料理とお酒

鶏そば

ここ数十年、ラーメンはインフレ状態である。(あるものが大量にあり価値がさがることをインフレという。お札が大量に発行され、お金の価値がさがる等) これほど注目される食品も少ないだろう。家の近所のまずいラーメン屋もたいていのラーメンマップに載っている。ワカランことだ。
自分では作れないトンコツ、伝統の醤油味、寒い時にうまい味噌味、忘れちゃいけない中華料理店の清湯系の柳麺。意外といけるのが食材店においてあるトンコツスープやラーメンスープの基や食材を利用して作るラーメン。ごく普通の店よりゼンゼンうまいです。食材を売るということはそれなりのノウハウがつまっておりバカにしたものではないようです。実は飲食店に進出する人でドシロウトは多いんです。でも、自分の商品があまりうまくないことがよくわかっていない。
そうやってつぶれていく店をよく見ます。いっそのこと上のような食材店にあるものを徹底的に利用して安価に提供する戦略をとればいいのになぁ。嗚呼。
私がラーメン屋をやるとしたら、という想像をしながら自分の好みにあわせたオリジナルなラーメンを作りました。

お店のラーメンでもっとも近いものは、東京の末広町にある「山彦」の「山彦ラーメン(鶏ベース、塩味)」や赤坂のにあった、らーめん酒家鳳(どこにいったのか)なんてところだろうか。 名づけて「鶏そば
あくまでも私の好みで作っているので、一般的にうけるかどうかはわかりません。鶏、ねぎの嫌いな人、ラーメンは醤油、味噌、トンコツ以外は認めんという考えの人などにはまったくうけないでしょうね。外食は情報を食っているようなところがあり、味と人気は必ずしも一致しないと言い訳しておきます。
でも、私の家族にはすこぶる評判がよいですよ。しばしばご注文いただく。ラーメンをよく知りたいならひとつの作品を作り、その経験から他のラーメンを見ると100軒食べ歩くより深い考察が得られると思う。私がいろんなことを自身で行う小さい理由のひとつです。

そもそも私のラーメンの原体験は日清チキンラーメンである。今でも最低月に一回は食べる。薬臭い?まずい?なにをいうか。私はこれを幼稚園のころから食べ続けてつつがなくここまで育ってきたのである。「すぐおいしい。すごくおいしい」のだ。卵をのせるくぼみをつけてバカ売れしているというが、私にしてみれば「だろー。チキンラーメンはウマイよ。」と胸をはりたいところだ。
チキンラーメンのうまさは当たり前だが鶏である。ところが鶏味主体のラーメンはリアルにはほとんど存在しない。たいていが豚と補助的に鳥。ここらへんから疑うべきじゃないか。
話は突然、焼き鳥屋になるがいい焼き鳥屋には「とりスープ」とか「ねぎスープ」といったものがある。飲んだことがあるだろうか?安いとかバカにしちゃいけない。いい焼き鳥屋のスープは鶏を知り尽くした職人技であり、絶品である。あのうまさは鶏とねぎのハーモニーだろう。ここらへんが私が「鶏そば」を考え始めた発端である。

材料

先に材料を書いておく。

  • スープ原料:鶏ガラ,(+あればモミジ。丸鳥ならもっと簡単だ。後述する),昆布茶,タマネギ,ねぎ,にんにく,ショウガ,紹興酒
  • 鶏団子:鳥モモ肉ミンチ(ナンコツがまざってるとなおOK),卵,ねぎ,生姜,塩,酒,醤油
  • トッピング:皮のみじん切りを揚げたもの、もしくは、コガシ葱(ちなみに秘伝とかいわれてるが、コガシねぎを作る時にはナベにジャガイモをいれておくと、油の温度がむやみにあがらずキレイにできます。)
  • ネギのみじん切りをたくさん
  • 細いまっすぐな麺
  • コブ茶、塩

スープの作り方

  • たたいた骨は一度、軽くゆでて血を洗い流す。血がアクのメイン。
  • 紹興酒はケチらずにいれる。たいていの臭みはとぶ。
  • とにかくアクは丁寧にとる。
  • 2時間?2時間半くらい煮る。それ以上は意味がない。なお、丸鳥の場合は、1時間くらい圧力釜で煮てしまってもよい。おいしいスープが取れる
  • ガラだけのときは臭みが溶け込まないように蓋は絶対にしない。(だから手を抜けない。。。)

タレについて(料理店の妥協)
とつぜんだが、餃子の具の野菜を搾るところは多い。なぜ、野菜のうまみを取り去るようなことをするのか?私は料理人が意識していようがいまいが、商売ゆえの宿命だと考えている。野菜を切ってすぐに具としてつつんで調理してしまえば、野菜のうまみの効いたスープたっぷりの餃子を楽しむことができる。しかし、つつんだ餃子を放置しておくと野菜の汁がでてきてべちゃべちゃになってしまう。仕方なしに水分を搾り取っているのではないだろうか?ほんとは包み次第とっとと氷温冷凍しちまったほうがウマイのだと思う。
同様のことはラーメンのタレでもいえると思う。手間を考えるとスープストックに醤油などを溶かしてしまったほうが手っ取り早いのである。(実際そうする食堂もある) しかしスープストックは一日中、火にかけられ濃度が変化する。味のはっきりしないスープストックだけの濃度の変化は客の許容範囲となるが(煮詰まった時間を狙うヤツすらいる)、味をしっかりつけたスープにしてしまうと味が大きく変化してしまう。場合によっては商品にならない。それゆえタレという形で味の柱を分割しているのだと考えている。
つまり大量に作る場合はタレとすべきであるが、少量作る場合はタレなど必要ないと思う。
ところで私はしみじみ鶏スープを味わう場合、しょうゆ臭くない塩が好きである。だから塩タレとなる。この塩タレは単純で塩を味醂、酒にとかして作ってもいいし、少量なら鍋に塩を直接放り込んでもかまわないと思う。このラーメンの場合、ひとりあたり塩5?6グラム見当が私がうまいと思う濃度である。
また化学調味料についてであるが、私も少しいれることに賛成派である。実際に味わってみるとわかるが、化学調味料をいれると味にまとまりがいい。(同じ意見のラーメン職人がいてホントに安心しました)さらに、ほとんどの人が化学調味料になじんだ舌をもっており、そういう人に天延素材だけの料理は物足りなさがある。理想は理想でおいておいて、現実解としては少しタレに化学調味料をいれる。

主食ゆえ、けっして軽んじているわけじゃない。でも何度か挑戦したことがあるが、市販麺に負ける。麺はかなりいい小麦粉を使わないとたちまち変色する。とくに中華料理店できちんとうった麺にはおいそれと太刀打ちできない。いわゆるラーメン屋でも麺は中華料理の職人の麺に比べるとはるかに劣ると思うのは私だけか。やっぱり伝統のなせる技というものはある。
あとカンスイがないと中華麺っぽくないと思う。細いまっすぐな麺が「鶏そば」にはあいます。

具について
一般的にラーメンにのっかっている具は、煮豚、シナチク、煮卵、(ナルト)にネギといったところであろうか。これらはラーメンの味を邪魔をせず、味覚をリフレッシュさせるということが存在意義だろう。栄養バランスでないことは確かだ(笑)。吉野家の牛丼に紅生姜をのっけるようなもんじゃないか。
鶏だけからダシをとる鶏そばの具に、煮豚はとってもアンバランスだと思う。シナチクは好き嫌いの問題で私があまり好きじゃないから
せない。中華料理店の鶏そばには蒸し鳥をほぐしたものなどがのっていることが多いが、私は鶏団子にしている。団子から出るうまみでラーメンのおいしさがパワーアップするし、団子のちょっと醤油味が味覚のリフレッシュとなると思っている。黄身とろりのゆで卵もなかなかよい。そうなれば親子ソバだ。が、必須だとは思っていない。
なお、私の鶏そばではネギはたくさんいれる。薬味というよりも先に書いたように鶏とのハーモニーを楽しみたいからだ。

仕上げ方

  1. 鶏団子をボールに用意する
  2. 麺をゆでる
  3. 小なべに大なべからスープを取り、鶏団子をスプーンですくってうかべてゆでる
    (一人あたり4つくらいが限度かな)
  4. 丼に塩タレ(塩5グラム相当)、昆布茶1グラムをいれる
  5. 刻んだネギをいれる
  6. 鶏団子に火がとおったところで、スープと共にどんぶりにいれる(麺の様子をみながら)
  7. 麺をひきあげて、どんぶりに浮かべる

 

トッピング
鶏油がラーメンにあうことは知られている。鶏皮裏には油が多くついている。皮を小さくきり、カリカリになるまでいためたものを載せると、よりうまいかな。

もう一品あっておいしいもの

  • 水餃子:+黒酢
  • ひんやりピータン豆腐
  • プーアール茶
  • キムチやザーサイの千切り(ラーメンにバリエーションをつけられます。ザーサイはもっと料理に使われてもいいと思う。)

なんてものが一緒にテーブルにあると幸せですね。

自分なりのラーメンを作ってみて感じることは、一流のラーメンは本を読むとそれなりに大変だけれども、売り物になり、客をうまいといわせるレベルのラーメンにまでは比較的容易に到達するようだ。
多くの店が材料にこだわるのはわかるが、それを「こだわりの○○」などと宣伝するのはどうかと思う。例えば比内鶏を使うのは結構だが、比内鶏を使っているからウマイわけではあるまい。ラーメン業界は作り方を神秘化しすぎていないか?
ラーメンは伝統によるルールが少ない分、について私が焼き鳥屋から主にヒントを得たように、うまいラーメンのヒントはラーメン業界以外にいくらでもあると思う。

例えば鍋などの締めにラーメンにすることが少なくはないが、絶品じゃないだろうか。こういうところから新しいラーメンが出るのだろう。

もっとも商業的に成功するには商品だけではダメで話題、宣伝、場所、内装どれも大事だけどね。

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