宋さんが元企業オーナーとしてじゃなければ、書けないことをメルマガで書いておられた。
ちょっと長いけど引用する。
富裕層向けの老人ホームを経営している友人から聞きましたが、老人ホームに入居しても大手企業の社長を経験した老人たちの多くは「○○元社長」の名刺を持つと言うのです。老人ホームの活動の中の自己紹介も「○○元社長の□□です」と言うそうです。
我々人間は生きている間に、常に「あなたは誰か」と問われます。その際、一番いいのは名前を言うだけで皆に分かってもらえることですが、そんな方は世界になかなかいません。名前を言えば分かってもらえる人はそもそも顔で分かるから名前を言う必要がありません。
「○○の□□です」も楽です。特に「○○」が有名であれば、一発です。できれば○○が有名の上、「□□」がその「○○」にとってとても重要な存在であればもっと素晴らしいです。したがって有名会社の取締役や管理職はとても貴重な名札です。社長となれば最高です。死ぬまで使いたいでしょう。
しかし、ご本人は知らないかもしれませんが、老人ホーム経営している友人の話によると「元社長の名刺を持つ老人はだいたいつまらない人で老人ホームでは人気がない」と言うのです。
それはそうでしょう。老人ホームではもう昇進する必要もなければ金儲けをする必要もないので、大企業の元トップであろうか元外交官であろうが、話し難くてユーモアのない人には誰も用はありません。所属の組織を利用して「あなたは誰か」に答えてきた人たちは、一人になることが難しいのです。
一度社長になればなかなかやめられない最大の理由は一人の人間に戻ることが難しいからです。特に所属の集団やグループを重視する日本では、社長であることの便利さになれてしまうと中毒になります。
料亭やクラブに入ればオーナーから従業員やガードマンまで「○○社の社長」を知って小走りに迎えに来て90度のお辞儀で車まで送ります。ホテルや航空会社のカウンターでは必ず普通の人と異なる態度で特別に案内してくれます。これに慣れてしまうと普通の店やカウンターに行けなくなります。
海外に行っても必ず地元にある支社や支店の幹部が丁寧に案内して特別な場所で配慮してくれます。一人でレンタカーを借りてどこかに行ったり、一人でふらっと地元の店に入って気楽に食事を楽しんだりする社長は少ないでしょう。
「自信を持つ」ことはとても大切なことですが、偉い立場に慣れた人達は皆自信を持っていると思うかもしれませんが、私はこれは砂の上に立つ楼閣のようなものだと思うのです。彼らは一個人としての生存力と野生を失い、組織に付着していないと生活さえできなくなります。これでは果たして本当の自信を持てるでしょうか。
私が思う自信のある人とは次のような人です。
1.過去の立場や知名度を知られていなくても、過去の業績や功績を知られていなくても、一人の人間として他の人間とその場で打ち解け、人々に愉快な思いを与える人
2.人に理解されなくても、敵視されても、依然として自分の意見や価値観を失わずその場の空気に流されない人
3.いくらお金があっても、いくら成功しても、それを知らない人たちと普通に人生を送り、普通に些細なことを楽しめる人
4.そして自信がない時に、自信がないことを受け入れた上、恰好をつけず全力で状況対応に当たることができる人