サラリーマンのふり

結局、三菱商事に拾われる?ITフロンティア

日経のタイトル「IT再編 日印連合が号砲」
サブタイトル「三菱商事、タタと日本事業統合」

でよく見ると、ITフロンティアの救済であった。設立の時、日本IBMさんも出資していて独立系SIで、IBMの技術と自由に売れるパワーでぇ、と当時の社長は鼻息が荒かったな。

冷たく見ていたら、この会社の顧客のほとんどは三菱商事さんのご紹介となった。なんか、昔のユニシスが三井物産のおかげで食べていたような感じだ。
それでも頼りのIBMの技術がたいしたことなくなったのでジリ貧になり、今回は技術力も三菱商事さんのご紹介となったのだろう。なんだかな。

ただ、それで新聞が書いているように
「閉鎖的市場に穴」

ができるかは、ものすごい疑問だ。

だって、そもそもIT業界のどこらへんが閉鎖的市場なのか?
で、なにが彼等の武器になるのか?

いつも言っているが、日本人はソフトウェアを作るのが下手だ。
世界的に売れているソフトウェアといえば、オープンソースのRubyが唯一ではないだろうか。それでも決してメジャーじゃない。
ソフトウェア製品は、ほとんどが輸入品を日本語化してできている。

蛇足だが、日本でソフトウェア・パッケージが成立しないには理由がある。

遠い昔、有名なパソコンデータベースを作っている会社が役員が欲しいというので会ったことがある。

彼等はもうソフトウェア・パッケージは作らない、と言った。
理由はバージョンをあげるたびに機能はふえ、複雑になり、お客はさして増えない。だんだん儲からなくなるから、苦しくなるばかりだ、と。

私は言った。
買う人が日本に少ないなら海外に売ればいい。

彼等は「そこまでは。。。」と黙った。
しかし、ここが日本のソフトウェアが世界に売れない理由だと思う。まず、海外に出ない。日本だけでは苦しくなるに決まっている。
他人の書いたプログラムにいくら詳しくなっても主導権は取れないのだ。
「そこまで」やらずにどうする?

閑話休題。

タタ・コンサルタント・サービシズのCEOは強みは「ビッグデータ」だという。それじゃ、ダメでしょ。借り物の技術じゃないか。

もともとインド企業は日本ではうまくいかない。
たとえば、転職業界で有名なウィプロという会社がある。離職率が高いので業界で有名で、いつも人を募集している。
なにも知らない未経験者、もしくはネットでの確認もしないカモだけがウィプロに行く。
なんでこうなってしまったかというと、インドで開発して日本にもってくるというビジネスモデルの訴求ポイントは「安い!」ってだけになる。

それなら役員がずらずらいないオーバーヘッドの少ない外人エンジニアを紹介する会社のほうが現場には高い金を払うから優秀な人間がいる。(実際、儲かっている)

しかし、よくよく考えるとこれは馬鹿な話で、ITを使う大きなメリットのひとつが生産性向上だ。いまどき、ゼロからソースコードを書くシステムはあまりない(ない、とはいってません!)

パッケージを修正する、追加する、が常識だ。

そしてプログラマーの優秀な人間は、ダメ人間の数人から数十人に匹敵する。コードを書くスピード、バグの少なさ、アルゴリズムの優秀さはどうしようもないギャップである。

そんな中で「安い人!」ってのを採用するということは「動けば、中身はどーでもいい」と考えてるお客の愚かさを証明している。
安い単価で集めたエンジニアが高価なエンジニアと同じ仕事はしない、できない、不可能。
そしてハリボテシステムはあとでバグる。
平気で「仕様になかった」という。
結果、業務がとても面倒なことになってることが多いのだが、めったに報道されないからおもしろい。

海外でデカイ企業、というとこれまた思い出すのが、EDSだ。hpに買収されてしまって今はない。時効だろうから書く。

EDSは古くからITアウトソーシングをしていた。日本に上陸したが泣かず飛ばす。
日本に上陸して業務提携した会社がブラックで、優良顧客には近づけない状態が続き、でも撤退もせずにダラダラ十年以上続いていた。

そこにあまり業界の実体を知らない、某電話会社が当時の社長の決断で業務提携した。
どうやって提携ビジネスをやるかの話をし、外人もたくさん来たが、彼等のコア技術(データセンター運用ソフトなど)を使わせるつもりは毛頭なく、ノウハウという小手先だけで日本で商売しようと本社の人間は考えていた。
EDSは軍隊の悪いところが似た会社で、上意下達、大事なデータは日本法人の社員にも見せないっていうセキュリティシステムにワロタ。

非常に残念だけど、運用経験をもたないEDSのコンサルのいう机上の空論は、長年、システム運用にかかわった電話会社社員や私の前に崩れ去った。
EDSに移っていた、かつての知り合いのIBMの先輩の作るビジネスモデルを叩くのは辛かったし、個人的に恨まれているだろう。
しかし給料の出処には忠実でなければならなかった。アッハッハ

ITフロンティアがタタの名前を前面に出して、顧客開拓するのだろうけれど、ウィプロやEDSの二の舞いになるだろう。

技術のトレンドは世界共通であり、それを使いこなして商売できるかこそが、企業の要であり、業務提携などという形でごまかしても商売にはならないということではないだろうか。

三菱商事さんも、グループ内の自動車会社やIT会社を救済しなくてはならないので大変だけど、ソリューションを見ると賢い人達だなと思う。

追記:ITフロンティアは、2014年に日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社となった。

これがうまくいくかというとまったく無理だと予想する。

今のIT業界はビジネスモデルという観点からすると、スマイルカーブの典型例である。
技術の出処であるか、お客さんにべったり張り付いている外部IT部門か、どちらかでないと利益は出ない。

真ん中でシステム・インテグレーション技術で、と叫んでいる会社すべて儲かるはずがない。
標準化という接合面をもつプラモデルを組み立てるのが得意なだけで儲かる時代は終わった。

こう書くとハラがたつ人も大いだろうが、事実だ。

とくに2014年で決定的にかわった。そう、クラウドの流れである。

ほとんどの大手のソフトウェアベンダーがクラウドを志向しはじめた。
普通の人にわかりやすくいうと、

「ベンダー自身がデータセンターにシステムを構え、エンドユーザーに貸し出すサービス」

だ。

だから中間のインテグレーターを必要とするところはぐっと減る。

にもかかわらず、「独立系」と言われているところはあいかわらず

「俺達がベンダーを採用してやっている」

意識から一歩も出ない。

お客のパイプラインがなぜ細くなっているかわからないようだ。

数年以内に日本によくあるインド系の会社が繰り返す愚を仮におかさないとしても、
ビジネスモデルとして淘汰されるか業態を変える以外にこの企業が生き延びる道はないと考える。

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