うまくいくわけがないと思う。

ニッチにファンを作ろうという商品としては雑すぎる。

上のようにその商品がどういう時に、どのような思いで使われるのか、という背景が考えられないようでは商品にならない。
しばしばお客さんが見えるようにするために条件を厳密にする「ペルソナ」という手法もあるようだ。
「45歳、サラリーマン係長、奥さん42歳と娘17歳がいる」などとやるのだが、このペルソナに気持ちを吹き込むことは不可能だと思う。なぜならば、彼の行動予測を理論的に語るしかない。しかし人間は不合理な生き物なのだ。
適当に決めたペルソナを一生懸命語るくらいなら、リアルのお客をひとり、ふたり連れてきたほうがいい。

それでも今度は「お客の言っていることが売れるとは限らない」というジレンマにぶちあたる。

だから私が「お客以上にそのジャンルのオタクであるべき」というのは、ストーリーが見えるからだ。
横からお客を見ているようではお客の思いはわからない。

実際に私も「こういうものはニーズがあるから作れば売れるだろう」と作ったものはほとんど売れない。
自分が欲しい、もっと技術を極めた、というところで浮かび上がったものだけがお客の心をつかむようだ。

逆をいえば、変なプロ意識を持たず、お客と仲間であるような形が望ましいのだろう。

ニッチでなくてもストーリーは必要だ。
ブランドモノが典型例だ。
グッチはフランス王朝御用達の馬具製造。ロレックスは宇宙開発。ゼロハリバートンも月から石を持って返ったかばん。フェラーリはレース。などなど、およそストーリーのないブランドはとても弱い。

確かにストーリーはマーケティングの重要な要素だけれども、すでにマーケッターの手を離れていると感じる。
バブル盛んなころ、コピーライター糸井重里が「おいしい生活」というキャッチで西武百貨店の売上を大きく伸ばしたことがある。他にも彼の代表作としては「じぶん、新発見」とか「不思議、大好き」などがある。
ショートストーリーがブランドに見えた時代だ。
同じような手法にレナウンがやっていた「レナウン娘」なんていうのもあったな。
おそらく今、こんな目線のキャッチを出してもさっぱり反応を得られないと思う。
今の時代は商品自体がストーリーをもっていなければ共感を得られないのではないだろうか。

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