サラリーマンのふり

元IBMなら俺もいわせてもらお

*以下は、大歳卓麻氏が社長だったころの記事である。
2012年8月22日に大歳氏は四谷駅にてiPodによる女子高生の盗撮で警察に逮捕された。
日本IBMは同29日に辞任とし、30日にプレス発表。メディアは見事にコントロールされ、一斉に記事掲載されたのは30日であった。
以下を読めばわかるように、ビジネスモデルのない中でリストラし続けるしかない会社になった萌芽はこのような人が社長であった時代に確立されたといっても過言ではないだろうし、今後、日本のIT企業に蔓延するであろうと予測される。
実際、後続としてあげることができるのはSONYではないだろうか。17年もリストラを続けている。同様に目的地のない船なのだ。

ここ数年、日本IBMはヘンではある。考えてみたら、今の社長になってからだ。ある元取締役は「社長には運がいいことが必須だ」とおっしゃる。以下は俺の意見だけじゃない。50歳過ぎのIBM OBがだいたい平均的に考えているであろうことを書いておく。

そもそも以前が凄すぎた。システム360以降のすごいビジネスモデルと、椎名、北城と社長が2代続けて大人物。とくに椎名氏はもう80歳を超えておられ、もしものことがあると、おそらく日本IBMに勤めた経験をもつ人間のほとんどは、自分もふくめ葬式に行くと思われる。それくらいのカリスマ社長の後は凡人じゃ勤まらない。今の社長も卓越した能力をお持ちなのは間違いないが、その程度では日本IBMの船頭は勤まらない。

業績はどんどん悪化し、コンプライアンス違反が見つかった。(退職した営業は他社でまた同じことをやった。若いころパワハラを覚えると一生治らないようだ)
それで、各事業部長が海の向こうにそれぞれレポートすることになってしまった。これで歴代のカリスマ社長が苦心して作り上げた日本IBMのビジネスモデルをたたき壊してしまった。結果、「外資系のくせにべたべたに日本企業」といわれていた日本IBMに、グローバルスタンダードが導入され、日本IBMはバラバラになり、日本IBM○○○事業部の集合体になった。しかし、関係会社、お客さんはそうは簡単に変れない。グローバルスタンダードの押し付けをするだけなら「日本IBM」の存在意義すら不明である。

SIのやり方にしろ、社内の処理にしろ、日本IBMの社員はついていけず、たいへんな苦労をしている。社内処理を全部アウトソースは、グローバルカンパニーらしい合理化だろう。
お客との接点となるシステム構築などでグローバルにはRationalを使えといわれ、日本IBMが伝統としてきたADSGは完全に否定されている。しかし、お客の中にはADSGでしかついていけない会社は多い。グローバルの観点からはインドや中国に発注できないから、日本独自のADSGはクズに等しいという評価になってしまう。
私はこの軋轢が、すべての悲劇だと思う。商慣習やコンプライアンスの導入などの軋轢で多くの偉いさんが日本IBMを去らざるをえなくなったし、成績の下位から10%前後を切り落とすというので、企業へのロイヤリティや長期での人材育成などできるわけがない。
グローバルスタンダードでもよくないものも含めてすべて押し付けていては日本という土地で仕事しているお客とビジネスはできない。

エンジニアはその場限りの仕事ばかりしているから、スキルも提案力も育たない。客の立場を数度やり、日本IBMに提案を求めた当事者の俺がいってるから、間違いない。客の俺に叱咤激励されながら、IBM流の提案書作りを教えられた日本IBMのエンジニア、営業は何人もいる。

かくして儲けるネタはロクにないのに、ノルマはきつい。そして、リストラ計画が海の向こうからやってきた。それを即、実行にうつすところが、やはり社長不在である。ここ数年、正直、「あいつが?」と思う人間が事業部長していたり、理事がやたらとたくさんいたり、日本のお客を相手にしている企業として見ると意味不明である。

スルガ銀行にしろ、いろんな訴訟にしろ、スキルのなさとモラルの低さが原因のいったんであることは否定できない。なぜならば「お客のサクセスを考える」を社是としてきた日本IBMでは起きないはずのことが、今、起きている。どう言い訳しようが、ビジネスで訴訟にする(つまり相手の会社と取引は今後一切しないと決意した)ほどの不満と怒りをかかえたお客さんがいる事実は曲げられない。

スルガ銀行からの訴訟で東京地裁は日本IBMがシステム開発の「契約上の付随義務」に違反したとみなし、民法第709条の「不法行為」に当たると認定した
(追記:2015年7月10日付け日本経済新聞によれば、最高裁での判決で日本IBMは41億円の損害賠償となった。IBMの負けとして判決は確定する。IBMがやっていた反訴はすべて却下。総括記事はこちら)
(追記2:2014年 野村證券が訴える。IBMは理由にもならない文句をつける。

スルガ銀行の判決が確定したので加筆しますが、当時のIBMはERPに対抗するべくFIS社からCoreBankというパッケージを買い、Nefisというパッケージに焼き直して展開しようとしていました。
日本の金融は「銀行が違えば用語の定義すら違う」業界です。私が直面したのは「締め上げ」の時間の定義でした。
そこにアメリカの銀行の車体をもってきても当然、ムリがあったのです。
Nefisのプロジェクトマネージャは知っている人ですが、人選的にもムリがあったと感じます。

さまざまなプロジェクトが走りました。あるものはこのようにライトを当てられ、あるものは闇の中で消えています。
日本の金融機関の第四次オンラインの壁はとほうもなく高いと感じています。
なによりも第三次オンラインから30年。基本を知っている人もいない状況ではないでしょうか。
総勘定元帳方式を破棄してERPでも入れるしかないのではないかと、ERPベンダーに勤めているからではなく思います。
なぜならば第三次オンラインの開発現場を知っていて、かつ現在のシステムの作り方を知っている私は、そうでもしなければリスクが高すぎて誰も負えないと思うのです。

(追記終わり)

確かに多くの人が日本IBM労働組合には肯定的ではない。出来方もよくなかったようだし、あまりにエキセントリックな要求をするからだ。だから組合には参加しない。しかし、機関誌の「かいな」の愛読者は昔からたくさんいる。社内の闇を少しでも照らしてくれる貴重な情報源であることは間違いない。インターネットになってからはなおさらだ。おそらく労組が今回、会見を行ったのは生活のかった相当な人数がやむにやまれず組合を頼っている現状があるのだと思う。

日本IBMの給料が高いというのは、10年以上前の幻想だ。思い込んでいる大多数の人が親から聞いたとか、若手社員の見栄に騙されているにすぎないと思う。(もちろんIBM本社の給料は高い)
日本IBMは毎年のようにリストラしているしリストラする会社の給料が高いと思ってる矛盾に世間は気づかない。
愚かな人は新卒の給料が高いから、それでいいとする。そんな釣りで釣られるとは本当に愚かだ。

給与の低下と共に、IBMの社是のひとつであった「個人の尊重」はすでに薄れている事実があるのだろう。余裕のない無能な管理職が自分を守るために退職を強要するなんて話はリストラする大企業なら必ず起きる。何百人もいる管理職が完全無欠であることなんて単なる幻想だ。
完全否定すると、「あぁ、建前だけの会社だな」と世間は思うだけ、ということもわからないくらいの知性に、広報はなってしまっているようだ。

さてさて私としては、やはり上に書いたとおり、問題の根は日本法人の社長機能が不在であることと、日本のIT vs.グローバルスタンダードの軋轢が今の日本IBMの悲劇を生んでいると思う。そして、もう何年も前から、何人もの間違いなく結果を出している有能な社員が「俺もクビかな」ってつぶやく会社はまともだとは思えない。
もっと広くとらえると、日本IBMがぶちあたる問題はいつも業界を先取りしている。今回も日本IBM固有の問題というよりも、日本のIT業界全体が行き詰まっているからだと、いつもながら俺は思う。
(追記:2017/8)
日本IBMさんが得意としていたロックアウトは、裁判所でいずれも負けている。(赤旗の記事

これは結構マズイ話しで、社内の法務が職責を果たさず偉いさんにおもねったということだ。
カネはない、売り物はない、モラルはない、日本IBMよ、どこに行く。

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