雑感(日記)

ドローンビジネスの光と影

数日前にFacebookにこんなことを書いた。いずれ消すのでこちらに記録しておく。
さらに過激な予想をするので、数年後に読み返したい。

以下を読むとドローンを規制している二種類の法律、電波法と航空法の運用のされ方をご理解いただけると思います。
「三級陸上特殊無線技士」の免許が来ました。
よく「ドローン飛ばすのに、この免許がいる」っていう報道を見かけますが、ウソです。
たいていのラジコン、ドローン、無線LAN(Wi-Fi)は民間に開放されている2.4GHzから2.5GHzで無免許で使えていますよね?
しかし、ドローンにビデオカメラなどを載せてデータを電波で飛ばそうとする場合、他の帯域を使うので免許が必要です。
ちなみに、免許取っただけじゃ足りず、そのドローンは移動無線局として申請が必要なんです。
面倒くさいので、なんとなく「免許もってるぞ」以上の価値があると思っていません。
次に「ドローンの操縦には必ず操縦免許がいる」という記事も見かけますが、これもウソです。免許取得商売をしている学校が微妙なウソをばらまいています。
そもそも操縦免許はドローンの飛行分類、第四種に相当する人口密集地の上空を視界が届かない広い範囲で飛ばしたいという業者の要望から生まれました。
ニュースでAmazonがドローンで荷物を配送するなどと簡単に言っていますが、その背後には航空局の「ドローンは無人飛行機である」という利権を保つために大変な努力が必要となっています。航空機と同じ信頼性を担保した審査書類の提出、飛行記録、飛行計画の提出など、有人航空機とほぼほぼ同じことをやらねばなりません。(法律を読みましたが、個人的にはこれだけで十分、外資系や零細企業の進出を阻止していると思います。)
人口密集地の定義はこちらです。お住まいの場所はどうですか?
とくに首都圏は、土地の所有権については(土地は自然が作り出したものなのに)みーんな気が狂ったようにうるさいので、事実上、テストで飛ばせる場所はドローンの関係者の場所以外ないと思っています。
上記の操縦免許を取っても、会社でなにかする以外、意味があるのか疑問です。
がんばって取得しても仕事としては使えないでしょう。
一方で、人口密集地でないところ、空港周辺でない、150メートル以上の上空でないならば、免許は必要ありません。
もし、ここにまで法規制の網をかけると、今の国民の認識とほぼ同じ「日本ではドローンは禁止なんだ」と思われ、学生やベンチャーによるドローンの技術を育てることはほぼ無理となることでしょう。
ドローンはエレクトロニクス技術の集合体です。この分野で出遅れると、産業用ロボット技術に関して日本は大きく遅れを取るであろうことは知ってください。他分野同様、今でもかなり厳しい状況です。
でも、この規制は地方でこそドローンの技術を磨くチャンスがあるということを示しています。地方創生にいかがでしょうか?
だらだらとドローンの認可の現状を書きましたが、私の頭に常にあるのはP2P技術の世界的先駆者だった金子さんを逮捕することにより動けなくしてしまった京都府警の愚行です。
金子さんは最高裁で無罪を勝ち取りましたが、極短命で生涯を終えました。日本では本当に貴重なソフトウェアの研究者だったんですけどね。
記事にある通り、彼が有罪ならyoutubeなんて著作権違反幇助の極悪人のはずですが、アメリカ様がやっておられることには何ひとつ口を挟みません。
私は新しい技術の利点を見ないで負の面だけを見て規制だけすればいいという、日本の場当たり的なやり方が日本に産業が育てないひとつの理由だと考えています。
(いや、あいかわらず大企業には規制緩和しています)
最近知った言葉に「タイムマシン経営」という言葉があります。
海外で成功した事例を日本にもちこんでマネする。
SLACKのマネとかいまだによく見かけますよね。
やってることは、昔の日本と同じ。アメリカから車やコンピューターを買ってきてバラバラに分解して研究してマネる。
規制ばかりして成功事例を自分で作れないから、こんなものしか育たないよな、と思います。
— facebook転載終わり
さて、ドローンビジネスの市場はどれくらいと予想されているかというと、いろいろ見ましたが、主に物流と点検で8000億円と見られているようです。
この規模になると大企業が手を出す分野です。
それは役所ととても親和性がいい。役所は上に書いたようないろんな書類を求めます。その要求に答えられるのは人手が常に余っている大企業であり、零細企業には無理です。
ここからわかることは、今後、日本でドローンメーカーとして存在する小さい企業は立ち行かなくなるであろうということです。
SONY, ヤマハ発動機, クボタなどが出していますが、法律に守られ日本で産業用ドローンとして順調に成長していくことでしょう。
工場ももっていますしね。
中身は完全にクローズドでオープンソースなど絶対に使わないはずです。
私が仮にソニーのドローン事業の部長なら、アイデアだけもらって(アイデアには著作権も特許もないので)あとは自分のところで数十人がかりで書かせます。そうすれば、できるとわかっているものは開発してできるし、クローズドなものを営業力で売り出せば儲かるし、産業用でトラブルが起きたら自社で対応しないといけないから。
そのうちトヨタ自動車、日産といった自動車メーカも参入するでしょう。なぜならば車の自動運転ってドローンですよ?それも空を飛ぶドローンよりはるかに難しい。
航空機について書類の提出に慣れた、JALやANAもドローンメーカーとして名乗りをあげるでしょう。(あいつら機内食まで売る連中ですからね)
この予想が正しければ競合する零細企業は生産力、法規制対応、マーケティング、営業力で勝てるわけがありません。日本の空を飛ぶドローンは、2,3年前に法整備ができたところですでに勝負が決まっていたといえます。
私は某ドローンエンジニアの団体に「団体が難しい役所への届け出書類を出すコンサルティングもしくは代行をするべきだ」と提言したところ、多くの人は「そんなものがなくても飛ばせる」と無免許ですむ場合ばかりをあげ、趣味の観点でしかドローンを捉えておらず驚きました。
勉強してビジネスしようという人はほとんどいなかったということです。
徐々に聞いたことのある日本企業の製品が150メートル以上の高度の空を飛び、時々、日本メーカーよりはるかに進んだ海外のベンツのようなメーカーの機種が現れるだけでしょう。
なぜこんなことを書いているかというと、ドローンの製造メーカーはすでに失敗例があるのです。
私がドローンの勉強を始めた時にはすでになかったアメリカの3D Robotics(3DRと略す)という会社がありました。
3DRはアメリカを代表するドローンメーカーでした。そしてドローンの世界にハードウェアの面でもソフトウエアの面でも多大な貢献をしました。
詳しく書くときりがないですが、今のドローンのオープンソースプロジェクトの多くは3DRの遺産に頼っています。それでも撤退せざるをえなかった。
表面上はDJIとの戦いに破れたかのように見えますが、私の疑問はDJIは軍用のドローンも作っていないだろうか?ということです。もし、軍需産業と取引先あるのならばコンシューマー用ドローンの価格は赤字にならなければいいことになります。
実際にウクライナ侵略戦争ではDJIのドローンが使われているのですから。
いずれにしても「ドローン専業メーカー、とりわけコンシューマー向けのビジネスは難しい」という事実があるのです。3DRのビジネス失敗+日本の法規制、です。
日本でコンシューマー向けドローンなんて作っても売れるわけがないです。
じゃぁ、独立系弱小メーカーはどうするか?
大企業が手を出さないニッチ市場をやるしかない。
ですが、こんな例もあります。
みなさんがご存知のようにドローン業界は黎明期を終わり、発展期にかかっています。そのため、有象無象の役所の補助金目当ての企業が少なからずあります。
「◯◯◯の実証実験」などを信じないでください。ほとんどがそれっきりで、まるで実証されていません。
例えば、空を飛ぶドローンには致命的な欠点があります。
飛行機以上に悪天候に弱いのです。マルチコプターという羽を回転させて飛ぶメカニズムは滑空できませんし、旅客機ほどの大きさもありませんから、強風、嵐には弱いです。
離島への運搬なんて私は懐疑的です。
ドローンのデモがいつも晴天で風のない時に行われていることに気づいてください。
四輪のドローンは注目されていませんが、存在意義が多いにあるのです。
私の知っている人が芝刈り機を改造したような大きさの車タイプのドローンで芝刈りをしていますが、そういうジャンルです。
ドローンの市場をよく知っているエンジニアほど、空を飛ぶドローンは少しやるけれど、精力の大半は車タイプの機器を扱っているように見えます。
また、農業、林業、漁業など第一次産業は細かいノウハウが必要です。
ビジネスはスマイルカーブを意識するべきで、思い切り技術面でマルチコプター以外の四輪(ローバー)で戦うか、思い切りお客側の産業に特化したコンサルをやるべきでしょう。
大企業は業務用ドローンの製造、大きいビジネスの物流や公共事業(防衛、災害対策)などをやると思います。
よく見かける「ドローン技術のコンサル」とか「ドローンを作る」とかは、日本ではビジネスにならないと予想します。

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