読書好きの人なら一度は「日月神示」という神様のお筆先集の名前を聞いたことがあるかと思います。
私も興味をもち、中矢伸一氏の注釈本を読んだことがあります。
日月神示を読まれたことのない人もおられるでしょうから、一言でまとめると「艮(うしとら)の金神が日本人を大量殺戮する計画書」です。
いろいろやんわり表現する方法はあるでしょうけれども、描き出されている世界はそうですよね。
私は受け入れられませんでした。
前提として私は仏教徒であり、戦後の日本で子供時代を過ごしました。この二点から日月神示が描く世界を受け入れられないのです。
この本もそうですが、「人は死んだら終わり。二度と復活してこない」という暗黙の前提があります。
「死人に口なし」は事実ですが、人は死んだらそれっきりではありません。
日本でもっともメジャーな宗教の仏教はどの宗派であってもお釈迦様が説いた「人は輪廻転生する。その環を解脱し涅槃の境地に至る」ことを目的としています。もうこの前提を外したら仏教ではないというくらいの基本中の基本です。
繰り返しますが、「人は輪廻転生する」のです。つまり死んだらそれっきりだなんて考え方を仏教ではしません。
キリスト教もイスラム教もその点は似ています。魂は天国なりリンボーなりに行きます。
つまり世界の大多数の人々が輪廻転生を形を変えど信じています。
艮の金神ともあろう存在が人を大量に殺したら、この世界は清められるという考えをしているところがおかしいと思っています。
自分の考えと違うものを殺してしまえば、はい、終わりだなんてヤクザの抗争とたいして変わらないじゃないですか。
そもそも日本の神々は古事記を読めばわかるとおり、悪事もやれば不倫もする人間らしい神々です。
自分のやらかしについては口をぬぐい、人々を汚れていると下に見るような神がいるでしょうか?
次に日月神示で強調される大和魂です。戦前はこの言葉でどれだけの差別が起きたことでしょうか。
戦前戦後を生きた私の親の世代の差別はひどいものでした。
沖縄県の人を二等国民とか呼ぶ。「八紘一宇(はっこういちう)」と唱え、アジア圏の人々を天皇に従わせようとする。(その影で植民地化する)など、日本人はきれいな建前の影で恥じるべきことをやっていた人も少なくありません。
世界中のあらゆる場所で社会主義は独裁者の隠れ蓑となり失敗しました。三権分立の選挙を中心とした方法はお互いが牽制しあう方法で最もマシなメカニズムなのです。
大和魂などと綺麗事をを言うだけでは必ず悪人が出てきて、ロクでもない社会になることは明々白々です。
そもそも神は万能であるはずです。そんなに悪事が嫌いならば、最初から人類に悪事をできなくすればよかったのに、後から恨みがましく「おまえらみんな悪だ」と言っているようじゃ、キリスト教の神と同じです。
こんな書物を気に病む必要はないと思っています。