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山口周さんの「ビジネスの未来」

という本がございます。(Amazonはここから

一部でけっこう話題になっていると思います。

が、難しい本です。

アマゾンの書評を見ると、多くの人は教養本だと思っているらしい。

それじゃ「資本主義をハックする」という言葉は出ないと思うんだけどね。

私が読んで思った、読書感想文。

1970年の日本の万博をピークとして、それから経済は成長しなくなった。

理由は「理想の世界を達成してしまったから」

しばしば私も思うことがある。

今の戸建てをもっている中流階級の日本人って、ルイ14世より絶対にいい暮らしをしている。
召使いこそいないけれど、清潔な風呂、トイレ。世界中から集まった食材を毎晩食べているし、服だって機能的で安い。
どこへ行くのも簡単。

病気になれば病院に行けばなんとかなる(新型コロナでそうとも言えない時だけど)

こんな生活、人類史上ではじめてなんだとは思う。

にもかかわらず、世の中の企業はあいかわらず右肩あがりの成長を目指し、それが達成できると思いこんでいる。

私もここ10年間、個人的にとても疑問だったのだ。
今、世界中の資産を足し合わせると地球が何個か買えるらしい。
それ、おかしくないですか?
で、会社の事業計画はどこも右肩あがり。マジメに考えていない証拠です。

だから、人類史上初の「資本が余りまくっている」状態。それゆえとんでもない低金利。

ピケティは、資本収益率>経済成長率だから資本家はどんどん儲かり、労働者は損をする、と唱えたが、今は逆転しつつあるのではないでしょうか。

どの企業も、とくに大量の消費者を前提とするビジネスは広がるだけ広がってしまい、成長しない。

マーケティングという名の下に、いらないものを強引に売り、成長している幻想を抱いているのが、今のほとんどの企業。
いらないものを手を変え品を変え売っていることは当人たちもじつは気づいているはず。

一方、だからこそ「社会起業家」というジャンルができている。

10年前なら「バカか!」と言われるようなジャンルだけれども、これだけ普通の人の環境が整ってしまうと、人はどうしても「他者の幸福」を考えざるを得ない。

今までカネにならなかったことが新たな価値観でビジネスになっているのではないか、ということだ。

山口周さんはそこでベーシックインカムに相当期待しておられるが、個人的にはそこまでいくには時間がかかると思う。国民の1/4くらいが生活保護になるまで真剣に議論されないのではなかろうか?

大企業はやはり大量消費者を狙うしか、事業の特性上むつかしいだろう。
わからない人に解説すると、大企業は組織の階層が深い。これは言い換えると指示だけする、現場で働かない人が大量にいるということを意味する。人が増えるとコミュニケーションコストも莫大になっていく。すると、ある程度の利益率がなければ会社として成り立たないのだ。

個人的には消費税以下の利益率なら、その事業は止めたほうがいいと思うが、やっている企業はいくらでもある。
たとえ3%の純利であっても、売上金額が5000億円くらいあれば問題にならないという考え方もある。

しかし、ニッチ市場はそんなに売上は見込めない。
だから大企業は踏み込めない。
だからひとり起業を薦めているんだけどねー。

山口さんのおっしゃる「資本主義をハックする」考えを実現するには、資本主義で食べている金融機関のウラをかくということになると思う。

先に述べたように、カネを借りる時に金利とか担保とかいまやありえない。
何度も書いているけれど、イスラム圏では金利は存在しない。金利とは思想なんだということは知っておいたほうがいい。

なんとなく思っていたけれど、銀行とのつきあいを辞めることは「資本主義のハック」だろう。
金利を要求されるならば、日本投資政策銀行という官制の殖産銀行に泣きついたほうがマシ。
わかりやすいものならば、クラウドファンディングすれば、みんなが参加する。

従業員とかいうやる気のない人間を雇うというのも、今の起業ではありえない。
意地悪ではなく、すべての要素を変動費にするべく考えねばならないから。
従業員を雇うくらいならアウトソーサーと契約。これも「資本主義のハック」ではなかろうか。

山口周さんの本でショックだったひとつは、

「GAFAはGDPの観点からはなんの意味もない。彼らがやっていることは広告業界の入れ替え」

これ、言われてみてハッとしました。

起業した広告はGAFAに依頼するだろう、ということでもあると思うのです。

「資本主義をハック」することを私なりに考えてみると、

  • マスコンシューマーを狙わない(それは大企業さんの仕事)
  • ニッチに高い技術を投入すると儲かる(アプリで儲けようというジャンルの本はすべてこれ)
  • イマドキのビジネスは自分でスタートするべきなので、従業員なんていうコストばかりかかって成果のでない人間は雇わない。雇うときは役員か業務委託。
  • 金融機関やベンチャーキャピタルにお金を借りない。いまはIPOで一攫千金の時代じゃない。それは古い資本主義の発想(Angelは大歓迎)
    常々、ここで書いているようにそんな規模は最初には必要ない。オフィスも自宅で十分。
  • 一部の人に熱狂的に売れるAppleのコンピューターが理想。
  • 広告宣伝はGAFA
  • この時代に既存の強引なマーケティングで右肩あがりの事業計画は意味がなくなりつつあり、(ブラック企業化する)

ということが私なりの「資本主義のハッキング手法」です。

「ビジネスの未来」はいろいろ考えさせられる本でした。

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