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セールスマンの課題解決

私が営業というものを真剣に考え始めた、あの日のことは忘れない。

4つのエピソードがある。

第一話

山下達郎の「セールスマンズ・ロンリネス」という曲がある。

あんまり人気の曲じゃないんだけど、山下達郎がハンバーガーショップで見かけた営業の人を題材に書いた曲だそうです。
(山下達郎をカバーしている作品は多いが、ごく一部をのぞいてオリジナルを上回れない。やっぱり達郎はスゴイ!)
この曲はまだいい。作中のセールスマンはハンバーガーショップの中だから。

ある夏の日差しの強い昼下がり、私は秋葉原駅の横を歩いていた。
そこは車は入れないけれども、十分な広さがあり、ビデオボックスなど若干いかがわしい店の並ぶ通りだった。
そのとおりの半分を使ってスーツを着た男が両手の紙袋を投げ出し、四つん這いになっていた。
見ただけでわかった。
彼が自分の仕事に心底嫌気がさしていることが。
でも続けなければならないこともわかった。
なぜならば彼の左の薬指には指輪が光っていたから。

どういう会社でどのようにノルマを押し付けられていたのかわからない。
でも、絶望してしまうような仕事だったということだ。
世の中にはたくさん営業をしている人達がいる。
営業という仕事を普通の会社はどのように教えているのか?
当時、エンジニアだった私は強い問題意識をもった。

第二話

そもそも事業(ビジネス)というものはリスクが高いものだ。
知られていないと思うが、一般的に投資で稼ぎ出す金額は年間で6%いけばよし、とされている。
2025年7月現在、アメリカの長期国債の金利が5%近くになっている。この意味はアメリカという国の信頼が低下していて長期の国債が値引きされて流通している。償還時には額面通りのお金がもらえるから、見かけ上の利回りが高くなるのだ。
投資とは事業が利益の源泉である。理解していない人が多いが、企業の売上が上がりそうだという予測のもとに株価はあがる。
つまり事業の利回りを上回る投資は理論的にありえない。もちろん10倍の株価がつく株が出現することがあるが、それは将来の見込みを食いつぶした状態での値上がりだ。

にもかかわらず毎日、同じようなことをやっているためにダレて事業リスクを忘れ去る人が多い。事業リスクを考えると次の収益の柱を考えざるを得ない。しかしそう簡単に収益源を見つけることはできない。だから、トライアンドエラーがちょこちょこ続くのだが、事業にリスクがあるという単純な事実を認識できないサラリーマンが多すぎるため、エラーが起きると「やめる」と根性のないことを言い出す。そんなことを言っていたら現状のビジネスがうまくいかなくなったら、会社としてはジリ貧になる。

次の収益の柱とは、製品だけが存在するプロダクト・アウトでは今どき売れるわけはない。お客が期待するものはなにかは普段お客の顔を見ている営業の意見を聞かなきゃわかるわけがない。かといって会社が持っている技術、調達ルートに制約があることもある。言い換えると新しい収益源って会社の全部門が公平にかかわりあって作っていく必要がある。
「公平に」と書いたのには理由がある。某ソース会社は業務用ソースも作っている。営業が案件を取ってくる。しかし悲しいかな、意思決定者達の舌が馬鹿舌なので、あまりいい業績になっていない。オタフクなどにもっていかれている。事実から顔をそむけ、意思決定者のメンツが優先されることは、日本企業あるあるだと思う。これじゃぁ、ジリ貧になっていく。

多くの会社の自称「新規事業」ってその会社でなければできないことではなく、素人がSNSやニュースではやっているビジネスを取り上げたものが多い。新規事業をやるたいへんさ、怖さを知らないから、安易な姿勢となる。

かように普通にビジネスをしていてもリスクが高いのに、新規事業はもっと高い。
それでも会社は時代の変化に応じてリスクを取り続けなければならない。

第三話

外資系の会社で働いた経験が長いので外資系の営業スタイルを思い出すままに書く。
IBMで新人のころにエンジニアも教え込まれたのが「ロジカルセリングプロセス」だった。簡単に説明すると、どんな製品、サービスも売れるプロセスがある。例えば個人が10億円の測定機を買うことはまずないが、10億円の測定機を必要とする会社はある。なんのためにそれが必要なのか?なにをやっている会社か?会社の誰が必要としているのか?その人は意思決定できる人なのか、他の誰かが意思決定しているのか?最近はなにで大きく予算を使ったのか?その人や会社はどちらの方向に投資したいと思っているのか?足かせになっていることはなんなのか?最後に、よく売ってくる営業はどういうプロセスを辿っているのか? などすべて調べ上げて対策を取らないと売れるわけがない。
それを調べて、アクションにつなげていくことを「アカウント・プランニング」という。今は知らないがメインフレームという高額商品を売っていたころのIBMでは必ずお客さんごとにアカウント・プランニングをやり営業もエンジニアも担当することが決められていた。

言い換えると組織として売れるストーリーを作ってから売っていたのであり、トリックもなにもない。もちろんノルマはあったが、無理ではなかったし、やり方も知らない新人にいきなり一億円なんて乗っけたりしていなかった。もっと基礎的な成果を達成するように目標を決めていた。

第四部

エンジニアとしてお客さんの前でプレゼンテーションをすることは多かった。
プレゼンテーションには基本的なセオリーがある。しかしあまり知られていないようだから、そのうち本を書きたいと思っている。
というのもNTTにいたころなど、業者のプレゼンを聞いてもひどいもんだった。これで買う気になれというほうが難しい。
法人営業におけるエンジニアの仕事は味方になってくれるお客さんにいかによい稟議書を書かせるか、につきる。
これが個人客を相手にしている商売との最大の違いだ。
お客の稟議書の資料作りを手助けすることだ。

よい提案はお客さんを動かす。提案ができない会社は例えば「DELLのハードウェアがサポート終了なんですぅ。この際にバージョンあげましょう。」といった環境の強制的な変化に乗っかる消極的な提案しかできない。大企業でも、そんな会社はとても多い。

解決策の歴史

営業行動に関心をもっていてシステム化できるのではないだろうか?と漠然と考えていたら世の中にCRMというツールが出てきた。
CRMはアカウント・プラニングをもっと精緻にしたものだ。
しかし、世の中を見ると自分の経験を至上とする年寄り営業が多く、彼らはデータに基づく営業を嫌う。
一時、勤めていたセキュリティの会社にCRMを入れたのだが、感を大事にするジジイの営業部長に却下されてしまった。
自分を大事にして会社を大事にしない営業に怒りを覚えたものだ。
年寄りの営業は「自分なりの営業道」を大事にする。しかしそんな時代は過ぎたと思う。
CRMのデータを埋めて、営業部長と話し合いをし、アプローチを決め、ダメなら次の手。うまくいくなら深堀りを繰り返す。
そうやってデータと作戦を共有しながら活動する。これは言い換えるならば責任を個人にかぶせるのではなく、会社と共有する方法だ。やるべきことをやっていたら、変なプレッシャーはないし、犯罪に手を染めることもない。
会社側もやり方は「横展開」できるし、属人的ではなくなる。

私は営業にとってノルマよりも、会社の営業方針どおりやったか?のほうが重要だと思っている。
日本初のSFAツールを作ったソフトブレーンの創業者の宋文洲氏がおっしゃっていたが「私のいうとおりやって売れなければ仕方がない」というくらい自信のあるセリングプロセスを作った会社が勝つのだ。

ノルマは達成したが、コンプライアンス上、問題を起こしまくってクビになった社員や役員を何人も見てきた。
ノルマを達成したにもかかわらず会社がそういう人をクビにする理由は組織を腐らせるからだ。

 

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