私はサラリーマン業では、以前は交渉の達人と言われていました。
人の心理を操る技術をもっていますから。それは勉強と実地で鍛えたものです。
ここで大事なことをひとつ。
「理屈が正しくても、人を説得することはまったく違う話です」
ひとつ前に書いた、リーダーシップのトレーニングコースにも交渉=論理的に正しい、とありますが、こういうタイトルをあげた時点で、私なら講師を失格もしくは鍛え直しますね。
極端なことをいえば、「確かにこれはベストかもしれない。でも、おまえが嫌いだから契約しない」はビジネスの現場ではいくらでもあります。
コンサルティングファームのコンサルタントがよくやる間違いです。「論理的にはこちらが正しいのに、わからないヤツはバカだ」といいます。
この背景には「論理的に正しいものが、ビジネス(金儲け)に貢献する」という暗黙の前提があります。実際はそういうほうがむしろ少ないでしょう。
典型的な例をあげます。
みなさんがお使いのキーボードです。キーボードのキーの配列は、遠い昔、タイプライターが出来た時に、機械をあまり早く動かせない様に、いいですか、早く動かせないように、作られた配列なのです。
これほど、非合理なものはありません。しかし、今、あなたがお使いのキーボードも、来年売り出されるであろうパソコンのキーボードも、iPadの仮想キーボードもこの形式です。もっとすぐれた配列のキーボードはいくらでも存在しています。しかし、まったく知られていないくらい売れていません。
論理的に正しいものが、ビジネスとして必ず成り立つとは限らない典型例です。
それよりも先に、人は感情と先入観で動くのです。
どうやって人を動かすかは、語りだすとキリがないし、大事な私のスキルのひとつなので書きません。
が、入門書としては「影響力の武器」という本があります。
ネゴシエーションについて学ぶなら必読の本であり、かつ、論理で人が動くなどという幼稚な思い込みは読後には消えるでしょう。