使っているコンデジ(コンパクトデジタルカメラ:Canon PowerShot S120)がそろそろ5年経ったので買い換えようと思いました。
中途半端なタッチスクリーンに中途半端なWiFi接続に苛立ちながらも、撮影の万能性に助けられてきました。
これで商品の撮影もしてきたのです。
類似の記事を読んだことがないので書く価値があるのではなかろうかと思い、ECサイトの商品撮影と使うカメラについて、ここ数年の経験を書いてみたいと思います。
商品撮影のゴール
数年前の話になりますが、家内のECサイトでジュエリーの撮影を行う必要がありました。
ジュエリーは業者が大量にいるので、そこそこきれいな撮影が必要です。
とはいえあまりカメラを知らない私はこのような疑問をいだきました。
「ほとんどのECサイトの商品画像の最大サイズは500x600px程度だ。画素数は30万画素。
なぜ、高画質の2000万画素以上のカメラが必要なのだろうか?」
カメラとはシャッタースピード、フィルムの感度(ISO感度)、光量をきめるしぼり(F値)の組み合わせが基本といえます。
それぞれの特性は
- シャッタースピード(短いほうがブレにくい)
- フィルムの感度(ISO)(感度が高いほうが少ない光量ですむけれども画質が荒くなったりノイズが入る)
- しぼり(F値)(ひらくと光量はふえるが背景がぼける、しぼると光量は減るが背景はぼけにくくなる。これを被写体深度が大きいという)
なので、できるだけ明るいところでシャッタースピードを短め、フィルムの感度はよわくてよいようにし、しぼりを工夫をするというのが物品を撮影する時にはコツといえます。
今のデジタルカメラにフィルム感度はおかしいのですが、機能としては継承されています。言い換えるとプログラムでカメラがシミュレーションしているという事実にぶちあたります。
どれだけプロがデジカメを使いこなしているつもりでも、このあたりにはメーカーの技術が介在しているのです。
家内は一応、ミラーレス一眼パナソニックルミックスを買いました。マクロレンズも買いました。
とはいえ一眼レフを素人が適切に扱えるようになるのは難しいので、フリーカメラマンの先生を半日雇って個人授業を受けました。先生は素晴らしい人で、売上ナンバーワンの某シルバーアクセサリーサイトの写真を数年間、撮影しておられた方でした。
結果は素晴らしい写真が取れましたが、逆に先生にカメラの限界を教えられたのです。
たとえば、赤いルビーがギラギラしているように写真を取ると、どうしても赤は抜ける。
だからフォトショップでレタッチしなければ、商品としての写真にはならないのです。
ネットではカメラマンが技術の詳細を明かすことはありませんが、最終的にはフォトショップが必要ということは驚きでした。
(今は同じAdobeですがLightRoomというもっといいソフトがあります。またサブスクリプションライセンスなので必要な月だけ契約すればいいです。)
冒頭の質問にもカメラマンはクリアに答えてくれました。
「画素数だけならそのとおり。だが、発色が高級機種は違う。そこをどこまで追求するか」だと。
ちなみに一眼レフを使っての撮影では商品撮影においてマクロレンズは必須です。
できようができまいが、プロの撮影現場を教えていただいたことはタイヘンありがたかったです。
その後どうなったか
数ヶ月経って家内が自分で撮影しようとすると、やはり先生がやられたようにF値、ISO、シャッタースピードを適切にセットできません。
太陽光の下やライトボックスで自由に写真を取るには、当たり前ですがそれなりに修行がいります。
ワケがわからなくなり、どれだけ工場出荷時にリセットしたことか。
つまりあえていいますが一眼レフで商品撮影するということは、商品を売るためにプロカメラマンになろうとすることに等しいわけです。
それってどうなんでしょうか?
結局、ルミックス搭載のシーンを選んで撮影する機能に助けられて撮影しています。
改めてビジネスを考える
もちろん巷には数多くのECサイトがあります。
A店とB店とたいして違いはなくお客が訪れるのは運次第というような商売をやっているのであれば、写真はプロに依頼するしかないかもしれません。
しかしそういうお店はまだヤル気があるお店だと思います。
Yahoo!や楽天のショップで商品を見ても、ほとんどの店は仕入れた商品にメーカーの写真とメーカーの説明文を貼り付けておしまい、です。
あなたは商品の詳細を知りたいがためにお店ではなく、メーカーのページを訪問したことが何度もあるはずです。
ここからわかることは、実はオリジナルの商品写真を撮っているECサイトは思ったほど多くないということです。
純然たるECサイトを流通業としてやっている人々はお客さんが思っているほど商品に思い入れもないし、当然知識もありません。
それはみんなわかっていることだと思います。
だから参入障壁が低く、価格の叩きあいに落ちるわけです。
商品に手書き風フォントのお手紙入れてお客のロイヤリティをあげようとしているところも多いですが、お客はそんなことではロイヤリティをもたないし、ロイヤリティがそれほど購買意欲に結びつかないという最新の知見を知らないんだろうな、と気の毒になります。
そうすると今度はユニークな商品となった時、高度なテクニックで撮影した写真はどれほどの効果をもつのだろうか?という疑問がわきます。
もちろんあったほうがいいに決まっていますが、そこはコストを見極めねばたちまち赤字です。
一回撮った写真でシルバーアクセサリーが数十個売れればプロに頼んでもいいのかもしれません。
自分で撮影しようという理由が商品の素晴らしさを伝えたいということもありますが、外注したら高いという切実な理由もあります。
余談ですが、宝石フェアに行った時、全自動でECサイトの商品写真を撮りますという機械を売っていました。
いい悪いは別にして、それくらいみんな困ってはいるのです。
私個人は「商品の写真の質はそこそこでいい。iPhoneよりマシ程度で十分じゃないか」という結論に達しました。
言い換えるとそれなりにスッキリしていればパーフェクトでなくていいということです。
ただしiPhoneで撮影した写真は縁近くの画像はゆがんでいるし、発色はイマイチなのはデジタルカメラと比べると歴然です。
コンデジの威力
一眼レフにも搭載されていますが、コンパクトデジタルカメラはほとんどの写真が”AUTO”で撮られるはずです。先に書いた家内の話はまったく笑い事ではありません。
このAUTOの機能について真面目に語っているカメラマンがいるでしょうか?
もちろんAUTOを褒めることは、カメラマンにとっては自殺行為です。だから過小評価されていると私は思います。
逆にコンデジのAUTOはメーカーの技術者の粋が注ぎこまれているといっても過言ではないのではないでしょうか。
参考までにキャノンのコンデジのサンプルがウェブ上にありますから、見てください。これほどの品質です。
商品の写真がこのクオリティなら、私は不満がないです。ほとんどが「プログラムAE」で撮られていますから、AUTOに色をつけたというところでしょうか。
どの会社も手ブレ防止や、明暗の差の大きいシーン、対象が人か風景かモノか、などを自動で解析し、最適なパラメータ設定を瞬時に行います。
数度、さまざまなモードで撮影して合成するという離れ業もこなす。
さらにエフェクトをかけることもできる、言い換えるとカメラがちょっとしたフォトショップの機能ももっています。
コンデジのAUTOで撮影した写真は素人が一眼レフのパラメーターをいじったものより、99%の場合は優れていると言わざるを得ません。
売るための写真にかけられるコストは有限です。
物撮りに必須のリモートシャッターもコンデジはアプリで提供されていたり、にんまりしてしまう機能満載です。
仕事と楽しさを両立し、撮影ノウハウを買う意味でもコンデジの高級機種が正解ではないでしょうか?
まとめ
- 巷のカメラ論争はカメラを趣味とする人か、コストを目一杯かけても構わないプロの議論である(そういう人はカメラを単なる道具だというと怒るのですぐわかる)
- 素人が一眼レフをもったところで、使いこなすまでに至る暇はない。カメラを趣味としていない。
- もともとECサイトにおいて、オリジナルの写真を撮る機会は限られる。大半がメーカーの写真の転載。
- 逆にオリジナル商品の場合、それがすでに価値なので大企業に雇われたカメラマンが撮るような写真はあまり必要ないし、ウェブの画質は30万画素。
- コンデジにつまった技術者のノウハウの価値について考えるべき
ということで、またコンデジを買います。
コンデジ購入
私の場合、キャノンのPowerShot系をずっと使ってきていますので、その中からG9Xを買いました。
2017年の発表ですが、値段がこなれているだけで機能的には2018年発売のものと比べても問題ないと、私は思っています。
とくにスマホとの連携はすごくて、リモートシャッターどころか、スマホに撮影画面を写して撮影できます。これ、コンデジの可能性をめちゃめちゃ広げています。
S120のころから星空のタイムラプスを取れたのですが、G9Xはジオラマ風(チルトシフト)が取れるので、なにか撮ろう。一眼レフでジオラマ風はフォトショップでいじらないといけないのに、なんと素晴らしい。
きっとSONYやNICONのコンデジも技術者の力により、素人に素晴らしい写真を撮らせてくれるに違いないと思います。
時間と費用をかけられないECサイトの救世主だと思います。
ネットで数多くの写真家のいう一眼レフじゃダメ、に騙されちゃいけません。
彼らは究極をめざし、自分たちのスキルを宣伝する必要があるから、そう言っているのです。
何冊となくカメラ撮影の本や技術論を見てきましたが、誰もコンデジの素晴らしさについて書かずにマニュアルでセットしろというばかりなので書いてみました。