サラリーマンのふり

会社の評価と自分の評価

こんな悩みを時々、聞きます。

「一生懸命仕事をしているのに、まったく会社に評価されない」

これは悩みというにはあまりにも雑な考え方だと思います。

巷のこの悩みについての解説は要するに、もっと社畜になれ、というか、周りのおかげだ、自惚れるな、というかのどちらかであり、どちらも会社での生活を前提としていると思います。

ここでは、「自分」を中心に考えたらどうなるか、「会社」を中心に考えたらどうなるか、ということを議論していみたいと思います。

観点がはっきりしていないと議論がやりにくいので、まず、あなた視線から分析します。

1. その仕事がどういう意味をもつか説明できますか?
もっというと、その会社の利益向上、経費削減にどう貢献しているか、数字で示しましたか?

2. 「そういう意味では説明できない仕事です」とします。
ならば、あなたのキャリアアップに繋がる仕事ですか?
わかりやすくいえばあなたの市場価値を高める仕事ですか?
もしくは起業のために知っておくべき仕事ですか?

3. 「そういう意味でも説明できない」とします。
確かに会社にはどう転んでも評価されない仕事が存在します。
ならば、その仕事をすると決めたのは誰ですか?
運悪くあなたになったということですか?

1がいえるならば、業績の説明がまずいのかもしれません。
バカは数字を見ないとわからないのです。数字でもいくらでも嘘はつけます。常に書いているとおり、社会学などその巣窟です。
「数字は嘘をつかない」と盲信しているマヌケな人間には格好のツールです。

2がいえるならば、説明の必要はなく、どんな評価も今は甘んじるべきです。
自尊心が許さないのなら、その甘えた自尊心を叩きなおしましょう。
バカがする評価を耐えてなんぼ、理不尽な客の文句に耐えてなんぼです。

3がいえるならば、業務目標の設定が悪かったか、運が悪かったとあきらめるか、あまりにも雑な会社なので、仕事ではなく人間関係でのみ評価が決まる会社ということです。

仕事は他人と同様に、残った労力で「強い者に媚び」ましょう。
恥ずかしい?ならば、評価で悩むべきではありません。

次に会社からあなたの仕事を見てみましょう。以下の可能性はありませんか?

1. 仕事の目標と違うことで一生懸命になっている。
誰もそれをやれ、と言っていないのに勝手に時間を使っている。
(例:文句をいうお客は放っといて、買いそうな客を回ってほしいのに、本人はクレーム対応を必死でやっている)

2. 努力はわかるが認められない。
理由は、
2-1.結果として表れていない、
2-2. 本人を嫌いだから。

3. そもそも期待していない
買収した会社の社員でなんとかクビにしたい。下手にがんばられて迷惑だ。

4. 業績があがっているが、それは俺がもらう。
おまえは一部しかしていないから、「みんなで業績をあげているのに尖がるな(成果は俺がもらう)」

5. 部門全体ではまったく儲かっていない
本人の頑張りは認めるがうちの部門は赤字なのでボーナス、昇級は無理。だから評価も下げるしかない。会社の都合についての理由は、まだあるかも知れません。

1は会社の価値観と本人の価値観のぶつかりあいです。
会社はあなたのものではありません。会社の方針に納得できないなら辞めるべきです。つまらん正義感はいりません。

2はむつかしいです。日本のサラリーマンの管理職はほとんど管理職としての教育を受けていません。課長だから突然、課長の知識が頭脳にダウンロードされるわけでもないのに、周囲も本人もそう思い込んでいます。

そもそも管理職は偉くはないのです。どんと責任がかぶさってきていることを知らない人が多すぎます。

したがってほとんどの管理職は、数字が、態度が、ポテンシャルが、といろんな価値観をぐちゃぐちゃにして、結局は好き嫌いで人事考課をつけます。
そこに本人をしらない人事が横やりを入れるのですから、もう結果は悲惨です。
常々言っていますが、日本企業をダメにしているひとつが人事部です。

ここから導き出される合理的解決策は「一生懸命働かない」ことしかありません。
低い評価に悩むなら、上司に媚びろ、です。

3は本人もわかっているはずです。がんばりで奇跡を起こしたいのでしょうけれども、起きないです。どうしようもない局面で自ら苦労を背負い込んでいる形です。
大の男・女が、外に出る勇気をもたずして、どうするのでしょうか。

4は上司が悪いのですが、あなたにも問題があります。
主張が弱い人ではないですか?企業の評価は相対評価です。Aが10%, Bが20%, Cが50%, Dが10%、Eが10%なんていう具合です。
気の弱い人間は低い評価をつけやすいのです。文句いってこないですし、目立たないですから。

性格に問題ありと思われている人も格好のネタです。
本来、業績と性格は関係ないです。勤務時間外は逮捕されない程度の変態であっても、金稼ぐ人が偉いはずです。
しかし、日本社会は重要な仕事をする人ほど人格もよくなければいけないという思い込みが常識となっています。
(だから有能な政治家がつまらんスキャンダルで干されます)
まぁ、いい人になる方法は千差万別ですから(影のボスになる方法もありますよね)、やり方はいろいろでしょう。

5は環境で、がんばってもどうしようもありません。
もっともあなたの頑張りでその部門の業績が持ち直したら、4になりいずれにしても評価はあがりません。

ここまででわかると思いますが、最初に書いた「会社が評価してくれない」の内情はすべて他人の同じサラリーマンがやっていることです。

残念ですが、これらとビジネスというお金儲けは関係しません。

「高い業績の人を評価する」って、オーナー会社か、カリスマ経営者じゃない限り不可能なんですよ。

このビジネス意識の希薄さが、日本企業がわけもわからんものをしばしば買う理由でもあります。それこそ、グラウンドとか福利厚生サービスとか。

結局、日本企業は「みんなでやった」という意識で怠け者が幅を聞かせるため、はっきり評価しないのです。先に書いたA評価も誰かを昇進させるための手段であり、仕事の評価ではありません。
それがなんとなくわかっているから、みなさんは人間関係で悩むのです。

外資系はよい意味での「成果主義」です。

日本ではダメ評価を食らっていますが、それは目標設定がめちゃくちゃだからです。
なんの教育も受けていない中間管理職に適当に「業績評価」を人事部が投げつけるから、メチャクチャになったのです。

もし、成果主義がダメなら世界中の企業はダメだということになります。グローバル企業の場合、社の業績目標があり、それがカスケード(滝状)に下に降りていきます。

逆に言うと、自分が社の業績目標のどこにどのように貢献しているかも説明可能です。

そのようなフェアな目標設定と業績評価をしないと訴えられるからです。
社内で「それは株主に対する裏切りになりかねん」なんて言葉が日本企業内で語られうるのでしょうか。

ここでは外資系がいいという話をしていません。
これはこれで問題もあるのです。
日本企業方式評価以外にも方法があるという一例の紹介です。

理解していただきたいのは、日本企業の評価方式は真面目に尖って働くと損をするようにできているのです。

みんなが同じように田畑を耕し、同じような成果で、農閑期に運動会を一緒にすることを望んでいるのです。
コメが売れないことに悩むな、せいぜいどういう野菜を作れば価値があがるか程度を考えてくれれば十分だ、と言っているのです。

これは新聞を見ても明らかです。
つい10年前までは、パソコンは日本企業がトップでした。
今は部品がスゴイといっているだけで、製品については見てみないふりです。

業績と人間関係。これを天秤にかけると凡人は人間関係に偏りたくなります。

しかし、そうすると自分のスキルは身に付きません。
スキルがなければ業績と将来の市場価値も失います。

今の評価に悩むより、長いサラリーマン人生ではこのバランスをどう取るのかが大事だということを指摘しておきたいと思います。

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