雑感(日記)

「ものづくり日本」とはとうてい思えない

しばしば「日本はものづくり大国」とか「精緻な技術は他国に負けない」などという言説をよく見かけます。

これを読む人も信じているのでしょうか?

私はそんな時代は何十年も前に過ぎたと思っています。
思い出すとバブル時代に打ち捨てられたのではないでしょうか。
当時のSONYのCEOの出井さんは、ものづくりからソフトウェアに舵をきった。
それは将来を見越したことだったかもしれませんが、日本は中途半端な状態になりました。

私からすると、技術者におカネは払わず空洞化しているのに、プライドだけが残っているように見えます。
いくつか証拠をあげます。

Togetter(Twitterを集めたポータル)で「日本人はレビューですぐ低評価をつけたりおかしなクレームを入れてくるので、他の国から避けられがちになっている?」です。
この記事はfacebookに転載されコメントも見たのですが、ソフトウェアを開発した人の立場にたった発言がなにひとつ見られません
みんな、ソフトウェアはどこからか湧いてくるものだと思っているのでしょう。

Amazonのレビューを見てもおかしなものが目立ちます。「箱がつぶれていたからダメ」「送ってくるのが遅かったからダメ」
たまたま不良品にあたったら、その製品がどうかをさておき評価星ひとつ。うさばらしにしか見えません。
最初、こういう類のレビューを見ていた時、バカなヤツがいると思っていましたが。バカは想像以上にいるようです。

今回、直接的に製品の舞台裏を知ることができる記事がこれです。
オーディオ業界の中の人が「原価率は30%以下」「自社工場を持つブランドはほとんどない」などの秘密を暴露

オーディオ機器の製造で中国はすでに世界の最先端を走っているという事実を知ってください。アメリカ、ヨーロッパ、日本のメーカーは中国に発注すれば、現実の製品ができてくるのです。
メーカーは高い技術をもっていて、ブランドが求めるだけ提供しているのです。

勇気がある人はドシロウトでも中国に発注すればイヤホンができます。
日本にもそういう小さい”なんちゃってメーカー”が増えています。
こういう注文形態をODM(Original Design Manufacturing)といい、デザインだけ決めて内部は丸投げします。詳しくはJETROのページをご覧ください。

この事実をふまえ、最近の中国の激安ハイエンドイヤフォンのレビューを読んでいただきましょう。
今回、取り上げるのは、私が先日購入し音質にめちゃくちゃ驚いたイヤホンです。
ケーブルをバランス型(左右完全独立)に変えて使っています。
Yinyoo 中華 イヤホン 有線 イヤモニ CCZ Coffee Bean

いつもながらコメントには「値段の割にいい」「リモート用としては十分」
オーディオ系はとくにそうですが「俺の耳はすごいんだぜ」という上から目線が目立つがゆえ、おもしろいレビューが多いです。
こういう人たちが1万円以上出して、ありがたがっている製品が実は同じ工場で作られているなんてありそうです。
購入したものを製造技術の観点で、しっかり見極められる人は皆無です。

これらのレビューを見て、今の日本人が「ものを作る苦労」「今、製造現場で起きていること」を知っているといえるでしょうか? もちろんレビューをしている人たちがそういう仕事についていないだけという考え方もできるかもしれません。
しかし、ものを作る立場に立った発言をまったく見かけないのは、なぜでしょうか?

一方で「日本製」を盲信している人々も気になります。
たとえばマウス・コンピューターが「日本で作っています」とTV CMを打っていますが、考えてもみてください。CPUはインテル製でナノメートル単位の精度、マザーボードは台湾製で、各種パーツは中国製でマイクロメートル単位の精度。パソコンを作る工程はミリメートル単位の精度で一番雑でいい部分です。日本で組み立てていったいなんのメリットがあるのでしょうか?消費者をミスリードして売ろうというマーケティング戦略にしか見えないです。

いつも書いていますが、パソコンはもっとも量産効果が出る製品です。Appleのノートがアルミの削り出しの筐体であの値段で出せる理由は大量生産です。そして完成度は極めて高い。
日本の国産メーカーが同じものを作ったら70-80万円になっても不思議ではありません。なにしろ日本製パソコンはいまや世界ではレア物です。

日本製を盲信している人々は、ものづくりから遠く離れてしまっているのではないでしょうか。

おそらく今、日本で起きていることは「傍観者効果」だと思います。
傍観者効果とは「どこかの誰かがやっているだろうから、私がなにかする必要はない」という考え方です。
都会で誰かが犯罪に巻き込まれていても助けようとせずにスマホで写真を取ってしまう、当事者ではなく傍観者になってしまう。

自分は評論だけするけれど、日本のどこかの誰かが世界に誇る日本の製造のエキスパートなのだろうと思っていても、実はほとんどいなかったということです。

「日本製じゃこんなこと起きない」というのが単に検品が厳しいだけだったりしませんか?

当事者不在かもしれない日本の産業はどこに向かっているのでしょう?

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