NTTにいた時、ビジネスモデルについてはずいぶん考えた。
汎用(はんよう)、なんにでも使えるってものがある。
典型的なのが回線だ。
音声、データを送受するためにあるといっても、人間の五感、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のうち、視覚、聴覚、場合によっては触覚、嗅覚までも送受できてしまう。
ものすごく汎用性が高い。
似たようなものに、マイクロソフトのオフィス製品がある。
文書を書くためのワード、表計算するためのエクセル、お絵かきソフトのパワーポイント。
ほぼ完璧に考えを二次元上で表現することができる。
ものすごく汎用性が高い。
どちらも世界中で売れているが、それは回線そのもの、オフィス製品そのものをお客が買っているわけではない。
回線は「パソコンがインターネットにつながります」とまで提案して接続してあげないと売れないし、
オフィス製品はパソコンにWindowsとバンドルして無理矢理使わせる、という手法がなければ売れなかった。
汎用性が高いものって買い手には抽象的すぎてわからないのである。
回線はいろんな種類がある。VPN、専用線、インターネット、インターネット上のVPNなどなど
こんなことを普通の人に説明して、どれかあなたに必要なものを買ってください、というのは無茶だ。
(当時、NTTの営業と称する人達は平気でやっていたが)
そういう人が抽象度の高い話、たとえばアウトソーシングの話をしても、信頼がない。
もちろんNTTの名前はよく知られている。
だからNTTの名刺はとても強力で、たいていの人が会ってはくれる。
が、それ以上の信頼はない。
昔、IBMの名刺をもって仕事をしていた時は限られたジャンル、つまりコンピューターとその周辺の話ならば信頼されていた。
その違いを克服するために、主張がはっきりした製品を作り実績で信頼を得る。
前回書いたようなWide-SANのようなエッジの効いた商品を作るのである。
そうすると営業力が弱くても、なんとかお客への引っ掛かりを作ることができる。
ビジネスを始めようという初心者は不安から、とにかく多くの人が使えるように汎用性を高めたほうが売れるのではないかと考える。
しかし、それは間違いで、買い手が明確に見えるほどエッジが効いた商品のほうが確実に売れるのである。
お客さんの代わりに利用シーンを想像してあげて確実なものだと見せてあげる歩み寄りが必要ということだ。