ビジネスモデルは大別して、ブルーオーシャンタイプとレッドオーシャンタイプに分けられる、というのはビジネスのイロハです。レッドオーシャンとは競争の激しい既存市場をいいます。ブルーオーシャンはユニークな製品で競合のいない新しい市場をいいます。
前回、「起業はむつかしい」と書いた理由はブルーオーシャンを目指した場合のことを書きました。
今回、「起業は簡単」と題してレッドオーシャンスタイルと、そこで生き延びる方法について書きます。
誰もがやっている業種は、とりあえず始めることはカンタンです。
八百屋などを見てみればわかります。脱サラして始めた人もいます。
最近はもっとお手軽にサヤ取り(せどり)するだけのビジネスをする人も増えました。
ひところ昔は、ブックオフとアマゾンの価格を見比べて、差がそこそこあるものをブックオフで買い、アマゾンで売ることが行われていました。
今はAliexpressやWishで安いものを見つけてアマゾンで売る。激しい場合は、なにも持たずに注文を受けてから送り先をお客にして注文する人もいます。
ここまで挙げた例はすべて「流通業」であることに気づいてください。
インターネットが広まってから秘密の仕入先は皆無となりました。
昔は貿易処理の面倒臭さ、情報の広がりの遅さから貿易業、流通業はそこそこおいしかったのです。
今どきの流通業は大手でも儲かりません。利益率が消費税並みなんて普通です。
だから規模をめざし、大型化するのです。
一方、整体やマッサージのサロン開業については開業指南書はたくさんありますから、読みながら開業できます。
本が出ているということは、開業したい人が大量にいるということを意味します。
勘違いしている人が多いですが、サロンの開業には免許も法人も必要ありません。あなたの宣言だけです。
レッドオーシャンのビジネスは誰でも始めることはできる、という特徴があります。
余談ですが、本を出版する出版社ってみなさんが想像するほど大きくありません。数社を除き中小企業です。
ですから出版って今どき普通は社長決裁を必要とします。
だからあまり需要の見込めない本は出ないのです。決裁書を見たことがありますが、類書がこれくらい売れてるからこの企画も売れるはずだ、という柳の下の二匹目のドジョウ狙いばかりです。
あなたがユニークな内容の原稿を出版社にもっていっても出版されない理由はこれです。
さて八百屋にしろサロンにしろ開業する方法自体は簡単ですが、だからこそ競合が多いのは当然です。
ここをよーく考えましょう。自分だけじゃなく他人の知恵も借りるくらいよく考えましょう。
下の図を見てください。(クリックすると拡大します)
誰もが始められるということは、多くのお店との競争となります。
そうすると来店してもらう方法はただひとつ。
値段を下げる
ことになります。
ダメサラリーマンばかりの企業はすぐに値下げをしていますが、とても愚かな行為です。
なぜならば起業したり、企業をやっていく目的はお金を得ることです。
利益を確保するために、知恵を絞って働くわけで値下げは最終手段です。
最初に考えられる方法は、ガチンコで価格勝負することです。
量販店は値下げをしていますが、価格コム上位の店ほどは値下げできません。
価格コム上位の店はたいてい店舗ももたず、商品知識など学ばず、価格勝負です。
これはこれで成立しています。
プレゼントをつけるというのも、実質的な値下げです。
次に考えられる方法は、質をさげる。
巷には1000円カットのお店をよくみかけます。
値段を下げるかわりに質も下げたのですが、それでもいいというお客さんが多数いるから成り立っているわけです。
だらだらやっている理髪店にお客が寄り付かなくなるのも道理です。高いか、安いかに分裂します。
私は昭和生まれですが、昭和時代はこういう安かろう悪かろうが通用しない時代でした。安物買いの銭失い、と安物に手を出すことは批判されていたのです。
時代は変化しています。積極的に考えるべきです。
次に考える方法は、ネットに虚偽の広告をうつ。
一週間で10キロ痩せるとか、断食しない限り無理なことを平気で宣伝する。
消費者センターに文句いわれたらさっさと店を畳んで、また別の店を始める。
インターネットには嘘ダイエット方法の巨大なブラックマーケットが存在します。
青汁なんかもそうですね。加熱乾燥した草を水で戻したところでなんともならないのに、消費者の無知につけこむ。
しかし見方を変えるとデタラメ製品でも売れるのですから、まともな製品ならやはり売れるでしょうから、無視するわけにはいかない方法です。
最後が付加価値をつける。
カットサロンでも内装がよく、使う材料も吟味されたお店があります。料金は高いですが、それだけの価値があるとお客さんが考える。旅館やバーなどそういうお店はたくさんあります。
しかしお客が「価値がある」と感じないならば、料金が高いだけになることに注意が必要です。
付加価値をつけることをサラリーマンが考えることはとても難しいです。
長年、起業についてサラリーマンと会話しますが、彼らが高い付加価値をつける方法はいつもシステム化です。
ユニクロのように大量に作って価格戦略に勝つ、とか、TDK、村田製作所、京セラ、キーエンスみたいに高付加価値商品を開発する、とかを夢想します。
実はどれもものすごいR&D(研究開発)が必要だということを理解できないようです。
不勉強なサラリーマンにゼロから新規事業開発なんてやらせる企業もどうかと思います。真剣じゃないんです。
ではスタートしたばかりの企業はどうするか?
専門家がひとりは必要だということです。いいかえると「職人」が必要。
職人の生み出す付加価値は数多くの製品とサービスの中で光ることができます。
サロン経営なら凄腕エステシャンだし、治療院なら治せる手腕でしょう。八百屋ならお客をすぐに覚えるおばちゃんかもしれません。
もうひとつは別のサービス、製品と組み合わせる。
エアコンを購入する時、ダクトの長さまで考えてオプションを指定する人はあまりいません。
電気屋さんが質問しながら、必要なオプションを組み入れてくれるからです。
このように目的と製品のギャップを埋めるという方法は今後、さらに増えていきます。
個人向けにカットハウスと服装コーディネーターを提供し、トータルでその人をかっこよくするなんていうサービスが始まっています。
サービスを組み合わせてお客さんの課題(ここでは「かっこよくなりたい」)を解決するという方向性は今後増えます。
レッドオーシャンの中でも新しい動きもあります。
それはAmazonです。
Amazonはいまやインフラ(使いみちの広いシステムを提供する)企業ですから、なにかの商品をAmazonに乗っけるというだけで面倒なことはAmazonのシステムを使わせてくれます。
よく考えてみると、これは素晴らしいことです。既存の大手のスーパーマーケットや量販店に自分の製品を置かせてくれといったところで、門前払いされるか(実際、されました)、とても高い参加費(ヤマダ電機では要求されました)を課せられます。オールドビジネスはすでに成長した企業しか相手にしません。
しかしAmazonは商品提供者が大手なのか個人なのかすら気にしません。Amazonからするとどちらも似たようなものにしか見えないでしょう。
だからこそ、スタートアップの零細企業にとってはありがたい存在なのです。
物販をするのであれば、Amazonの活用は検討するべきです。
最後にフランチャイズの危険性について指摘しておきます。
フランチャイズをやっているところは、開店準備、技術の伝達もやるので安心、と主張します。
が、考えてもみてください。
そんなに儲かるなら、なぜ自分で支店を出さないのか?
セブン・イレブンのフランチャイズについてインターネットを検索すると、フランチャイズの危険性が次々と出てきます。バイトを雇うほども儲からないから家族で寝ないで店をやる、大量の食品廃棄も買取り、儲かると直営店を側に作られて潰されてしまう、などなど。
しかもフランチャイズですから、自分のやりたいようにはできない。
これらの意味するところは、フランチャイズとはビジネスリスクを背負わされるだけの存在だということです。
ハイリスク・ローリターンなんですね。
日本人は8年間の義務教育で、人と同じことをまじめにやることがいいことだ、とよい工員になるよう徹底的に洗脳されますから、フランチャイズでがんばれば幸せになれる、と思い込みます。
ビジネスはお金のやり取りですから、そんな甘いものではありません。
フランチャイズに手を出すくらいなら、どこかのお店にバイトで潜り込んで仕事を覚えればいいだけです。
ここまで読んでいただいたらわかると思いますが、レッドオーシャンスタイルのビジネスは始めるのは簡単ですが、維持するのが大変なのです。
ここで巷で勧めている「仕事」を見てみましょう。()内は私のコメントです。
単純作業
・テープ起こし (アレクサなどのせいでなくなりつつあります)
・アンケートモニター (もう何社あるかわかりません)
・在宅ワーク(内職)(ものすごく条件が悪いか、詐欺です)
モノ作り
・電子書籍販売 (紙で出版しないと相手にされません)
・LINEスタンプ作成 (笑)
・Tシャツをデザインして販売 (笑)
・ハンドメイド商品の販売 (知人の奥さんがやっています。かなり有名な人で台湾でまで売ってますがトントン以上にならないそうです)
・スマホアプリの開発 (売れるソフトを作り続けるのが大変です。ゲーム会社を見てください。ヒットは続きません)
・ブログ記事執筆 (俺もか?笑)
投資関係
・FX (FXは経済の実態と関係ないマネーゲームです。理論的に絶対に儲かりません。設け続けているって嘘です。なんでこんな単純なこと知らないんだろ?)
・株式投資 (プロがやっても穴開けてます。すでに書きましたがインデックス投資以外は長期的に必ず負けます)
・仮想通貨(暗号通貨) (通貨と名乗っていますが、通貨の要件を満たしていないのでいつ価値がなくなるかわからないんですよ?)
不動産
・不動産経営 (本当にヤバいので止めてください)
・中古アパート経営 (オーナーはみんなべそかきながら、身を粉にして働いてます。スルガ銀行などで泣いているサラリーマンの記事読んでください。あなた、やりたいですか?)
・民泊ビジネス (他人が自分の家に泊まることが平気ならOK)
ネットビジネス
・ドロップシッピング (自分が人気のあるサイトをもっているならば、です)
・Amazonせどり (あまりに知られすぎていて。。。)
・メルカリ転売 (あまりに知られすぎていて。。。)
・Youtube (やればわかります。動画を作り続けるのは大変です。競争も激しい)
トータルで言えることは、知られている副業は「儲からない」ってことです。
もちろん始めるのは簡単なんです。でもね、稼げない。
上の副業と称するものには特徴があります。
誰でもできる。専門性がない。ってことなんです。
巷のサラリーマンでも実は給料があがらない人には特徴があります。
業種を問わずに転職した人。
そういう人たちはなんの専門性もないから、必然的に若いスキルの低い人とも競争しなきゃいけなくなる。
若い時に「スキルを磨く」ってことを知らないと年配になっても、その大事さに気づきません。
ここから導き出される結論は単純な話です。
興味があること、好きなことの専門家にならなければレッドオーシャンでも勝てない
ということです。