ずいぶん前に某セキュリティ会社関連にいた。
この会社の営業にNTTにいた時代にあったことがあるが、パッとしない感じであった。
提案ができない。言い換えると「御社のこれが欲しい」といわれなければ、ぼーっとしている。
(今は技術の変化についていけない化石技術のセキュリティ会社に成り下がってしまっている。英語読まないしね)
いざそのセキュリティ会社に入って会社の営業のやり方を内部で見ていると、遊んでいるような営業であった。
アカウントプランもなければ、誰になにを売ろうとしているのか目的もはっきりしない。
別にこのセキュリティ会社だけではなく、普通の会社でも課長、部長ってなにも考えていない人が多いから似たようなものだろう。
そういう会社の営業がパチンコ屋や映画館や喫茶店にたむろっているわけだ。
ものすごい人材の浪費である。
SFAのわかりやすい例は宋文州氏が設立したソフト・ブレーン株式会社だろう。この会社のソフトは宋氏が別のソフトを売っている時に営業のデタラメぶりに驚いて作ったという。
個人やオーナー会社にものを売る時はエモーションを動かすことが大事だ。
アマゾンで見かける多くの営業向けの本はほとんどがエモーションを動かすことを書いている。
しかし企業に売る時にはエモーションはあまり関係ない。(ない、とは言ってない)
なぜならば企業には稟議書というものがあり、個人をエモーションで釣っても稟議書に合理性を書けなければ成約しない。
個人やオーナー企業に売る売り方と法人に売る売り方は違う。
大企業で育っていない人、大企業と取引経験が浅い人、はこれがわかっていない。
そして法人にモノを売る手順は驚くほど同じである。
みーんな漠然とマーケティング活動をしているけれど、同じようなことを実はやっている。
その同じようなことを手順化して売る方法論が「ロジカルセリングプロセス」だ。
この言葉の起源はとても古い。
私が初めて聞いたのはIBMの新入社員研修だったくらい古い。
アカウントプランも実はロジカルセリングプロセスの一部であって、見込み客がどのフェーズにいるかを認識するべき場である。
しかしそれすら知らない人がとても多い。
SFAの背後の考え方はロジカルセリングプロセスである。
企業によりバリエーションはあるけれど、その会社で数年「売れる営業」がやっている営業ステップを明らかにして、行動計画を明らかにして手順化するものだ。
宋氏は自社で決めた手順を守ってくれれば、コミッションを達成できなくても文句をいわなかったらしい。
それくらい有効な方法なのだし、彼はまともな経営者だった。
逆にSFAで工程管理をするならば、ストーリーにあわない見込み客に時間を使うべきではない。
ところが、こういう手順化をベテランの営業はとても嫌う。
俺様のノウハウが最高だ、例外をあげつらって文句を言いたい気持ちはわかる。
いままで苦労してきた、俺独自のノウハウ、「営業なんてそんなもんじゃない」というへんな職人意識。
それじゃ新人や成績のあがらない人は不幸なまま、ひいては会社のためにもならないのに知らん顔。
あげくの果てには「ウチの製品は高いから売れない」とか会社を裏切るようなことを平然と言う。
おまえの給料、どこから出てるんだ?
先にあげたセキュリティ会社でもIBM定年後に入ってきて営業部長になったおっさんが「営業なんてそんなもんじゃない」といってSFAの使用を止めた。
結果、私の予想どおりさっぱり営業成績はあがらなかった。
会社に利益をもたらさず人間関係だけで生きているクソ野郎である。
サラリーマンの多くが誤解しているけれど、
仕事において「意識を変えれば行動が変わる」なんてことはない。
「行動を変えさせて意識を変える」のだ。
これがわからない限り、会社は発展しない。
従業員にトイレ掃除させたって業績はあがらない。街を掃除させたって業績はあがらない。
クレドを唱えさせても、社是を合唱しても変わるわけがない。
それは単なる現実逃避。
従業員はその場ではやるけど、業後の居酒屋で「バカジャネーノ」と不満をぶちまけているだろう。
そもそも、こういう行為は事業責任をもたない社員の思想を縛る危険な行為であることにすら気づいていない。
外資系では当然の考え方なんだがな。
企業は人が入れ替わる。どれだけ居座ろうとしても年齢が来れば定年。
なぜ自分のノウハウを会社に定着させようと思わないのかな。
SFAはそういうための道具なのに。
日本で営業が「俺はすごい」と職人のように考えている限り、SFAの導入は進まないだろう。
でもそれは企業としてはものすごくビジネスチャンスをロスしていることにほかならない。