サラリーマンのふり

スタートアップ企業がよくやる失敗

前回、近道しようとして人生でつまずく話を書きました。

実はとてもよくある話です。

今日はスタートアップ企業が同じ近道の罠にはまったパターンを書きます。

Littlebitsという製品/会社があります。電子部品をケースにいれ磁石でくっつけることで電子回路が組める製品です。(ちなみに電子ブロックやこのテの製品で遊んでも電子回路は学べません。モジュール化されてしまい素子の特性がわからないからです。せいぜいサンプルどおりに組んで動いた\(^o^)/ で終了です。コスパの悪さは悲惨なものがあります)

この製品を立ち上がり時から見ています。
スタートアップ時にはアメリカの子供向けに流行り、日本でもかなり報道されました。
ただ、子供向けにしては高いし、子供はパーツの意味はよくわからないので対象をそもそも誤っている感じは否めません。

大人にはいらないです。ブレッドボードとパーツのほうがフレキシブルだし、価格も圧倒的に安い。
出口のないプロトタイプを人に見せるならオサレなLittleBitsはいいかもしれません。

「教育用」って電子機器の世界で使い古された、学研の「電子ブロック」以来使われているバズワードです。

ここまではニッチ狙いのクラウドファンディングなどでもよくあることです。

しかし、LittleBitsは日本における販売で致命的な間違いをおかします。
総代理店にKORGを選んでしまったのです。

KORGはいわずとしれたシンセサイザーの会社で、音楽の世界ではネームバリューがあります。
LittleBitsの社員でも名前を知っている人がいたのでしょうね。

しかし、LittleBitsがたとえ音楽にも使えるとしても、それ以外の可能性を閉じてしまうことはどうなのでしょうか。しかもシンセサイザーは大人が普通使うものなのに、子供の「教育用」グッズです。

多彩なセンサー、モータードライブやLEDのピカピカなどを使う可能性を捨てるのはどうなんでしょう?
私の予想どおり、LittleBitsは高価かつ日本ではまったくポピュラーになっていません。
この記事を読むまで存在すら知らなかったというのが普通でしょう。
多くの人はKORGが扱っているというだけで楽器関係のなにかだろうと漠然と思っているはずです。
それ以上、普通の人がLittleBitsに注意を振り向ける理由がありません。
実際、KORGはLittleBitsを使ったシンセサイザーキットを出しています。こうでもしなければ売れるわけがない。

スタートアップの企業なのに、販売を加速する近道をしようと大企業と提携してしまう。

これがスタートアップ企業がしばしば犯す近道の罠です。

大企業とつるもうとするスタートアップ企業はおそらくこんなことを考えているはずです。
「ウチの製品を大企業の販売ルートに乗せてもらえれば、急速に売上があがるに違いない。管理もラクだ」

ええ、確かにその製品が提携した大企業の本業に関係していれば可能性は高いです。

しかしこういうちょっと離れたジャンルだと大企業KORGの担当者はこう考えているはずです。
「収支がウチのビジネスにインパクトをあたえるほどになるわけないから、話題作りにちょっと扱ってみるか。あ、コストはあんまりかけられないけどね。」

要するに期待ほどマジメに扱ってもらえるわけがないのです。担当者がどう言い訳しようが。
大企業においては扱っている他の製品同様に収支を必ず問われることになります。スタートアップ企業の製品だから収支度外視なんて社運でもかけた特別な経営デシジョンがないかぎりあるわけないです。

スタートアップ企業の内外に大企業経験者がいれば、こんなバカな提携ミスはしなかったはずです。
スタートアップの利点を生かせずに、ラクをして近道をしようとしたマーケティング担当者が愚かなのです。

私はLittleBitsがKORGを販売代理店に選んだ時点で興味を失いました。

まったく逆のアプローチを取っている企業群もあります。
中国のSeeedStudioやアメリカのSparkFun, Adafruitです。

どちらも電子デバイスのモジュールや完成品を売る企業です。
彼らは一定の条件があれば、個人でも代理店として受け入れます。

結果、ものすごい成長をしています。
日本で儲かっていると威張っているスイッチサイエンスの販売品の大半はこのあたりの企業の製品を日本語化したものです。(どーして日本人って英語を嫌うのだろう?Amazonで「日本で売るからには説明書は全部日本語にするべきだ」というレビューを読んで、書いた人の時代錯誤に気の毒になりました。尖ったデジタル製品なんて英語も読めなけりゃ使う資格ないよ。なぜならば疑問点は自分でネットを使って調べるしかないから)

大企業を利用して近道をしようとするよりも、自分たちと同じインターネットを利用して無限にある小さなお店の販売機会に協力する道を素直に歩いたほうが結果は出るのです。

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