いやぁ久々に村上さんが新聞を賑わせています。
2000年代、「モノ言う株主」としてあちこちの株を買ってはちょっかいを出していた人ですが、相変わらず信念は変わらず「会社は株主のモノである」なんでしょうね。
恥ずかしながら私もそう思っていた時期がありました。
と書く理由は今はそう思ってないです。
理由と企業は誰のものかの結論を書きます。
ここでいう株主、経営者は自由に株を売買できる上場企業の話と限定します。
この話を私企業にまでもっていくとわけが分からなくなる、言い換えると株の性質がまったく違うからです。
上場企業の株は市場で自由に売買できます。
株主はもっぱら株価が変動することでキャピタルゲインを得ます。
先の村上さんも「株主として主張する」けど、それは株価を一時的に押し上げることをやらせるだけで、キャピタルゲインが見込めたら、しれっと売ります。
株主はキャピタルゲイン欲しさですから、本当はその企業のビジネスについてはどうでもいいのです。
村上さんがやり続けていることは、株を買い、経営陣を脅して、株を特別価格でお買い上げいただくか、株が上がるパフォーマンスを演じさせて売り抜けるか、です。「モノ言う株主」ってこういう人です。
アメリカでもモノ言う株主は多く、それがうざいためパソコンメーカーのDELLは株をすべて買い戻して公開しなくなりました。日本でもすかいらーくが非上場化しましたね。
株式市場に株を公開するという意味は、株をより多く発行して増資することもできます。それが株式公開する意味だ、とも言われています。利子も必要ないし儲かった時だけ配当すればいいので、こんなおいしい資金調達方法は他にはありません。
そこで自社の子会社だけ株式公開するという企業も現れます。サントリーなどがそうです。サントリー自身は佐治さん一族の持ち物です。しかし、サントリー食品インターナショナルは上場企業です。
大多数の株は私企業たるサントリーホールディングスがもっているのですから、市場で株を買った株主は「カネだけ出せ」と言われているも同然でずいぶんバカにされたものです。
これを許す証券市場もよくわかりませんが、キャピタルゲインしか評価しないのであればありなのでしょう。
ここまで、株をもった公開企業の株主の権限を観たわけですが、
その企業のビジネスにはほとんど関係ない
ことに気づいて欲しいと思います。
さて公開企業の中を考えてみます。
日本企業で経営者がプロ経営者で外部から来た人ということは、めったにありません。ほとんどが従業員から経営者になった「なんちゃって経営者」です。言い換えれば出世争いに勝った運のよかった人々です。
なぜ優秀と書かないかというと以下のような事例がいくらでもあるからです。
経営者になったから優秀とは限りません。
今日の日本経済新聞の第一面に「アップル有機EL採用」とデカデカと出ています。ということは、シャープの没落は早まったということです。数十年前、カシオ電気とシャープは電卓戦争をしていました。どちらもそれで急成長しました。カシオはその資金を時計や様々な電子機器に投資し、なによりも世界に知られている「G-SHOCK」ブランドを打ち立てました。シャープは液晶と二流の家電製品を作っていて、液晶事業はそろそろ息の根が止まりそうです。
ソニーの創業者は技術者の天国を作りたいと思いました。しかし、出井というおじさんが「技術なんていらねー、デザインと金融だけで食っていく」と中途半端にアップルのマネを決めた日から没落が始まりました。今も映像以外に次のビジネスが見つからず右往左往しています。
これらは経営者次第で会社の未来が変わるわかりやすい例かと思います。
それぞれの企業内で「優秀な人」が上位のマネージャ、経営者に成り上がったハズなのにまったくそうなりません。
じゃぁ、なぜ経営次第で企業は没落するのでしょうか。結果、株価はだだ下がりになるのでしょうか。
シンプルな理由です。
お客がいなくなったからです。
逆に考えましょう。企業はお客さんのためにあるんです。そこからお金が入ってくるから企業を存続できるのです。
買ってくださるお客さんがいなくなったら、企業が傾くのは当たり前じゃないですか。
しばしば「企業は従業員のためにある」という言葉もありますが、それは嘘です。
上の一連の話で従業員は持株会でもやってなければ出てきません。会計上も給料や販売管理費は経費です。
そうはいってもモラルを持って働いてもらうために、福利厚生、人並みの給料が支払われるのです。その証拠に利益率の厳しい飲食サービス業は給料の割にメチャクチャな人使いをし、ブラック企業同然のところが多数あるじゃないですか。
別に飲食サービス業の経営者がサディストの変態ではなく、ビジネスモデルがそうであることを要求しているのです。
以上から私は「企業はお客さんのもの。世間に居場所があるうちが華」だと思っています。
そして、この原理は非上場企業にも通用することがおもしろいところです。