父の一周忌を迎え、母との相談どおりに高野山に納骨に行った。
高野山は世界遺産に登録されたせいか、外国人がものすごく多い。しかも多くの人が宿坊に泊まっていくという。それはいいことなので、ぜひ、高野山と真言密教の奥深い世界に少しでも理解をもって欲しいと思う。
私が行ったお寺は高野山金剛三昧院。恥ずかしいけれど、行くまでどんなお寺か知らなかった。それはともかく父の骨を抱え、高野山まで行く間はいろいろ考えた。俺が死んだら、こうして遺族が運んでくれたらうれしいな、と思ったら少し孝行している気がしてきた。
いくつか不思議なこともあった。本堂で納骨の儀式を行うために、お坊さん3人が経文を読んでくださるのだが、少なくとも二人が唱和するとなんともかすかに金属的な響きがどこからともなく聞こえてくる。チリン、キンキンというようなかすかな音。一人が読んでいる時には起きない。真言宗は他宗と違って鳴り物が多いのだが、決して楽器ではなく、どこかと共鳴すると聞こえるような繊細な音であった。
もうひとつ。このお寺のご本尊はなんと愛染明王であった。北条政子が亡くなった源頼朝のために建立したという。両人の位牌と足利尊氏、他らしい。天才仏師運慶作という。単なる像ではなく、愛染明王の存在を表しているなにものか、というものすごい迫力である。こういう仏像は「生きている」んだよなぁ。
愛染明王を祭った寺に父が入るとは父の導きだろうか、非常に不思議なめぐり合わせであった。少しお布施をして、お守りに結界の使用済みの紐をミサンガのように編んだ腕輪をいただいた。とりあえずやっておこう。
豪勢な精進料理をいただいて、金剛峰寺を拝観して帰った。