ITで遊ぶ

木村岳史が「忖度オヤジ」をあぶり出した

今週の木村さんの極言暴論のタイトルが「日本企業は「忖度オヤジ」の巣窟、これじゃITでの成功は無理」内で、なぜ日本企業はダメかを議論している。

日本企業はトップダウンでもなければボトムアップでもない、と喝破している。

確かにそうだ。社長が末端まで見ているわけでもなければ、現場の平社員の意見が役員会で真面目に議論されることはない。

大量にいる管理職達が(木村さんのいう「オーバーヘッダーズ」)が社長から「業務改革に取り組むが、現場の声もよく聞いて進めること」といったわけの分からない指示を、その人の立場で忖度して、業務改革は結果として起こらず、らしいものでごまかして終了。

いつも思うが、終身雇用制度だからみんな無難に過ごしたい。年寄りオーバーヘッダーズは自分がわからないことを若者に手放して、まかせるなんてつもりはない。よくも悪くも。

木村さんのおっしゃる解決策は、「みんな空気を読むな」「忖度するな」だけど、日本企業で求められる人材の能力の一位が「コミュニケーション能力」であり、これは言葉を変えれば「忖度力」だ。

そもそも、イノベーションって凡人が話しあう中で出てくるわけがない。
みんなが妄想して、絶対に起きないのがこれ。
デザインシンキングだクリティカルシンキングだなんてやったところでカイゼンはできてもゼロイチじゃない。

尖った能力の持ち主がひとりでゼロからイチを生み出す。
それはほとんどの場合、凡人みんなが反対する中から起きる。

日本はとくに極端で、ゼロからイチを生み出す人間は爪弾きにされるか、奴隷のように周囲に媚びなければ生きていけない。
だから青色半導体の中村教授のように海外に出ていくか、カシオでGショック作った人みたいにカシオという同族企業の中でやっすい給料で生きていく。Gショックの利益は経営者一族がむさぼる。

英語でいうダイバーシティ(多様性)を絶対に受け入れないのが日本のサラリーマン。

しかし今の日本社会は信じたくないだろうけど、小説家アーサー・ヘイリーが「自動車」という本を書いた1970年代は日本の自動車もアメリカの自動車を追いつけ追い越せとしていた時代だった。(本読めばわかる)

明治が始まったころから1970年代まで、日本には常に欧米という模範があり、それを真似続けた時代であった。
なぜ日本は過去110年、猿真似国だったということを忘れたフリをするのだろうか?
今でもかろうじて「欧米では」という言葉が残っているが、1970年代まではその言葉はお手本を示す言葉であった。

1980年代からいわゆる先進国になり、過去の蓄積だったバブルがはじけた途端に、日本は漂いはじめた。
お手本がないからだ。
今までうまくいったんだから、同じようにすればなにかができると安易に考えてきた。
学校も明治からいい工員を育てる教育しかやらず、現代に至る。

何度も何度も既存の企業に騙されて助成金、補助金をつぎ込む日本政府って、本当にバカだな、と思う。
政治家や役所は結果責任を負うから、バカと言っていいと思う。

そして独自の新しい産業はついに生み出せなかった。
1070兆円の借金は既存のビジネス、既得権を生きながらえさせ、銀座のおねえちゃんを養うために使われただけに終わった。

もちろんマクロ経済とミクロ経済は違う。
ごく少数の人々はちゃんと自分で考えて行動している。結果も出ている。
でも、それはどう考えても日本の主流にならないだろう。

つまり木村さんのいうような自分で判断する人々なんて日本では少数派であり、99%の経営者、サラリーマンは「みんなで話し合って」「みんなが納得する決断をし」世界の変化についていけずに没落していく。
その時のせりふは「しようがないよね。みんなで決めたんだし」

没落しない企業は経営者が独断で決める。
株式会社って、だから代表取締役という独裁者を認めているんじゃないのだろうか?

繰り返すけど、海外の企業の生産性の高いサービスに負けて、日本のサラリーマンはさらに貧乏になっていくと思う。
あなたがロクにエクセルやアクセスを使えずに、もっぱら手作業と電卓使って仕事した気分になっている作業は、効率のいいアウトソーシングに置き換えられていく。
この戦いは目に見えないから、やっかいなんだけど。

もう一点、新聞や雑誌には載らないけど、ここ20年、日本企業がダメになったのは経済産業省がよけいなおせっかいばかりして、海外進出を止めさせたことにも原因がある。
ジャパンディスプレイなんて海外に工場を作らせなかったためにコストで負けた液晶メーカーの敗戦処理のなにものでもないし、液晶から有機ELに変わっていくなんてことに追いつけず、すべてが税金の無駄遣いに終わるだろう。
経済産業省が戦後の復興を官がリードした夢を何十年も追いかけているのもいい加減に目を覚ませといいたい。もう当時を知る人間はいないだろうに、プライドだけが漂流している。

日本人のプライドが傷つくから指摘されていないけど、シャープが産業再生機構の元にはいっていたら、今のような回復がありえただろうか。
鴻海は日本企業より優秀だということが立証されてしまったのである。

日本が何十年も、そしてこれからも忖度ばかりして空気を読みまくり、時間を引き伸ばすことばかりしてきたが、それでさっぱり勝てないのが日本の実力だと認めるべきじゃなかろうか。

逆にひとり、ふたりで勇気をもてば日本にはいくらでもビジネスチャンスがあるのだ。

いつも周囲に言っているけれど、「よく考えて決める」という人で人生をうまくやれている人を見たことがない。
人生でうまくやれている人間は、即断即決して機会を逃さない。
よく考えてという人間の考えは、休むに似たりにすぎない。
その間に決断した人間に負ける。あとにはなにも残っていない。
パッと考える瞬発力のない人間になにができるだろうか。
そして、これはその人の癖で、たぶん一生治らない。
もしあなたが即断即決の人であるならば「よく考えて」という意見は無視したほうがいい。つきあわないほうがいい。
それは怠け者か考えることができない人間の意見だから。

企業も同じだろう。

関連記事

  1. モバイルファースト(Mobile First)

  2. 「木村岳史の極言暴論!」がまったく暴論じゃない理由

  3. 富士通さん、また急進的なことを

  4. ボトルネックに従う(俺がITで学んだこと)

  5. 傍観者として見るGAFA

  6. 山口周さんの「ビジネスの未来」

  7. エンジニアの独学

  8. 今のシリコンバレーを知る大事なレポート

記事をプリント