GAFAをGoogle, Amazon, Facebook, Appleだと定義する。
しばしば巷で「GAFAの目指す未来」とかをさも知っているかのように妄想を書いている人がいるが、ほとんどは的外れだと言い切れる。
外資系企業にずーーーーと務めている私の見解を、バーボンを飲みながら書いてみたい。
そもそもGAFAは今、成長にとても苦労している。
どの会社も間違いなくいえることは「ここまでデカくなるとは思っていなかった」が本音だろう。
批評する多くの人は現状だけを見て、さも、彼らが成功への一本道を知っていて、それを最短距離でたどって今の繁栄を築いたかのように語るが、まったく見当はずれだ。
まず、彼らの恥ずかしい歴史から振り返る。
Googleはよりよい検索からスタートした。(その痕跡が、Googleのあのシンプルな画面だ)
創業エンジニアの二人はそれをオカネに変える方法を知らなかった。
先行していたOvertureが検索結果を広告にしていたから、マネして巨額の富を得たのだ。
Amazonは最初は本とCDだけに商売を限っていた。インターネットで売れるものはどこで買っても同じである、品質が安定したものしか売れない、と黎明期には言われていたのだ。
MBA出身のジェフ・ベゾスはロングテールには気づいていただろうが、なんでも売れるほどのブランドを築けるなんて絶対に考えていなかった。
Facebookはご存知のように似たサービスは日本にもあった。残ったのは偶然に近い。どこかがたいしたことのなかった理由で勝ち残るのだ。Facebookは機能よりも、そのネーミングではなかったろうか?
Appleはご存知のようにスティーブ・ジョブズが返り咲く前は潰れかけだった。iPhoneで「電話を再発明した」というが、ノキアがやっていたことをアグレッシブにした。ジョブズはお客のために徹底的にビジネス交渉をやり抜き、社内のエンジニアをゴールにたどり着くまで殴りつけ続けたことこそ評価され、アイデアが秀逸だったわけじゃない。
ついでながらMicrosoftはAmazonを真似て復活したといえるだろう。
これらからわかることは、全員「これからの世界をどうしよう?」なんて考えていない。
あれこれ試みる中で、たまたまハードウェア「も」作っている会社が多いにすぎない。
「彼らはハードとソフトで丸儲けしたいんだ」なんて書いている評論家がいるが、AmazonもGoogleもハードで儲けようなんて考えちゃいない。
Amazonはとにかくお客にAmazonで時間を使ってほしいから、そのための努力を惜しまない。
類似の商売はディズニーランドだ。
どんな人でも一日は24時間しかない。その中で寝ているとか、働いているとか、家族や恋人と団らんしているとかの不可欠な時間以外を取り合うのがエンターテイメントだ。
Amazonはそれがよくわかっているから、自社サイト(ショッピングモール)にできるだけ長時間、お客を縛り付けておきたい。
ショッピングモールと同じで、サイトへの滞在時間が長いと人はカネを落とすのだ。
だから、映画を提供したり、ハードウェアを提供したりする。
そのハードは安いけれど、Amazonを見るために特化している。
この考え方はあらゆるECサイトがよく考えてみるべきではないでしょうか?
あなた、楽天見ていて楽しいですか?
Googleは広告業だけではなく、Andoroid(スマホのためのOS)という大きなビジネスネタを確立した。だから、標準となるハードウェアを出したくもなる。ソフトウェアがすべてOEMだと「動かない」とかマヌケな日本のメーカーに言われた時に抗弁のしようがない。だからハードを作って売る。そうすれば「動かないのはお前がマヌケだからだろ」と言える。
絶対にあれで儲けようなんて考えていないだろう。だって、Googleだもん。売りたければえげつない宣伝するだろうし、モデルチェンジも毎年やるでしょうに。
Facebookはぜーんぜん違う方向に走っている。
新聞を賑わしている仮想通貨とかそういう方向だ。
そしてAppleだけが独自OSとハードウェアをプレミアム化し、持っていると金持ちになった気にさせるブランド化戦略を取っている。
これだけGAFAといえども、考えていること、やってきたことは違う。
デカイという以外に共通点はないのに、なぜGAFAという会社があるような錯覚に陥るのか?
Googleは好奇心が強いから、ブラウザー(Chrome)も作れば電気自動車も作る。
彼らは賢いから、かつてIBMがやった「OSを作ったものがその世界を支配する」という単純な原理を知っている。
俺が勤めているドイツのERPの会社はJavaもデータベースも自前にした。それはそういうものに支配されることがビジネス上、嫌だったという点はあると思う。
つくづく歴史は皮肉だと思うが、Linuxのカーネルがフィンランドから発明されたって多くの国にとって、目の上のたんこぶだと思う。
もし、アメリカで発明されていたらインターネットの世界はもっとひどいことになっていただろう。
いろんな会社がインターネットを利用したいろんなものを提供して、結果的に儲かることもあれば、たいして儲からないこともあるだろう。
それは馬鹿だからじゃなく、まだ見ぬ現実への投資のひとつに過ぎないからだ。
アメリカ企業の恐ろしいところは「わからないから投資しておく」という考え方ができる。
日本人にはとうていできない。
プレイステーションがLinuxで動いているってどれくらいの人が知っているのだろうか?
ほとんど知らないのがIT技術を消費する「だけ」の日本。
ひいてはそれが日本の限界なんだと、いつも思う。
1990年代の成功体験が忘れられない日本企業みたいに呑気な会社はグローバルカンパニーにはない。
中国企業だってそうだ。
投資する。
もちろん失敗することは計算済みで投資する。
日本の儲かってないホテルとかにね。
しばしば日本で商社などが投資する時に、いちいち成功の方程式みたいな話を聞きませんか?
でも世界に投資している会社はそんなもの信じていない。
投資してうまくいけばいいね!失敗すれば叩き売る。それだけ。
ふたつ理由があって、ひとつは大きく売れるかどうかは現実にやってみないとわからないから。
上のGAFAが全員そうだった事実を見つめよう。
もうひとつの理由は世界的にオカネは余っているから。
イマドキの世界の投資はそうなんです。
なんとなくグローバルカンパニーの動きがわかっていただけると幸いです。
で、日本はGAFAを始めとする企業のサービスを利用するだけで、なにも作っていないのですから、あまりごちゃごちゃ素人臭い意見を言ったところで、唇がさみしくないですか?
日本人が信じている大切であるはずの「お客様の意見」なんてGAFAは日本のお客様の意見なんてほとんど聞いていませんよね?
どこかに電話相談室ありますか?とっても簡単なアンケート程度でしかウォッチしていないじゃないですか。
最後に、いつもの日経の木村岳史さんが「グローバル企業になれない「平成な会社」、日本のITベンチャーが駄目な理由」で「猿マネをしろ」と書いているが、バカだなぁ、と思う。
そもそもビジネスはすべて猿マネです。
猿マネでないものは、理解が難しいんです。
ほら、たいていの人は過去の経験から新しいものを理解するじゃないですか。
インターネットに進出できなかった企業が大量にいるのは、その意味がわからなかったからです。
たとえばAmazonは「誰もマネできない巨額な投資をする」ことで市場を制覇しようとしている。
それが普通の人に理解できるでしょうか?
もし、木村さんがITの世界で「猿マネ」しろと言っているのであれば、日本は能力の上で絶望的だと思います。
Googleの高等数学を理解するプログラマーの書いたサービスを、日本人の大学出てるかも怪しいプログラマーが三次受けで「動けばいいんだろ」と書いた質の悪いコードでマネしたところで商売になるわけがない。
(木村さんは学習コストをとても低く見積もっていて、どんな人でもなんでも理解できると信じているようですが)
日本人は消費する一方なので「カネさえ払えばプロであるSIerが素晴らしいコードを書いてくれるに違いない」と思っているけど、高度なプログラムは芸術の範疇なので、それはない。
AIだDXだと騒いでいても、中のプログラムについてはほとんど無知なので、たいした話にはならない。
動作原理を理解したつもりの人に聞きたいのは「それをサービスとして世界に提供できるプログラムとはどんなものか知っているか?」です。
サンプルレベルの単体で動作するプログラムとクラウドで動作するプログラムは違うという事実をどれだけの人が理解できているでしょうか?
そしてわざわざ日本のめんどくさい環境でベンチャーやる連中に英語なんか理解できるわけがない。
残念ながら、実際に私が会った限られた事象経営者、VCで英語が堪能だった人はいないし、保守の権化のような金融機関出身者が幅を利かせている投資家の世界がどうしてビジネスやテクノロジーに投資できるのかわからない。
本当にいいビジネスシードもっていて優秀な奴はシリコンバレーに行きます。
そこは「わからないものには投資をする」世界だから。
木村さん、残念だけど猿マネしても、せいぜい楽天になるくらいで消えていくんだよ。
(個人的には楽天はまったく評価していません。日本語に守られたアマゾンのサブセット程度のビジネスやってるだけですから。私のいるIT業界から見ると、彼らはお客さんであってIT企業ではありません。)