つくづく今の日本は奇妙だと思う。
企業が安く人を使うことを当たり前だと考えている。
それは正しくて間違っている。
自分のブログだから思っていることと対策を書く。
労働法はどこへ?
日本には労働者の雇用を守る「労働三法」があることは中学校で習うんだっけ?
労働基準法、労働組合法、最低賃金法
さらに「労働三権」というものがあり、これは憲法28条に由来する。
- 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
一行だけど、「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」が明記されている。
ところが今、この機能はまったく働いていないどころか、権利を主張すると「ヘンな人」と思われる時代だ。
いったい中学校でなにを学んだのか?
企業ごとにある労働組合が出世の道であって、不当な扱いを組合員が受けても組合は知らん顔だ。
労働組合がない企業では、誰かが不当に扱われていても、みーんな見て見ぬ振りをするのが「常識」だ。
日本企業に勤めていた時、組合はパワハラ、セクハラから組合員を救わない現実を見てきた。
困った人は「労働組合 東京ユニオン」などに相談するしかない。
こういう外部の組合をおかしいと思っている人は上記の労働三権の観点からしたら、当然な話しだと認識を改めてほしい。
労働組合はどこへ?
今の日本は企業内で労働者の権利を守るメカニズムがない。
労働三法が出来たころは労働組合こそが、労働者の権利を守る団体だった。
しかし、
会社の幹部への登竜門になって労使の区別がなくなってしまったか、
左翼が激しい主張と共に組織を乗っ取ってしまった、
いずれの理由であっても、いつしか普通の労働者は組合費を払えど組合にはなにも期待しなくなった。
「そんな話は何十年も前の話しだろう?」と思っている人はアンテナの感度が悪い。
昨年ですら、日本最大の労働組合であるJR東の労働組合から「ついていけない」と大量の社員が脱退している。
今の時代は組合というものがあっても、有名無実化していて労働者が集まって権利を勝ち取るなんていう時代ではない。
組合員が組合のあり方に疑問をもっている時代だ。
そんな中でどうやれば給料をあげられるのか?誰も頼れないではないか。
非正規雇用の転換点
そして、組合という制度からまったく見放されている「非正規雇用」という労働界の闇に落とされた人々がいる。
この人たちは能力を不当に買い叩かれている。
例えばYahoo!ニュースのこの記事などが典型的だ。営業成績がトップなのに派遣だからとクビ切り。
会社の経営という視点から考えると、ふたつの意味で彼女を雇っていた人は罪を犯している。
ひとつは営業成績がトップなのに派遣費用しか払っていないであろうこと。社員ならインセンティブ(売上に応じたボーナス)がつく。同一職場同一賃金(後述)に反する。
もうひとつはみすみす有能な人材を見逃したこと。彼女を雇った人はホンネでは会社の営業成績なんてどうでもよかったということだ。
会社に対する裏切りである。
さて、2020年4月から派遣法改正になった。
これについて無知な人が多すぎるように思う。
世の中が大騒ぎしていないことが不思議で仕方ない。
この改正は「同一労働同一賃金」を実現するためだ。わかりやすいのは厚労省のこれ。
非正規だ、とか、社員だ、とか関係なくなった。
2021年からは契約社員もパートも同じ「同一労働同一賃金」の雇用となる。
「俺は社員だから給料が高くて当たり前」ってもはや通用しない。
少々の厳密さを欠くが、説明する。
派遣を雇う会社は「均等・近郊方式」か「労使協定方式」のいずれかで派遣の賃金をきめなければならない。
今までような言い値で値切るなんて許されない。
均等・近郊方式とは、社員の処遇条件(基本給、ボーナス、残業の割増、通勤手当、各種補助金、手当)とほぼ同等でなくてはならず、違いは「同一労働同一賃金ガイドライン」の許容する範囲内であること。
ただし、この方法だと社員の処遇を事細かに派遣会社に開示しないといけないので、大企業は嫌がると思う。
労使協定方式は労働組合がある会社しか許されない。労働組合と派遣元企業が「書面で」労使協定を結ぶ。
そして派遣された企業は派遣に教育をしなくてはいけないし、派遣に給食、休息室などの福利厚生施設は使用させなければならない。従来の楽天のように社員食堂を使わせないなど許されないのだ。
おわかりだろうか?
たった今も日本中に蔓延している、パート、契約社員、派遣の待遇は低くていいとか、自分の都合で辞めさせられるという認識はすでに法律違反なのだ。
おそろしく非正規雇用の地位があがり、現場では雇いにくくなったのだ。
追記:2020年10月には日本郵便が非正規雇用に訴えられて、最高裁で手当や休暇の差は違法であると確定した。(繰り返すが判例は法律と同じ効力をもつ)そして日本郵便は正社員の手当の廃止という方向の処置をしている。
これからは正社員こそが経営者と非正規雇用の間の摩擦で苦しめられるだろう。
ここからは推測だが、人材派遣の最大手のパソナが本社を淡路島に移転するということの意味は都心で派遣のコントロールをしていても儲かる時代は過ぎた、と彼らは知っているからだ。
世の中の大半の人間は「パート、派遣が高くなった」と怒るのが関の山であろう。
新しい業種
今後、社員の酷使が流行っていくだろう。
もうひとつ流行るであろう業種がある。
それはアウトソーサー。
先程、営業成績がトップなのに派遣をクビになったと嘆いている女性の例をあげた。
これはビジネス上、すごくおかしな話しだ。
なぜならば、あらゆる企業でもっとも高待遇なのは営業だ。
社長、経営陣も圧倒的に営業出身が多い。
にもかかわらず、営業ができるのに派遣という仕事の仕方を取った彼女にも問題はある。
営業専門の会社に就職すればいいのだ。
このブログでいつも書いているが、会社というものは仕事の流れの上に生きている。
流れの中で他者(他社)に責任を取らせられない仕事がある。
たとえば、会社の課題を解決するとか、新製品の試作とか、新しい事業を試みるとか、社員のモチベーションをどうするかとか。。。
そういうものはアウトソースできないが、イマドキの世の中ではほとんどのルーチンワークは引き受けるアウトソーサーがいる。
だから繰り返し言っている起業がしやすい世の中にどんどんなっていっている。
逆にいえば、特定の作業に強いひとはアウトソーサーの門を叩くべきなのだ。
そしてアウトソーサーは(バカな会社もあるが)専業だけに生産性はとてもいい。
そうでないと競合に勝てないからだ。
日本企業はゼネラリストが幅を利かせているために、どの職場も生産性は悪い。
シロウトにバカな指示をされて戸惑うくらいなら専業の会社に就職するべきだ。
遅かれ早かれ日本企業もルーチンワーク(製造、調達、ルート営業、経理、人事、総務)はアウトソーサーを使う時代が来る。
なぜならばそのほうが安いし、専門家を使えるし、コモディティ化しているから。
社員である必要はないのだ。
おわかりだろうか?
仕事を一方向からだけ見ていると自分の価値に気づかないことがある。