自衛隊にいる誇れる友人

「野田首相は化けるかも知れない」という記事に、こういうくだりがあった。

東日本大震災は、若手官僚たちがもう一度がんばれる機会、そして人材育成の機会になっているんです。こんな話があります。僕のゼミ出身者の若手官僚が、震災直後から、首相官邸の地下の対策本部に放り込まれました。20代の官僚たちが各省庁から集められて、被災地対応をすることになった。震災対応という緊急事態に、ばらばらの省庁から集まった官僚たちをチームとして機能させるのは実はとっても難しい。「いったい誰がどうやってチームを指揮したの?」と彼に質問したら、「自衛隊から来た人です」というんです。

池上:自衛隊の人が、現役官僚たちを指揮、ですか?

御厨:はい。現場作業を担う自衛隊の若い人間がやってきて、決して威張らずに、「まず最初に何をやらないかいけないか決めて、何をするのかすぐにチーム分けをしましょう」と先頭に立って、指示を出し始めた。おかげで、財務省から経産省から国交省から総務省から、各省庁から送り込まれた文官の諸君は、自衛隊の若手の指示に従って、震災対応の作業をすぐにスタートできたそうなんです。

池上:すごい話ですね(笑)

御厨:震災対策本部では時として各省の利害が対立するシーンが出てくる。そんなときに間に立つのが自衛隊の若手だったそうなんです。で、その自衛隊の若手が対立している官僚たちにこう言うんだそうです。「日本が第二次世界大戦でなぜ負けたかご存知ですか。資材をどう分けるかを巡って、陸軍と海軍がケンカをし始めたからダメになったんです。だからみなさん、それを思い出して、官僚同士が足の引っ張り合いをしないようにしましょう」と。

池上:第二次世界大戦での軍部をはじめとする日本の縦割り官僚制度の失敗を、自衛隊の若手たちはちゃんと学んでいるわけですね。被災地での自衛隊の活躍ぶりは、今回たくさん報道されていましたが、裏にチームマネジメントができる自衛隊の能力があったんですね。

御厨:もうひとつ、自衛隊のマネジメント力を象徴する話があります。震災対応のような非常事態の最中で仕事をしていると、いわゆる「働き蜂症候群」になって、みんな寝ずに仕事をし続けてしまう。特に日本の官僚はその傾向が強い。調子がどんどん悪くなっていっているのに、机から絶対に離れないと粘る人間も出てくるわけです。今回の震災の対策本部でも同じような状況が起きた。すると、自衛隊の若手が命令するわけです。「すぐに隣の仮眠室に行って寝てください」と。命令された官僚が、「私はまだ大丈夫です、頑張ります」とみんな反論する。と、自衛官が官僚たちを一喝したそうです。「大丈夫じゃない! いま、あなたが倒れたら、次にやってくれる人がいるとは限らないんだ。非常事態だからこそ休まなきゃダメだ。今はとにかく寝て、それから戻ってきなさい」と。結局、彼の一喝で、みんなが寝たそうです。非常事態だからこそ、チームの人員は無理してはいけない。順番に仮眠室で寝て戻るサイクルをつくって、チームを動かし続けることが大切だ、ということを自衛隊は知っているわけです。うちの卒業生の官僚が「先生、自衛隊はすごいですよ」とつくづく感心していました。

これをやっていたのが俺の古い古い友人の自衛官。3.11以降、突然連絡が取れず、11月ごろに会って、あいまいに話は聞いていた。が、ここまでやっていたとは知らなかった。
防衛大学校時代から、真剣に命をかけて国を守るという仕事を続けてきた男のすごみである。組織のリーダーとして完璧に訓練されている人々がいる。
改めて知って、尊敬する。

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