ITで遊ぶ

人工知能について

2047年だっけ、人工知能が人間を超える、とか言っている話。

でも、人工知能について理解している日本人はものすごく少ないと思う。

昔、「AI」というものが流行り消えた。
当時はパターン認識がもてはやされ、「ファジー」なものに応用可能だとされたと記憶している。
たとえば、温度管理をサーモスタットなどの一定の温度になったらスイッチをオン・オフするようなやり方だとゴツゴツなのを過去のデータの移動平均を取り、ソフトに電源コントロールしようなんてものをいった。
1/fのゆらぎが人間に心地よいなんてものもこのころに流行った。

当時でも話題になったがさっぱり応用されなかったのが、ニューラルネットワークだ。脳のニューロンのマネをしたものだった。
これは今の人工知能の流れに繋がるので少し詳しく書く。

脳はニューロンの集合体だ、とする。(異論はあるが、ニューラルネットワークではそう決めつける)
我々の脳の中では個々のニューロンは新しい刺激を受けると、別のニューロンと結びつく。それが記憶だとする。(異論はあるが、ニューラルネットワークではそう決めつける)
nnそのためものすごい組み合わせの可能性があるのだが、シミュレーションがタイヘンなので、ニューロンはあらかじめ階層化されたニューロンと軽く繋がっている、とする。(4階建てくらいのアパートの部屋が一階違う同士の間ではすべての部屋同士階段があると思って欲しい。)
なんらかの刺激、例えば画像を撮るCCDカメラのセンサーの後ろにこのニューロンのネットワーク(ニューラルネットワーク)があるとする。
人の顔を次々と見せて学習させていると、上の辺縁部は黒い単調なものが多い、などの経験値が積み上がっていく。

当時のAIの世界でニューラルネットワークが人気がなかったのは、計算量が莫大になることと、学習結果がなにを意味するのか、つまり学習結果について人間は責任を取れないという指摘を覆せなかったからだ。
この計算量の問題は近年、解決しつつある。
しかし、学習結果に誰が責任をもつか、という問題は今後も人工知能の話とは切り離せないのだ。

近年、また人工知能が話題になり始めた。
途中で「遺伝的アルゴリズム」という遺伝を模したアルゴリズムがもてはやされたが、実態はバカみたいなものだった。
生物はDNAで設計図を引き継ぐ。プログラムでは不確定な要素をいくつかのパラメーター化して、そのパラメータのオンオフにより「遺伝した」とする。
ネーミングの勝利であり、あまり成果はないのではないか。

さて、人工知能で華々しい話が出たのはIBMのディープブルーがチェスで人間に勝ったことだった。
実はこれは人工知能ではない。チェスの勝敗のパターンをすべて記録し、勝利に導いていく計算量とデータベースの塊だった。
その証拠にディープブルーを応用したシステムは聞いたことがない。

次にIBMが作ったのはワトソンだった。クイズ番組で人間に勝ったという。
これは言葉のパターン認識などをニューラルネットワークにやらせているらしい。
IBMが大々的にぶちあげ、それでビジネスシステムに応用すると言っているがやはりうまくはいっていないようだ。

グーグルが碁で人間に勝った。
これは明確に大規模ニューラルネットワークの成果だ。

それでもニューラルネットワークがまだまだ過渡期だし、元となる考え方が素朴すぎる。
先にニューラルネットワークを考える上での割り切りを()で書いた。
そもそも、こういうニューロンのシミュレーションで、意味を理解できるものが作れるかといえばノーである。
なぜならば、現在やっていることは意味を具体的な指標に置き換え、その元でディープラーニングをさせていく。

しかし人間を始めとする生物の脳は意味を勝手に理解するし、そこに個性がある。
意味を生み出すものは意識だ。
そして「意識とはなにか」はいまだにわかっていない。そこにあるのに。

グーグルの自動運転技術もそうだが、ニューラルネットワークの応用でコンピューターには従来苦手とされた「パターン認識」が得意になりつつあるのは事実だし、苦手だったものができるようになったので応用範囲は広がる。
たとえば、スポーツ新聞の記事なんてものは決まりきった文句しか並んでいないので、生成できるだろう。
お客のクレームやIOTがあげてくるデータを大量処理してなにが問題かを抽出するなんてのもできるようになるだろう。

だからといって、無限の応用範囲があるわけではない。
楽しいことをみつけろ、なんていうのは無理。
楽しいということがどういう指標から構成されているか定義すれば見つけられる。
今後マスコミで垂れ流される話はほとんどが、この「定義」を隠した状態で語られるだろう。
そのほうがあたかもコンピューターが意味を理解しているかのように見えるから。

一方でこのジャンルでも日本では深刻な問題が起きている。
ある人がコンピューターグラフィックの世界と今の人工知能の世界の類似を指摘している。
そのとおりで、まず日本のIT系エンジニアで英語文書を読破できる人間は何人いるだろうか?
実感では数百人だと思う。
さらに数学を理解できるとなると半減する。

そこにもってきて、海外ではい~っぱい出ている文献を学習、研究する人はほとんどいない。大学でもいないんじゃないか?

かくしてなにが起きるかといえば、社会学的に騒ぐ人間ばかりで実装された製品はすべて外国製となる。
そのくせプライドは高いから、重箱の隅をつつくような文句をドヤ顔でいうことを繰り返すのだろう。

音声認識も自動翻訳も日本ではエラソーにしている会社や教授がいたがたいした成果もないままに淘汰されてしまった。
ITの世界では日本はちっとも凄くないのである。

関連記事

  1. 「木村岳史の極言暴論!」がまったく暴論じゃない理由

  2. 今のシリコンバレーを知る大事なレポート

  3. 木村 岳史さんのおっしゃる「改訂「SIerは5年で死滅する」」

  4. リストラされた人へ

  5. モバイルファースト2

  6. 伝統的な統計学は別に最強じゃない

  7. IT業界で会社を大きくする方法

  8. モバイル開発の予想的中 うれしい

記事をプリント