野口悠紀雄先生の「データ資本主義」という本を読んでいただくと、ビッグデータの大事な点がわかります。
日本のIT業界では「ビッグデータでいろいろな発見ができるから、ビッグデータを分析するシステムを作りましょう、とイベントや講演会で呼びかけています。
そこにスーツ着たお客が押し寄せ、ふんふんとうなずき、なにもしていないわけにいかないので数億、数十億円規模の稟議書を書き、SIerとかコンサルティング会社に丸投げします。
一言で言えば、無駄。
野口先生の本を読めばわかるように、ビッグデータはデータを持った企業が勝ち。すでにGAFA(Google, Apple, FaceBook, Amazon)、中国ではBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が大量の顧客データを持っていて消費者を誘導しよう、いや、すでにやっているという話です。
既存の企業がデータ分析をしようと箱を作って、なんのデータを分析するのでしょうか?
ないから、この間、リクナビが作った内定辞退データを購入する企業がけっこういたわけです。
事件を繋げてみると、ビッグデータシステムをこれから作ろうなんて愚か者の所業だということがわかります。
日本でそれだけのデータをもっている企業はとても限られます。
講演会、イベント、セミナーなどで広くお客を募集するような市場は本当はないのです。
特定の企業に売り込みに出かける程度で十分な小さな市場です。
言い換えて説明します。
GAFAがやっていることは単に顧客の購入動向などにとどまらず、いろんなデータをかき集めて顧客の顔はおろか思考、財産、収入、家族すべてを明らかにした上でなにかを売りつけようとしているということです。単なる分析ではなく特定化に向かっていると書けばおわかりいただけるでしょうか。
このように書くと多くの人はそれが善か悪かというイージーな議論に参加したがることでしょう。そんなことは私の興味ではありません。
ここで議論していることは善悪ではなく、それはすでに可能になっているという事実と技術論です。
ちんけなビッグデータシステムを独自で作ってなんの価値があるでしょうか。
GAFA企業が処理エンジンをクラウドでちょっと貸して平気な理由もわかろうというものです。
エンジン自体に価値があるわけじゃないってことです。
にもかかわらず日本人エンジニアはそれを使えるだけで得意の絶頂で、なぜ彼らが無料、もしくはただ同然で貸すのか、ということは考えていません。
ここまででおわかりだと思うのですが、すでに日経新聞とかワールド・ビジネス・サテライトとかで国内ばかり見ていても世の中の次は見えてきません。
彼らがGAFA、BATの出現を予想したでしょうか?
単なる後追い記事を書いているだけです。そもそも記者はサラリーマンです。そんな見識ありません。
野口先生のように海外の文献も読んでいる尖った人の意見を聞いているほうが未来は見えます。