サラリーマンのふり

RCA(Root Cause Analysis)

まずは悪口から。

今週の日経ビジネスオンラインに なぜオバマはGMを救済しても保護しなかったのか、 というコラムが載っている。これを書いている人のプロフィールを見て信じなくなってしまった。
ひとりは「VAIO、So-net、メディアージュ、スカパー!など矢継ぎ早に新規事業立ち上げに成功」なんだそうだ。こういう風にいろんな事業にある成功要因をすべて自分がやったように書く人には????がついてしまう。
記事もバカみたいな比較である。ドラマ「官僚たちの夏」という主に1960年代の話と、それから50年たったオバマを比べ、通産官僚の結果を揶揄している。こんな後だしジャンケンを信じてはいけない。
産業(業界)を育成する、ということと、その企業がどう経営されていくか、ということは別の話だ。富士通やNECが世界でしょーもないシェアしか占めていないのは、間違いなく世界で本気で商売しようと考えていないからだ。逆を見ればよくわかる。Panasonic,Sonyをアメリカの企業だと思っている人は少なくない。そういう経営をしてきただけのこと。
さすが、ちょっと関係していただけで「新規事業立ち上げに成功」と自分がやったことのように恥知らずに胸を張れる人は洞察も甘い。(本当に立ち上げてたら仲間あってのことを痛感し、こんな一人称は恥ずかしくて使えないことを実感するだろう)

こういう分析をする際に、ものすごく大事なことは「真の原因はなにか?」である。ITの世界でいうと、突然、サーバーもパソコンも通信できなくなってしまった。だから、サーバーとパソコンが悪い、と判断するのではなく、共通しているネットワークに障害があるのではないか、と推測し、さらにネットワークをたどって4階のスイッチが故障していた、というのが根本原因(Root Cause)だと分析していく。
同様に「海外になぜIT企業が出て行かないか?」を分析するのがRCAではないだろうか。

私にしてみれば日本企業がITの分野で世界に出て行けない真の原因は、ふたつ。
ひとつは英語ができないこと。英語のスクリーンを見ると怒り出すお客は、日本くらいにしかいない。逆にいえば日本の学校における英語は「英語道」であり、国民が英語を使うようにはまったくならないどころか、英語に嫌悪感と劣等感を持たせるだけに終わってる。だから英語を話す外人は異様にもてる。
こんなんじゃ、異国の人とまともに話ができない。韓国人とですら手っ取り早く話すのにも英語は便利なのに。

二つ目は技術力のなさ、つまり売るものがない。日本人の大半がITに関して誤解しているだろうが、もはや日本にITについての技術力はない。ご自慢のVAIOの肝心のマザーボードはどこで設計しているだろうか?WikiPediaのマザーボードの項を見てほしい。日本メーカーなどない。これで世界に出て行けるわけがない。目先の利益を追って技術を台湾に頼んでいたら、二度と追いつけなくなってしまったのである。パソコンを知らない人に説明すると、マザーボードを作る技術こそはCPUに代表されるすべてのチップの特性を知り、それを活かす総合力が必要なのだ。だからメーカーの力を知るには最も適しているのだ。それを作れないということは、日本のIT系のメーカーは実は皮だけを作っているに過ぎないのである。(たしかに日立はSH-5というプロセッサをもち、東芝もTX-39マイクロプロセッサを作っている、ヤマハの音源チップは素晴らしい、がそれが世界の舞台に出る規模になるのかな?)

IT系の主要な技術は「かな漢字変換」以外はすべて外国製である。ここに大きな秘密がある。こんな状況でITについての国際競争力をうんぬんしても意味がない。

「日本人はすばらしい」という自分の感情は二の次にして、冷徹に事実を分析することこそ課題を浮かびあがらせることだと思う。どう考えても、このていたらくを1960年代の官僚の責任にするのは無理がある。

すでにビジネスにおいては「国」というボーダーは希薄である。イギリス最大の銀行「香港上海銀行」はロンドンが儲からないとなると、古巣の香港に本店を移した。ビジネス界ってこんな感覚。

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