サラリーマンのふり

ベンチャーがブラック企業になりやすい理由

大昔に零細企業を立ち上げたことがあり、またベンチャーのコンサルティングもいくつかしたことがあります。

しばしば「会社は」という言い方をサラリーマン(給与所得者)はします。
しかし、この言い方は問題の認識を曖昧にします。
なぜならば「会社」という人はいないのです。なにかの決断、なにかの行動は誰かがやったことです。
それを会社の名の下でやったというだけです。

じゃぁ、その決断は誰が為すのでしょうか。
ベンチャーの場合は社長を中心とした経営陣です。
この経営陣は一人もしくは数人で団結しています。
よくいえば、強固なチームであり、だからこそベンチャー企業という道を選ぶわけです。

ただ、ベンチャーファンドなるものが寄生している場合はカネを出している以上、そこの自称コンサルタントがピント外れな愚かなことを言っていても経営陣は意見を聞かざるをえません。

経営陣以外は誰がなんといおうと、従業員は取り替えが効く労働力に過ぎません。
「ウチは違う」
と思っておられる従業員の方、乗せられて高揚している気持ちはわかりますが、従業員は経営リスクを取りませんから、いくら経営陣が「君を大事にしている」と言っていても、それは優先順位からするとはるかに下位にならざるをえないのです。

似た境遇は大手の外資系の経営者です。

株主、取締役会(日本とは違います)の信任を受けての経営者ですから、用のない人間はさっさとクビにします。

先日、マイクロソフトが携帯部門の人間のクビを宣言しましたが、そういうものです。
余剰人員を時間をかけて再配分などしていたら、株主、取締役会から「遅い」と言われ経営陣がクビにされるからです。
一方、アマゾンは赤字でもジェフ・べゾフの会社ですからジェフは全然平気。長期的に問題に取り組めます。

余裕のない経営者達のホンネは自分のことだけです。

最下層の従業員から見ると、中間の従業員が弊害を広げます。
多くの企業では、従業員中に管理職を置き、経営陣はこの人を従業員代表として責めます。

責められた人間は当然、それを下位の従業員に自分の感情を込めて転嫁します。
人間性を否定し、搾り取れるだけ絞ろうとします。経営陣から与えられた目標を下位の人間に達成させて成果を奪い、自分だけは生き残ろうとします。

◯◯人クビにせよ、というノルマがあればどのような手段を使ってでもクビにします。法的リスクはその従業員が負います。(下手なクビの仕方をして訴えられたら、そのマネージャもクビ)

クビは誤った経営方針の結果ですが、たまたま正しい方向性を向いていれば企業は成長します。

それでも従業員は報われません。
残念ながら成長した企業は別のタイプの従業員を必要とします。創世記には寝食忘れて「俺がやる」「俺がそれもやる」タイプが好ましいのですが、お金も周りはじめて多くの人が必要になってくると「和をもって尊しとなす」タイプが必要となります。

ベンチャーがある程度成長すると、東大卒が欲しくなるのはこの時点にさしかかったからです。

いずれにしても成長期のベンチャーとは、そうやって人を食って成長していきます。

残るのは経営陣として参画した人々のみです。
「俺達の家」なのです。

ひどい、厳しいとお思いでしょうか?
真逆をやるとどうなるかご紹介しましょう。

私が大昔立ち上げた零細企業は、まったく反対に向かってしまいました。
経営者が従業員の言うことをせっせと聞き始めたのです。

「仕事の仲間だから当然だ」

サラリーマンからたいした理念もなく起業すると、こういうどうしようもない考えの社長になります。
会社はまったく成長せず「仲良しクラブ」になります。たとえ必死で働いていたとしても、従業員の顔色をうかがっていては成長できるはずもありませんし、いい知恵も実現できません。だからよけい大変になります。
従業員はホンネでは面倒くさいこと、自分のできないことはイヤですからね。

この会社は言いたい放題言っていた社員達の言うことをせっせと聞いて、やめろという役員の声(俺)も無視した結果、たいして成長もしないどころか、挙句の果てにはその張本人の社員達に競合他社に去られてしまいました。
なにをしていたかわかりませんね。要するに本当は従業員達にバカにされていたということです。

ベンチャーも3,4年やって成長しなければ単なる零細企業です。
そのビジネスモデルは間違っていたということです。
本来はそれは失敗なので、清算したほうがいいのですが、そうもできない日本の事情もあります。

サラリーマンはよくない会社に入っても、転職で前職の会社の責任を問われることはありません。

経営者は転職しようにも、前の会社が成功していなければ誰も鼻もひっかけません。
サラリーマンになろうとしても、使いづらいのと現場ができないことは一目瞭然なので一般的には嫌われます。
後がないのです。

まぁ、のうのうとどこからかお金を引き出して、別会社作って赤字垂れ流して、まったく成功しない事業ばかりやっている経営者もしばしばいますけど。

ベンチャーの従業員である間はいつもクビになることは考えておくべきです。
ここをガマンしたらIPOして俺も金持ちなどと考えないことです。ベンチャーファンドなどが入っていたら、すべてもっていかれて従業員にはほとんど支給はないです。

IPO後にベンチャーの従業員がいくらもらったか、という話はめったに出ないです。通常、笑っちゃうほど少ないので恥ずかしくて誰も他人には言えないんです。

法的拘束力のある約束がなされていれば別ですけれども、オラクルなどの話はごくごく例外的な話がしばしば語られていると思ってください。

関連記事

  1. 企業の「マーケティング」って誰でもできる

  2. 本当に技術立国なのか?

  3. 自動車のインターネット化

  4. SPA認定ブラック企業

  5. SMAPに学ぶサラリーマンの身の処し方

  6. Podcast聞いてますか?

  7. 無料の時代のビジネス

  8. ここにもいる「残念な人事」

記事をプリント