出版した時にも記事を書いたけれども、Amazon Kindleのおかげで出版の意味づけは変わったと思っています。
出版社から本を出す時に気にしなくてはいけないことは、もちろんどれくらい売れるか、です。
だから時流に乗った本を出さざるを得ません。
森永卓郎さんが「ザイム真理教」の本を三五館シンンャという耳慣れない出版社から出さざるを得なかった理由は、ほとんどの出版社が財務省の批判本なんて売れないと判断したからです。三五館シンンャだけが、この出版は意義がある、と考えてくれたと森永さんはインタビューで語っておられました。ベストセラーですが。
ところが本を読む人たちは出版が商業ベースであることはほとんど意識していません。書き残されるべき知識はすべて本になっていると思い込んでいませんか?
今回、ドローンボートの本を出版しようと思った理由はその「書き残されるべき知識は本になっている」期待を実現したかったからです。本にかかれていることの再現ができることを意図していますから、関係知識は細かく書いたつもりです。
ここからは、ビジネスを理解するエンジニアから見たドローンメーカー業界についての、かなり辛口コメントです。(Kindleについてだけ知りたい人はここをクリック)
水上ドローンとかドローンボートなどを扱っている会社は日本でも数社あります。輸入品を売っている会社もあります。全社に言えることですが技術情報を公表しません。
それがすべて自社で開発されたものであるならば、企業秘密もあるでしょう。しかし、ドローンの技術は小さな会社ひとつで開発しきれるものではありません。(もちろんSONYや三菱重工なら別です)私が使っているArdupilotというオープンソースだって10年以上の歴史をもっています。ドローンのソフトウェアは大掛かりで複雑なのです。
ですから自社で「これはすごい」と思ってアナウンスしてもArdupilotの世界では数年前に実現していたということがしばしば起きています。完成品を輸入している企業は自社にオープンソースで構築できるエンジニアがいないことは見えています。
私個人の意見ですが、ドローンの制御ソフトはオープンソースには勝てないと思います。Linux相当の製品を企業が作り出せないことと同じです。
だからこそ、オープンソースのドローンソフトウェアを使っているのであればタダ乗りせずに、できるだけ公開してオープンソースのコミュニティに貢献するべきだと私は考えています。
一方、ドローンの製作ができるエンジニアは数人会いましたが、だいたい井の中の蛙です。Ardupilotが扱えるだけで自分は完璧な一流だと誤解しています。IT業界の経験がまったく足りていません。普通のエンジニアの方もおられますが、やはりIT産業にかかわって世の中を知っている方です。だから身内で盛り上がるだけで、やはり情報発信をしないか、ものすごく出し惜しみをします。
こういう自分の実力を誤解したエンジニアを、私は過去何十人と見てきました。人が開発したソフトを多少知って、それで未来永劫、自分は安泰だと思い込む人々です。
今の企業やエンジニアの状況ではドローン技術は日本において健全な発展をしないと私は考えています。おそらく現時点でもドローンのボートをオープンソースで作ることができると知らないことが普通だと思います。
私がこのように批判的に考えるわけを少し語ります。
日本IBMにいたころ、メインフレームのOS(オペレーティングシステム)についてもっともよく知るエンジニアのひとりであったと自覚しています。OSのソースコードを読みまくって、社内システムでテストしまくってましたからね。しかしそれは単なる前提知識にしかならないのです。ポキプシーやサンノゼに行けば書いた人がいるのですから。そこまで知って「このような状況の時にこのような動きは困る。こうあればいいと思う」という問題提起こそがIBM社内で価値ある仕事だったのです。
ソフトウェア自体を知っているということはエンジニアの仕事の単なる前提知識であり、それ自体に価値があると考えていません。
語り、終了。
オープンソースのソフトウェアの解説本はいろいろ出ているのに、Ardupilotについては古いものが一冊だけで、ボートについてはまったくありませんでした。だから大学生、場合によっては高校生でも作れるように本を書いたのです。いまや空を飛ぶドローンは危険物扱いです。安定した大企業でしか製品は作れません。ならば研究の場が墜落しない水上に移ってもいいのではないでしょうか。
もう一点はドローンは飛べばいい、走ればいい、というものではありません。なにかやるべきアプリケーション(適用業務)があるから動かすのです。ラジコンのボートがいい例で、スピード競争するか古い艦船の模型を水上に浮かべることしかできませんでした。
いくつかのドローンの本を調べましたが、アプリケーションを技術的に解説している本はありませんでした。だから、どうやってアプリケーションを作るかについても書きたかったのです。
私は少子化の日本で第一次産業を効率化するひとつの方法を広めるために行動しています。
儲けるつもりがないので価格はできるだけ下げ、kindle読み放題に参画しました。
ここまでやって気付いたのですが、自分がやっていることはコミケの同人誌と同じ考え方です。見知らぬ人でも興味がある人に自分の知識(作品)を共有したい。狙いがそこなので、出版についてビジネスのつもりがないということです。
出版して3週間ほどで8冊、1300ページ以上の参照がありました。たいした売れ行きではありませんが、ドローン業界に大きな石を投げ込み、本を読んで「私にもできそうかも」と関心をもってくれている人への影響は消せないと思っています。おかげ様で、私の予想よりも早いペースで読まれています。
来年の夏には私のまったく知らないところで水上ドローンが走っていれば、これほどうれしいことはありません。
このようにKindleによる出版は従来の出版社経由と違う本の著作が可能です。
- 商業ベースにならないニッチだけれども有用だと思う知識
- 本の出版自体でビジネスをしようとは思っていない。啓蒙、プロモーション、情報共有したい
- 物理的な本の場合、180ページはないと見栄えが悪いが、電子出版なら数十ページでも可能
以下のような点は出版と同等のメリットです。
- 「本を書いた」といえる
- SNSで情報発信しても埋もれるが、Amazonで欲しい本を探している人に見つけてもらえるし、考えを知ってもらえる
- ブログでは書ききれない、込み入った知識を整理して順序立てて伝えられる
- 知識が目に見えるカタチになる
ご自分の持っている知識をKindle出版で情報共有してみませんか。