「騎士団長殺し」って言葉自体、村上春樹の小説以外にGoogleでも見つからない。
だから「村上春樹の」は省いた。
ようやく上下巻を読了。
個人的には前半は素晴らしい。
後半はついていけない。
なぜならば、「騎士団長を殺さねば少女は帰ってこない」ってことはまったくなく、彼女は免色(めんしき)の家に不法侵入して脱出のチャンスを見失っていただけだということになっているから。
たとえ主人公が現実世界から消え、無と有の境界を越えメタファーの世界をくぐり抜け、ふたたび現実世界の穴に戻ってきたことを認めたとしても。
でもね、そんなこと書いた村上春樹さんは承知の上だと思う。
そして、いろんな感想を見ていて思うことは、この小説は(予想どおり)読む人によってまとめ方が違う。
さまざまな事実が書かれていて、そのどれに着目するかでストーリーの見え方が違う。
Amazonの感想などを見ると「クリトリスなんて書いていてけしからん」とか「作中人物は貞操観念なさすぎ」とか「南京大虐殺を肯定していて許せん」とかご本人のコンプレックスを丸出しにしてしまっている。
小説(物語)がこれだけ読む人の過剰反応を引きづりだしているところがおもしろい。
この本を読みやすいという人もいるが、本当にそうだろうか?
数多く書き込まれたおもしろい視点の文と、数多くの事実、話しは進んでいるがそれは読む人により受け止め方が違う。それを「村上春樹節」とまとめたところでなにも語っていない。
村上春樹の膨大な表現方法に圧倒されるだけ。
それでもめげずに「騎士団長殺し」を解釈するとしたら、前半は登場人物やモノはイデアの羅列で、後半はどうとでもとれるメタファーの羅列なのかも知れない。
ということで、この小説は不朽の名作なのだろうと思った。