ITで遊ぶ

データ階層社会とGDPR

マスコミが「ビッグデータ」などと騒いでいるけど、その背後の恐ろしさにまで洞察が回らないのはさすが”マスゴミ”と言われるだけはあると思っています。

考えてみればIT後進国日本で、ITがもたらす変革を理解している人なんてほとんどいるわけがない。

こっそり毒はいているこの記事を読んでいただいて他人より一歩抜きん出てくれれば、筆者としては望外の喜びです。

東洋経済2018年12月1日号の特集が「データ階層社会」

AIがビッグデータを元に人の信用を判断する近未来を描いています。

「ホモ・デウス」は必読の書らしい。

シンガポールはすでに14歳の時のテストで職業を振り分け、国民の人生をも振り分ける。

日本でも”情報銀行”みたいなものが検討されている。

などといろいろ書いてあるのですが、この雑誌に限らずデータをやたら集めまくって、”AIが判断する”ということで判断根拠をごまかそうとしている社会が来ています。

たとえば、みずほ銀行とソフトバンクがやっているJ.Scoreという金貸しサイトがあります。

試しに登録してみて、私はとても危険なことに気づきました。

収入、趣味、ライフスタイル、家族について根掘り葉掘り聞かれます。
広告では5つの質問とありますがそれだけじゃ話しにならない仕組みです。

最も大きい問題はソフトバンクとリンクしたりみずほ銀行の口座と関連付けたり、J.Scoreがやってほしいことをすると指標があがるのです。

これものすごく危険ですよね。AIに食わせるデータに変更をかけているわけで、純粋なビッグデータじゃない。

「データでAIが信用度を決めます」といいながら、企業がやってほしいことすれば信用度があがるのです。

普通にみんなが想像することと違うのではないでしょうか。
ぜーんぜん客観的ではない。
企業の思惑でいくらでも変わる。
金を借りる約束する前からあらいざらい個人データよこせ、事前審査するといっていることとなんら変わりはありません。

さらに提携企業の「特典」とか言ってるけど、使ったら最後、個人情報を提携企業に売り飛ばすサービスも開始。

スコアを90点超えまでもっていっても500万円しか貸してくれないです。
「金を貸してやる」というエサをぶらさげた個人情報を無料で抜き取るビジネスということがわかりました。
かかわるべきではありません。私も調査が終わったので退会しました。

企業がする信用格付けなんてこんなもので、それで「データ階層社会」で評価されちまうってことです。

おそらくEU政府は鋭くそこに気づいたからGDPRで個人情報は求められたら開示せよ、個人がいやだといえば即刻消せ、という法律をつくったのだと思います。

日本政府もAI利用にあたって遵守してほしいこととして「学生の採用活動や金融機関の融資などAIが導いた結論で人が不当な扱いを受けたりしないよう、企業や自治体といった利用した側の意思決定の透明性とその過程に対する説明責任を確保すべき」だとしています。

今まで金融機関は信用の内容を「お答えできません」としていましたが、今後は説明義務を負うでしょう。

最近の歴史解説本をいくつか読むと浮かび上がることがあります。

今の世界は各国の政治家と多国籍企業の経営者との戦いなのです。
共産党が唱えるようなブルジョワとか政治家と大企業の馴れ合いなんて、日本を含める(忖度なんてやって法に基づく処罰をされない時点でアフリカなどの国と対して変わらないでしょ?)発展途上国にしか残っていない現象です。
多国籍企業は各国の法制度の違いを100%利用します。一国の価値観などに縛られていません。

そこに軋轢が生じます。トランプ大統領が「アメリカ・ファースト!」と叫んでも多国籍企業の経営者は賛同しません。

政府が自国の利益になるように、法律と税金で規制しようとするところを、事業家はカネと他国を競わせて思い通りにしようとする。

 

我々個人の生活は従来よりも殺伐としたものになるでしょう。

今の日本では「平等」が信じられています。
孫正義も入間市のパーリーピーポーも同じ人間だとされています。

しかし個人データで信用度が数値化されてしまうと、愚かな人間ほどその数値をその人の価値として信じてしまうでしょう。

人の価値が数値化される社会では、今まではせいぜい「俺はTOEIC900点」くらいしか威張る要素がなかったのですが「大企業の正社員はレート200だから、零細企業の役員のレート80より価値がある人」ということになるでしょう。
金融系の信用調査は資本の大きい大企業や役所に勤めていると安定度を評価するようにできています。(もちろん私の価値観はまっこうから対立します。そんなものばかり評価していたら人類は進歩しません)

すでに中国では「娘がつきあう男はレートがある以上じゃないとダメ」となりつつあります。

こうなると巷でヤンキーとかでも「人は平等」という前提で今まではなにか言えたのですが、「お前レート低いじゃん。」というだけで発言のチャンスもなければ、雇用時も一定以上にはいけないということになります。

人の価値は多様な尺度で測るべきだから計り知れない、という前提が金融機関のAIの信用度判断で崩れつつあります。

ですから賢い個人としては、こうするべきです。

いろんな種類の仮想通貨が大量に出現して価値がだだ下がりになったように(なんで誰も書かないんだろ?)、いろんな「信用度を決める」会社が出てくるので、いくつもに入っておいてもっとも自分に高い信用値をくれるところを選ぶべきでしょう。
IT後進国の日本企業がつける当てにならない怪しいレートより、グローバル企業のレートのほうが各国政府の規制に耐えるために、よりフェアであることは言うまでもありません。
クレジットカードの信用力がJCBや楽天なんぞより、VISA, MASTERのほうがはるかに高いのと同様です。

Googleの検索順位が日本だけで決まらないように、常にグローバル企業の動きは注目しましょう。

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