企業のソフトウェア保守契約

今日はとあるサードパーティ系のソフトウェア保守会社のインタビュー記事を読んで、非常に気になったので書いてみる。

本来、自分のしごとに密接に関係することは書きたくないのだが、ソフトウェア保守について書かれているものは少ないので記そうと思う。

大手の企業が使うソフトウェアを提供している、通称”ソフトウェアベンダー”はほとんどの場合、ソフトウェア使用ライセンスと共に毎年のサポート契約(保守契約)を必要とするはずです。

ここで思い起こしてほしいのですが、ソフトウェア使用ライセンスとは、そのソフトウェアがお客さんのものになることではありません。
そのソフトウェアを使っていいよ、という許可権です。

この基本がわかっていないお客さんがしばしば、「プログラムのソースコードを見せろ」とか「いくらコピーして使ってもいいだろう」などといいますが、それは機能をどのように実現しているかという知的財産にもかかわることであり、そんな権利は使用許可権には含まれていません。
巷でも似たようなものはあり、CDなどがそうでしょう。聞く権利はあっても誰かにコピーして売ったり、曲を気に入らないからと変更したりしてはいけないことになっています。

これをふまえて、ソフトウェアの保守契約とはなんでしょうか?
現在の大手ソフトウェア会社の保守契約は次の要素からできている、と個人的には考えています。

  1. 製品の使い方を教える
  2. 製品を使うために足りない知識を補完する
  3. 製品の健全性の確認
  4. 製品の瑕疵の修正
  5. 将来バージョンアップ製品を無償で受け取る権利

ソフトウェアのリセラー(代理店とかシステムインテグレータが仕入れて売るとか)とベンダー(製造者)の間の契約では、1,2がない、と明記されることが増えてきました。
これは当たり前のことで、リセラーが売ったお客様からの質問をスルーでベンダーに飛ばしているにもかかわらず、保守料をリセラーがお客さんから徴収してるのであれば、濡れ手に粟のボロ儲けだからです。
昔はそのとおり、ボロ儲けだったのですが最近は減ったと思います。

3はミッションクリティカルなソフトウェアに多いサポートメニューです。ディスクもメモリーもギリギリの状態で動かしているソフトウェアはさまざまな不測のトラブルを引き起こします。
普段から健全性を確認しておけば、トラブルも減る、というのはシステム運用のイロハですが、意外に行われていることがありません。
そのためソフトウェアベンダー自身が提供していることがあります。これは利点もあり、ベンダーでなければわからないような大事なところを監視できるということがあります。

4、5についてこそ、ベンダーとのサポート契約があるからこそ受けられる、お客さんの権利です。ITの技術の進歩はすさまじく、この記事を書いている2013年から2014年はインメモリーデータベースを利用したビッグデータの分析などが旬の話題です。その特性を利用したソフトウェアというものが、次のバージョンとしてあらわれるでしょうし、ソフトウェアにバグはしばしばあるため、パッチを当てるという行為もシステム運用の中では必然的なものだと思います。

ここで「バグ」について少し解説します。企業用ソフトウェアでのバグの定義は「使っている企業の業務遂行にあたって、不都合であるか」です。つまり、字が小さいとかメニューが気に入らないということは担当者の不満であり、業務遂行が可能であるならば、バグとはいいません。
もちろんお客さんの声は大事なので、ご意見は聞いて蓄えておき将来の参考にはしますが、可及的速やかに修正すべきものという認識にはなりません。
これは逆にいうと、ユーザーがどうしても直してほしい、と思うのであれば、それなりの業務遂行上困る点、企業が損をする点をしっかりあげてくれるとベンダーも判断しやすいといえます。
(閑話休題)

さて、ソフトウェアベンダーに代わって、ソフトウェア保守をするという第三者の会社の場合、不可能なのは、4,5です。

これらはどうしてもソースコードの変更を伴いますから、第三者ソフトウェア保守会社にはできません。1,2,3についてはベンダーより安い値段で提供できるでしょう。

するとユーザーの立場からだと、こういうことを考えるかもしれません。
「じゃぁ、使ってから1年くらいは第三者のソフトウェア保守会社にまかせ、バージョンアップするころにベンダー保守に切り替えたらどうだ。」

そうすると、通常のソフトウェアベンダーの契約はその会社となかった保守期間(この例では一年)分の保守料金を要求します。
なぜならば、そのソフトウェアライセンスを使う時に保守契約は必須だということに最初から言っているからです。

逆にいうと、ソフトウェアベンダーからの視点は、第三者保守会社を使っている間は、見て見ぬふり、そのお客さんはソフトを使っていない、という立場でいるということです。

第三者ソフトウェア保守会社は、「ベンダーのソフトウェア保守料は暴利だ」といいますが、実はそうではありません。この点については、やっている業務に関係するので話すことはできませんが、暴利でないことだけは書いておきます。

「ソフトウェア保守」と一言でいいますが、内容は上のように5つの要素から成り立っています。どの話をしているのかは、企業のソフトウェアユーザーはしっかり把握する必要があります。

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