サラリーマンのふり

かくしてブラック企業は誕生する

今月1日夕、首都圏の金券ショップに貼られた値札を、両肩にそれぞれリュックサックを
かけた30代の男性がみつめていた。
リュックには、その日売り出された年賀はがきが、3千枚以上詰まっている。

男性は、中部地方に住む日本郵便の非正規社員。
上司から年賀はがきの販売ノルマをつきつけられていた。
配達の合間に客に買ってもらうものだが、売り切れない分は、自費で買い取る。
「少しでも自腹の負担を減らしたい」。
首都圏の金券ショップは地元より買い取り額が10円近く高い。
新幹線を使ってでも持ち込む「価値」がある。

2600枚を店員に渡し、10万9200円を受けとった。
通常の50円との差額の計約2万円は自費になるが、「しょうがない」。
残りは自力で売る覚悟だ。

同じ日、長崎県内に住む30代の正社員男性は、4千枚を北海道の
金券ショップに宅配便で送った。「足がつかないように」と遠方の店を選んだ。
店の買い取り額は1枚40円。
4万円の損になる。
数年前から毎年4千枚を買い、転売する。職場では1万枚の「目標」が示され、
約100人の社員の8割が達成する。
「多くが自腹を切るからだ」

年賀状をさばけないと、時給を下げると宣言されたり、そのためやむなく止めた人もいるという。

年賀状の売れ行きがどれくらい郵便局ビジネスに影響があるのか、ちょっとだけ調べた。
平成24年3月期の郵便局の収入はおよそ、1兆2千億円(http://www.japanpost.jp/financial/pdf/03_2012_03.pdf)
もっとも、収入印紙の販売すら売上に計上しているらしいので、実力が水増しされているようだけれど。

平成24年に売った年賀状は36億6千万枚
(http://www.post.japanpost.jp/whats_new/2011/1226_01_c01.pdf)
一枚50円だと、1830億円。だいたい15%の収入らしい。

15%のインパクトの収入のために全社をあげて自爆購入させるっていうところが、過敏に動く役所体質の抜けない会社だということだな、とわかる。
しかも、年賀状なんて毎年減るのはわかりきっている。答えのない廃れたビジネスモデルを、逆らえない非正規雇用者に押し付ける、ってブラック企業化し始めている。
先物取引の契約を取ってこい、というのと大差ない。
しかし、郵便局の労働組合もひどいな。こんなもの放置して。

そもそも、郵パックがほとんどのコンビニから叩きだされて、宅配便としては10%のシェアにとどまっていたりする。
そうしてしまった中央に座っている連中のほうが罪深いと思うけど、そういう人たちは社内ではきっと強者なのだろうな。
どれだけチョンボしても責任は問われないようだ。
いつも書いているように、会社の失敗の責任は末端から取らされる。

最近賑やかな、食材の偽装、誤表示(日本語ってすごいな、ウソをこう書くんだ)も、みんな現場のせいにしている。何年も気づかなかったら、本当は経営者の職務怠慢だろうが、それは誰も追求しないのである。

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