最初は一部上場企業の粉飾決算だからたいしたことないと思っていました。
が、コンプライアンスがまったく効いていない実態が報道されるにつれ、私のようなおっさんはデジャブになり始めました。
東芝はよくある「調子にのった」グループで多くの子会社をもっています。誰も報道しませんが。
ここを見れば意外に多いことに驚くと思います。
そして、独立しているというより東芝本体のビジネスで食っている会社が多いですね。保守やら雑用やら。
ことITについては、何年も前から子会社の人が「親会社が仕事を奪いに来る」とぼやいていたのでIT系では東芝は終わったと思っていました。
パソピアなんてパソコンや、企業向けディスクなんか作ってたけど技術で明らかに見劣りしていました。
そこに今回の粉飾決算です。5千億円の赤字もさることながら、こういうことが報道されること自体がすでに東芝の凋落を示しています。
みなさんも漠然と気づいていると思いますが、例えばセブン-イレブンがブラック企業大賞を2015年に取ったなんてことは報道されません。
それはセブン-イレブンの睨みがマスコミ、政府に効いているということを意味します。
日本経済新聞という大本営発表記事と、ネットのボトムからあがる問題の両方を見ていると、誰がパワーをもっていて、誰のパワーは賞味期限切れかよくわかります。
つまり東芝は大きいのにもうパワーはない。コンプライアンスで問題を起こした以上、安倍政権から疎まれるのは当然でしょう。
東芝内部の人は東証に罰金を払ったら許されると思っているようですが、それは甘い。特別待遇がなくなることをよく考えたほうがいいと思います。
ゆくゆくは上場廃止も十分に考えられます。
というのも、本社が赤字で没落したというと、かつてのカネボウ(今のクラシエ)を思い起こすのです。
カネボウはその名のとおり「鐘ヶ淵紡績」という繊維からスタートしました。本業が細ることは明らかだったので「多角経営」に乗り出したのです。
当時の多角経営のついての経済・経営学の考え方は現在のポートフォーリオ理論(もちろん当時は発見されていません)に似て、「ひとつのカゴに卵を盛るな」という考え方で肯定的に捉えられていました。
似たような形態にコングロマリットや商社があげられていました。いずれも脈絡のない事業をやっていくことで景気変動に耐えられる、と。
結果は悲惨なものでした。たまたまうまくいったものもあります。カネボウの場合は白斑問題を起こすまでの化粧品です。しかし、これはすでに花王に売られてブランド名だけ残っていたものです。
本体グループはどこまでも凋落していきました。
コングロマリットについて余談をしておきます。
この形態が唯一うまくいっているのは、GEです。
GEだけがなぜうまくいくかというと、経営技術で事業をする会社だからです。
GEは経営者を育てることが企業の差別化要素なのです。
他の企業体、とくに日本企業にはまともな経営者はほぼいないので、潰れて当たり前。
余談終わり。
結果、カネボウは大幅に規模を縮小することを余儀なくされ、クラシエと名前を変え、さらにホーユーという白髪染めの会社の子会社に成り果てました。
採算ばかり考えて規模を無視すると、こうなるのです。
東芝も、そしておそらくシャープも同じ道を歩むだろうと推測します。
というのも、売上の大きい事業を切り取って売り出すと、収益性は向上するかもしれません。
しかし、絶対規模は(当たり前ですが)小さくなります。
同時にお客さんを手放すことになります。
このお客を手放してしまうということに、大企業の経営者は鈍感すぎます。
東芝がシロモノ家電を手放す、テレビをやめる、パソコンをどこかにもっていく、ということはサザエさんは終わりということです。一般家庭とは縁がなくなります。
残るのは原発や重電でしょう。小さくなった資本規模で大資本がいるジャンルを続けられればいいのですが。
シャープも同様です。液晶事業を売り飛ばしたら、後、なにが残るのでしょうか?一時、シャープは液晶にさらに頼る、という宣言をしたくらいの主要事業です。
イマイチな家電に頼るつもりでしょうか?
採算の悪い事業を売るとどうなるかについても、IT業界にはケースがすでにあります。
HPとIBMです。
IBMはハードウェアの事業をことごとく売りました。それは採算を重視したからです。
でもハードウェア製造と机とパソコンだけで商売できる「コンサルティング」を比べることはどうだったのでしょうか?
ハードウェアを製造して知り尽くしている知識がコンサルティングを支えていたのではないでしょうか?(私はそう考えてIBMを去りました。知識に関しては予想どおりになりました。)
一方のHPはハードウェアビジネスを伸ばすことに熱心でした。最大の冒険はコンパックを買ったことです。
後、バカなCEOがパソコン製造部門を売却しようとしましたが、大株主の創業家が反対しました。
その理由が「採算だけを見て、規模を見ないと企業は成長しない」ということだったのです。
ハードウェアもソフトウェアもやることは、分社したとはいえhpのポテンシャルを維持しています。
赤字を止血するために、「不採算部門」を切り離すことはわかります。しかし、本当に不採算なのかを調べずに安易に切り離すことは大企業の将来を考えるととてもリスクが高いことを歴史は証明しています。
大企業のビジネスは考える要素が多くて難しいですね。
追記(2016/1/13):もし、東芝が息を吹き返すとしたら、日本政府が新興国に強力に重電事業(発電所、鉄道など)や武器商売を売るために力を入れた場合です。
アベノミクスの本当の矢はこれではないかと私は邪推しています。新幹線をあちこちに売り歩いて居る話はよく聞きますよね。
ちょっと前までの日本政府はそういう民業を手伝うということはしませんでした。アメリカは大統領が外国行って「もっと車買ってくれ。もっと鉄を買ってくれ」というのに比べてエライ違いで歯がゆい思いをしていました。
最近変わってきていることは心強いことではあります。
追記(2016/5/7): 新しい東芝の体制が決まりました。もう終わりでしょうね。
新しい社長は綱川氏というらしいですが、社内で大声でどなったことを見たことがない、もともと社長候補だったということです。
選んだ社外取締役というのがこれまた長年サラリーマン経営者やってた人、大学教授、公認会計士など。
結局、従来どおりの調整型のよきにはからえがベストだと考える人々ばかりです。
電力・社会インフラ、エネルギー、ストレージ(電子デバイス)で食っていくといいます。
それならばさらなるリストラは避けられません。
明確な意思を示せない調整型社長では業績の向上は見込めませんから、もう一度、三菱自動車のように不祥事が発覚すれば息の根が止まるでしょう。
そして上意下達の会社は必ず膿が潜んでいます。
なんで社内からもともとの最有力社長候補を社長にするかな。
雇用者のマインドはまったく変わらないよ。
元々、東芝は「技術者がいいもの作って、役員がそれをぶっ潰す」ことで有名だったからね。
構造的欠陥は保持されたままになるのでしょう。