* もう時効でしょうけど、この件、Big Tomorrowに掲載されました。
今はもう心を平穏にして語れるが、男の嫉妬というものを何度も受けたことがある。
初めて自覚した事件を書く。
以前、会社を設立してやっていた時、自社のH社長が強引に私の罪を作り出したことがあった。
なぜか私が仕事に行っている客先の社長に、私の仕事のアラを聞きにでかけ、しつこく何度も欠点はないかと食い下がったのである。客先の社長は驚き、「なにかあったのか?」と個別に知らせてくれた。
同時にH社長のプロジェクトのイベントに出かけなかったカドで、私は激しく叱責された。俺には関係ないことでも来ないことが和を乱すそうだ。
俺の仕事には上から目線で論評してただけだけど?
次に腰巾着の糖尿病の役員が、私が書いたプログラムを私がテストしないと言って糾弾し出した。
当たり前である。ソフトウェアの開発メソドロジーのどこに書いた人が後からテストするなんて世界があるか。
テスト込みなら最初からテストケース作るんだよ。
別の人にやらせてください、とお願いしてもガン無視。
何年も某IBMでソフトウェア製品の開発にたずさわってきた私の経験を「ことさらに」非合理的に無視するのである。
そして途中から泣きついてきて雇った社員の意見をまるまる聞く。
彼いわく、「役員はなぜ社員と同様に働かないのか?」
あたりまえだ。それが資本主義だ。雇われ人はそれが不満なら会社辞めろ。
当時の私はそこまで言い切れるほど経営をしらなかったので、H社長と糖尿病役員が俺に「働け、働け」というのをなんとなくおかしいと思いながらも抗弁できなかった。
後にその組織を壊す社員を大事にしていたのに後足で砂をかけられているのだから、大笑いである。
こうして、キナ臭い煙が私のいない事務所であがったのである。
なぜ生々しく書いているかというと、この経験からわかることがある。
男の嫉妬は女と違って理屈という仮面をかぶせてあるから気づくのに時間がかかる。
なによりも嫉妬している本人すら気づいていないだろう。「あいつは○○だから、けしからん」のである。
もしあなたが嫉妬されているとしたら、それは早急に対策をとったほうがいい。
なにをやっても、どんな屁理屈でもいいから、あなたをひっくり返すことしか考えていない。
彼にとって、それは正義なのだ。
じゃあ、どうやれば早く気づくことができるか?
いいリトマス試験紙がある。
上の例のように、所属している組織の目標を外れたり、非合理な文句をいっている状態ならば、それは明らかに原因は嫉妬だ。
論拠はたいてい常識や多数意見という合理的でないものを拠り所にしている。
嫉妬の結末を続ける。
私の例からすると、先の客先の社長に「なにか問題はないか、なにかないか」としつこく、それはしつこく聞かれたので客はつい「ここがね、」と少しいったのである。
その言葉をH社長は待っていた。
それで大騒ぎを始め、私もお客もあっけに取られている中
「これ以上、仕事を続けさせるわけにいかない。お前、謝罪しろ。今すぐ契約解除だ」
と一瞬のうちに自らコンサルティング案件をつぶしたのである。
月200万円の収入を目の前で葬り去った。
そして、その翌月から、
私に「お前の給料どうするんだ?」と詰め寄ってきた。
いく晩か眠れない夜と涙を流し、私は会社を去った。
次の仕事が決まるまで会社を後ろから見てくれていた人の後ろ盾もあったのだが、お客さんの一人の部長さんが事情を理解した上で少しの間、雇ってくれた。
これとて納品したシステムの不具合を私は聞いて修正していた賜物である。
H社長はコンサルティング会社らしく「瑕疵担保期間の切れた客に行くこと自体、赤字だ。金を払わない客は客じゃない」と言い切っていたのだ。IBMというメーカー出身の私にはとうてい受け入れることのできない考え方である。
どちらがお客さんと長くつきあえるかは言うまでもない。
これは極端な例だが、男の嫉妬は本人が自覚していないから破壊的である。
この会社で起きた事件を「なぜ?なんで?」とわからない私に
「それは男の嫉妬」
と教えてくれたのは、年配の女性の友人だった。
女性は感情豊富なだけに、感情については理解が深い。
ありがとう、平野さん。
もし世の中の会社の20%の人間が会社を引っ張っているとしたら、その20%の大半は嫉妬されているハズである。なぜならば、嫉妬する人間は残りの80%に必ずいる。
新しいベンチャーが出てきたら「若造が」といい、
女性が役職についていたら「男と寝た」といい、
スキルがある人間をみたら「そんなもんは意味がない」、
画期的な結果は「誰でもできる。チームのおかげ」、
新しいアイデアには「実績がない」、
へ理屈をつけ他者の実力を絶対に認めない。
自分のちっぽけなプライドが宇宙の中心。
キャバクラ、クラブで持ち上げられるのが大好き。
日本は嫉妬社会である。
怠惰であったり能力のない人間のほうが多い。
この裏の真理が年功序列制度を支え、成果主義を崩壊させるのである。
中途採用で仕事ができる人間からクビになるのは、上役の嫉妬。
仕事のできる人間がなかなか採用されないのも、採用する上司との面談で自分の地位が危なくなるための保身という嫉妬。
もし、あなたが人並み以上に仕事ができるのであれば、周囲に必ず嫉妬している男がいることを考えておいたほうがいい。
あなたがなにをやっても気に入らないのである。
実力のない暗い男は必ずどこかで嫉妬の牙を剥き出す。
繰り返すが嫉妬している男は嫉妬と気づいていないから始末が悪い。
気づくだけの自分を省みる知性をもっているならば、なにか前向きに貢献できる能力をもっているものだ。
嫉妬にはどう対処するか。
対症療法としては、ちっぽけな自尊心を満足させてやればいい。
見え透いたお世辞や白々しい接待を喜ぶのは嫉妬しやすい男である。
要するに小物には小物の尺度で喜ぶものを与えてあげればいいのである。
きっと私もH社長を褒めちぎり、糖尿病の役員を尊敬するふりをしたら彼らはさぞかし喜んでいたことだろう。
(未だにチョー零細企業なのに、経営者同士の集まり、という自尊心を満足させる集まりが大好きだ。もちろん本人や周辺の会社は無能っぷりを反映して何年たっても伸びない。)
根本治療としては、そこを去るべきだ。
私の例でいえば楽観的な私と小心さをハードワークと嫉妬で補うH社長と付加価値を理解できない糖尿病役員ではあうわけがなかった。
常識を捨てて広い見地で洞察を基本にはすれど、最後は人智を超えた神にまかせていつも運がいい私が折り合うはずはなかったのである。
どちらが正しいかは時間が答えを出す。
クラウド時代になり存在意義もないのにダラダラ五反田近辺で続けているその零細企業を上回る付加価値を私はひとりで稼いでいるという事実がある。
どちらが資本主義で正しいのかは言うまでもない。